(画像出典:https://unsplash.com/ja)
今回は、2022年に出版された本のなかから、おすすめのビジネス書を5冊(プラスアルファ)ご紹介します。
どれくらい真面目に選定したかというと、
- 2022年に出版された本を100冊以上読んでみて
- おすすめの本は40冊ほどブログにまとめまして(ここまでは、ちゃんとしたモノサシで選んでいます)
- その中からさらに、悩みに悩んで、5冊を選びました(この5冊は、主観バリバリで選びました)
それでは、やっていきましょう。
おすすめ本の選定基準
とはいえ、「何を基準に選んだの?」と疑問に思うかもしれませんので、まずはいつものように、本の選定基準をおさらいしておくと「わかりやすさ×深さ」の2軸で選んでいます。
具体的には、以下のチェックリストを使って選定しております。
このチェックリストをクリアした本のみ、ブログで書評を書かせてもらっています。
2022年出版の本ですと、30冊ほど、レビューを書きました。
ここから5冊に絞り込むわけですが・・・すみません。独断と偏見で選びました。
個人的にめちゃくちゃ実用的だと感じた本を選んだので、もしかすると、読者の皆さまからすると「え、この本なの?」と思う本もあるかもしれません。
しかし、読んでみると、どれも超良書であることをお約束します。
この5冊には自信があります。
『アマゾンの最強の働き方──Working Backwards』コリン・ブライアー
本書は2022年に読んで一番感動した本です。
理由は「Amazonの本質を最も的確に捉えた本」だからです。
これまでも、Amazon社の制度や仕組みを解説した本は何冊も読んできました。
しかし、それらの本はいずれも「外資系企業で働いてみわかったこと」的な本でして、
言い換えると「従業員として。すでに出来上がった仕組みの恩恵を受けている人」が書いた本だったんですね。
それはそれで、「働き手の目線」で良質な情報が手に入るのですが、
一方で「制度の作り手」の視点では、なかなかリアルな情報が手に入りにくいなと。
しかし、
『アマゾンの最強の働き方』は、そういった仕組みを汗水流して作った人が書いています。
だからこそ、どんな課題に直面して、どんな施策を打ったら失敗して、どうやって解決したのか…まさに「思考の跡」が深く刻まれている本、それが『アマゾンの最強の働き方』です。
制度や仕組みの内容といった上辺の情報だけでなく、その裏側にある試行錯誤の痕跡まで知っておいたほうが、自社で真似するときも参考にしやすいじゃないですか。
「Amazonの先端的な仕組みを研究して、自社にも導入したいなー」と思っている人には、一番おすすめの本です。
ちなみに、本書から得た学びのペライチに整理すると、次のように表現できます。
- 依存関係(社員同士のやりとりや調整)が少ない組織こそ、自律的に動きやすい組織である
- 依存関係が少ない組織に変えるためには、徹底的に明文化するカルチャーが必要
- 加えて、自律的に動ける優秀な人材を採用する仕組みが必要。自分より1つでも重要な点で秀でている社員を採用する「バーレイザー方式」をAmazonでは実施している
無理やり要約すると、こんな学びを本書から得ました。
とはいえ500ページ超えの大作ですので、年末年始にもう何周か読み直そうかと思います。
『創造力を民主化する』永井 翔吾
本書は、ここ数年読んだ「思考法本」の中で、一番学びが深かった本です。
なぜならば、思考法の中でも難易度S級の「抽象化」「アナロジー」などのキーワードを、これ以上なく再現性高く解説しているからです。
あまりに感動しすぎて、著者と対談させていただいたので、よろしければ聞いてみてください。
さて、本書の何がそんなに魅力なのかを語っていきます。
思考本を読むと、だいたいどの本にも、「抽象化が大事だ」「アナロジー思考を使って、一見すると関係ない物事同士を繋げることが大事だ」って書いてあるじゃないですか。
でも、その具体的な手法をビジネスの場面で実践できるレベルで踏み込んで語っている本となると、全然ないんですよ。
というのも、抽象化とかアナロジーって超難易度高いんですよね。
これまでは、一部の地頭のいい人が暗黙知的に行っていたため、なかなかその手法がオープンになっていませんでした。
しかし、そういった思考技術を「民主化」してくれる本が登場しました。
『創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法』です。
本書のなかでも特に唸らされたのが、アナロジー思考の解説です。
例えば、歯ブラシの進化バージョンを考えるとしましょう。
最初にやるべきなのは、歯ブラシの使用シーンをWho×Where×Whoに分解していきます。
Who:会社員が
Where:自宅で
When:歯を洗うとき
その後、この3要素のなかから1つ選んで、抽象化していきます。
今回の例では、「歯を洗うとき」に焦点を当ててみます。
歯を洗うとき→身体を洗うとき→硬いものを洗うとき→何かを洗うとき
・・・こんな具合です。
このとき、「ほどよい抽象度」を選ぶのが、めちゃくちゃ難しいわけですが、
この本はわかりやすい目安を教えてくれます。
「あまりに抽象的で類推の対象が無数に広がりすぎてしまうレベルから一段下げた抽象度のもので、繋げる範囲を限定する具体的な要素が最低一つは入っているもの」
『創造力を民主化する』p185
「何かを洗うとき」という抽象度だと、類推先の対象が広がりすぎてしまう。
一段抽象度を落とした「硬いものを洗うとき」だと、ある程度、類推先を絞ることができる。
・・・この微妙な塩梅を言語化しているのが、本書の醍醐味なんです。
「文字ばっかりで、読むの面倒だよ」という方に、手書きで恐縮ですが、メモを残しておきます。
他にも、いろいろな概念をまとめて新たな発想を生み出す「統合思考」や、発想を真逆に振る「転換思考」といった方法論もわかりやすく解説されています。
ぜひ、ご一読ください。
『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』堀元 見
本書は2022年に読んだ中で、一番おもしろかった本です。
まず本の帯を見てみると、次のように記されています。
ビジネス書100冊のポイントを徹底抽出
『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』表紙の帯より
成功者たちがしている「厳選27の教え」
この1冊あれば他はいらない!
全ビジネスパーソン必携
働き方バイブル!?
期待が膨らむばかりですね。100冊分の教えが凝縮されているわけです。
ところが、いざ読み進めてみると、たしかに教えが凝縮されているのですが、予想のはるか斜め上をいっていました。
この本は・・・ベストセラーを100冊も読むと、自ずと見えてくる「ビジネス書間の矛盾」を27個紐解いた本だったのです。
その過程を通して
- 1冊の情報を鵜呑みにしてはいけない
- 結局、ビジネス書などのライフハックは「文脈依存」でしかない
- 自分の頭で考えて読まない限り、ビジネス書を仕事に応用することなんてできない
こんな厳しい現実を、シニカルにコミカルにつきつけてくれる本でした。
例えば、本書に出てくる矛盾に「嫌なことは断れvs嫌なことでも断るな」があります。
ホリエモンの本なんかを読むと
「嫌だったら断ればいい」
「他人の言いなりで過ごすなんて時間の無駄だ」
・・・と書かれていますよね。
一方で、The体育会系的な著者の本を読んでみると
「どんな依頼も断るな」
「断らないからこそ、相手に信頼され、次の仕事ももらえるのだから」
・・・と書いているわけです。
おいおい、どっちだよ?と思いますよね。
私も新卒時代にホリエモンの本を読んで「よし、嫌な仕事は断るぞ」と意気込んで、いろんな依頼に対して「NO!」と言いました。
ところが、全然うまくいきません。「いいから、黙ってやれよ」「何生意気いってるんだ」「そんなにやりたくなければ、やめちまえ」と言われる始末。
なぜ、ホリエモンは嫌な仕事が断れて、私は断れないのか?
そこで嫌々ながら「嫌なことも断るな派」の本を読んでみたんです。
そしたら、先ほどの問いの答えがわかりました。
ホリエモンは替えがきかないけど、私という人材は替えがきく。
替えがきくうちは、生殺与奪を得ることはできない。
替えがきかない人材になるためには
- 他の人には真似できないような、高いスキルを持っていること…競争優位性があること
- そのスキルが、いろいろな職場・会社で必要とされていること…需要があること
この2点の条件を満たす必要があるのだと、気づきました。
さて、何が言いたかったかというと、ビジネス書を何冊も読んでいると、多くの矛盾と出くわします。
矛盾と出くわしたときは「ふざけんなよ」と思考停止するでもなく、本を鵜呑みにして振り回されるのでもなく、
「なぜ教えが矛盾しているのか?」
「それぞれの教えの背後にある文脈は何か?」
「どう説明すれば、矛盾してないといえるのか?」
・・・などをしっかりと自分の頭で考えながら読むことが大事である。
これが、本書から得られた教訓です。
ついでに、学びを書き留めたメモも添付しておきます。
『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン
「生産性を上げると、逆にどんどん不幸になる」
これが本書の結論です。
・・・え?と思いますよね。
タイトルが『限りある時間の使い方』なので、てっきり「限られた時間で、生産性高く、たくさんのことをやる技術」が書いてあるのでは?と思うのですが。
いざ読んでみると、まったく真逆の結論が書かれていました。
「時間を支配しようとすればするほど、時間の支配が効かなくなる」
つまり、「時間は支配できるものである」という前提に立っている「生産性を上げる技術」とか「タイムマネジメント術」みたいなものは、無意味である。
これが、本書のスタンスです。
例えば、効率よくメールに返信する方法を学べば学ぶほど、より多くのメールを返す必要が出てきます。
当然、人間の処理力には限界がありますから、どこかのタイミングで、メールの海に飲み込まれてしまうでしょう。
また、「メールだと不効率だ」ということで、チャットツールを導入したとしましょう。
すると、メールのときよりさらに多くの連絡が、チャットツールで飛んでくるようになります。
鳴りやまない通知。
早く返せば返すほど、より多くのやりとりが流れてきて、これまた通知の海に飲み込まれる。
・・・これが「生産性の罠」であると、筆者は表現しています。
では、どうすれば、生産性の罠から抜け出して、自分の時間を取り戻すことができるのか?
その答えが本書には記されています。
気になる方、ぜひ読んでみていただければと思います。
こちらも、メモ図解をのっけておきます。
『プロジェクトのトラブル解決大全』
本書は、今年読んだ中で最も「きれいごと0%、現場感100%」という言葉が似あう本です。
例えば、
メンバーのタスクの見積から、バッファを摘み取る。
どうしてもヤバいときは、マイクロマネジメントを行う。
納期が遅れたメンバーには、「なぜ遅れたのか?」を真正面から聞く。
・・・などなど、「自分がメンバーだったら、されたくないな」と思うテクニックも書かれています。
しかし、そのぶん信用できる本でもあります。
ちなみに、本書から得た一番の学びは、「とにかく手を動かして書いてみること」の大切さです。
本書には、プロジェクトが炎上したときの対処法が86個まとまっています。
その中の3分の1は「書いて可視化すること」に関するもの。
- 炎上プロジェクトに参加することになったら、まず
- 体制図を書き出して、規模・リーダー・キーマン・指揮命令系統を把握する
- 問題を把握するために100の質問を書き出す
- 100の質問について、原因と対策の仮説を書き出す
- プロジェクトに参加した後も
- メンバーのスキルを評価表にまとめる
- 事象・原因・対策のフレームワークを整理する
…など、多数のテクニックが紹介されていますが、そこから透けて見えるのが「可視化へのこだわりの強さ」です。
とくにプロジェクトが炎上しているときは、現場で起きていることも複雑で、情報も錯綜しており、なおかつ時間も限られています。
そんななか、「何がわかっていて、何がわかっていないのか」を書き進めることが、解決の糸口になります。
ただ、どんなフォーマットでどんな情報を書き進めればよいかわからない・・・
この悩みに答えてくれるのが本書です。
「状況把握のためには、このフレームワークを書く」「問題を解決するためには、このフローに沿って整理する」と、いくつもフォーマットを提示してくれます。
こういったフォーマットを手元に控えておくと、いざ炎上プロジェクトやトラブルに直面したときも、初動で迷わずにスピーディに対処できます。
他にも、プロジェクトの火を消化させる仕組みや、嫌われる覚悟で人と接する術について、赤裸々に解説されています。
プロジェクトやトラブル対応に関わることがある方は、ぜひ読んでみてもらえると、よいかと思います。