スキルセット 書評

「提案」において最も大切な考え方を、0円の本に教わった

(画像出典:https://pixabay.com/ja/illustrations/)

どんな仕事を進めるにしても、避けては通れないものがあります。

それが「提案」です。


提案とは、自分の考えを相手に提出すること。

提案の目的は、自分の考えに合意してもらい、相手に動いてもらうこと。

では、「提案の本質的なコツ」とは、いったい何なのか?

以下のようなフォーマットを埋めることでしょうか。

  • 背景・目的
  • 解決すべき課題
  • 課題に対する解決策
  • 今後の進め方


確かにフォーマット通りに埋めるのは、お作法として大事かもしれません。

ですが、本当にそれが一番大切なコツでしょうか。


そんなはずは、ありませんよね。

そもそも、フォーマットを埋められるだけの「内容≒自分の考え」がなくてはなりません。

では、提案において最も大切な「自分の考え」は、どうやって作ればよいのか?

・・・この答えについて、実は0円で教えてくれる本があります。


内定者への手紙 ペインを探せ!ーなぜあなたの提案は通らないのか?

https://amzn.to/3m16wI6

この本です。


タイトルに「内定者への手紙」とあるので、バリバリ働いている社会人にとって、この本は盲点でしょう。

私も、本書を読む前までは「どうせ、学生に向けて、基本的なことを易しく説いた本でしょ」と高をくくっていました。


確かに、学生でも理解できるよう、非常に平易に書かれています。

しかし、内容は非常に深く、「提案」という行為の本質に迫るもの。

それもそのはずで、この本。

実は、ベストセラー『転職の思考法』『天才を殺す凡人』の著者、北野 唯我さんが書かれたものなんです。

では、この本から学べる「提案を作るうえで、最も大切なこと」は何か?


私は、次のエッセンスだと思います。

「あるべき」と「とはいえ」の両方を考え抜くこと

だと。

もう少し具体的に書くと、

  1. あるべき姿を考える
  2. 現状を把握する
  3. 1と2のギャップを埋めるアクションプランを考える
  4. 3を実施するうえで難色を示しような人々の「とはいえ…」を探る
  5. 4の解決策を考えておく

1~3は、どのビジネス書にも書いてあることですが、

ユニークなのが4の「とはいえ」の部分なんですよね。

***

私も「とはいえ」の部分を考えなかったせいで、何度も苦い思いをしました。

例えば、前職のコンサルタント時代に、クライアントのBtoB営業部門に対して、「あるべき営業数字の見方」を提案したことがあります。

いくつもの他社事例を調べ、クライアントのビジネスモデルも踏まえたうえで、自信作の検討資料を作成しました。

上司にも内容をチェックしてもらい、「うん、このロジックはよくできている」と言ってもらい、さらに自信を高め、いざクライアントのミーティングに。

相手の営業部長は「うん、いいんじゃないか。課長から見てもOKだったら、これで進めてくれ」と言ってくださいました

・・・が、その課長さんはというと、何やら納得のいかない様子。

「どの辺が気になりますか?」と課長さんに質問したところ、

「これじゃ、いままで報告していた数値と定義がズレるじゃないか」

「いままで使っていたExcelのフォーマットにハマらなくなるじゃないか」

など、五月雨式に指摘をもらいました。


このときは、「なんでそんなことを気にするんだ?」「あるべき姿を考えると、絶対この案が正しいだろ」「現状の仕事の進め方ありきで、口出ししてくるなよ」と、正直内心イライラしていたんですね。

そんなことを思いながら、2週間くらい、提案を修正しては課長にぶつけ続けました。

そして段々と、「課長も、あるべき数字の見方には納得されている。ただ、目の前の仕事が変化するのが怖いだけなんだ」とわかってきました。

そのあとは、提案の方向性を軌道修正しまして、

  • 現在の営業ミーティングで見ている数字の定義とズレてしまう件は、これまでの営業報告資料は3期分修正すればOK。経営層とも合意済みだから、安心してほしい
  • いままで使っていたExcelフォーマットは、実はこうすれば、最小限の修正で使える

…と、「足元の不安点を解消する方法」を充実させました。

すると、課長もすんなり合意してくれて、あっけなく?あるべき数字の見方を現場に展開できました。

***

このちょっとした経験から得たものは、次の学びです。

現場の「とはいえ」の部分、つまり「あるべき姿を実現するために、現場に強いられる負担」に目を当てる。

これが、「総論賛成、各論反対」を打破する一つの鍵だと。


その経験から数年後。

なんと、この「とはいえ」の大切さについて、詳細に体系立てて論じた本が「0円」で登場するとは・・・

こんなにも大切なエッセンスを0円で語る本、それが 『内定者への手紙 ペインを探せ!ーなぜあなたの提案は通らないのか?』 でした。

利益度外視で、とにかく「自分自身が学び取った仕事術を、できるだけ多くの人々に伝えたい」という北野さんの熱い思いが心の奥まで伝わってくる。そんな本でした。

内定者はもちろん、社会人1年目から中堅社員の方々まで、広くあまねくオススメしたい一冊です。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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