年間でやる気が最小値に至る3つのポイントがあります。
1つ目は1月。年末年始休み明けの絶望感は記憶に新しいでしょう。
2つ目は5月。1月から4か月間稼働しっぱなしでようやく迎えたGWが終わりをむかえる。これもつらい。
3つ目は8月or9月。夏休みが終わり、「え、年末までの4か月間、もう長期休暇ないの?」と、これまたどん底に。
その最初の関門である1月を読者の皆さまと乗り越えるべく、いつも以上にたくさんの本を読み、ブログでも紹介させてもらいました。
今回は、今月読んだ計20冊のなかで、特にオススメの本を5冊お伝えします。
そもそもの「オススメ本」の基準とは?
とはいえ、いきなり「オススメはこの5冊です」とか言われても、あまり説得力もないでしょう。
そこで、まずは「オススメ本の選定基準」について認識をそろえておきましょう。
常連さんにとっては「またか」という感じかもしれませんが…大事なことなので、何度も書かせてもらいます。
それは「わかりやすさ×深さ」のモノサシです。
わかりやすさを測るためには、以下の2点をチェックしていきます。
- 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
- 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
一方の深さを測るためには、以下の3つのツッコミに耐えうるかをチェックします。
- 他の本に無い「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)
- 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?(Why so?)
- 明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?(How?)
当然この2点では、Amazonをサーフィンしていてもわからないので、
1冊1冊書店でパラパラ読みしながら、選別しております。
その基準で選ばれた20冊のうち、特によかった本を5冊紹介いたします。
『リーダーシップ進化論』酒井穣
1月に読んだ本のなかで、というより、ここ3年ほどで読んだなかで、もっとも圧倒された「知のエンタメ本」がこちら。
リーダーシップについて、人類史の切り口で400ページ超にわたって語りつくされています。
しかも、人類が生まれる以前の数十億年前から現在に至るまでの、想像を絶する時間軸のなかで、1本線で繋がるストーリーが展開されている。
脚注の数は1000近く。
いったいどれほどの読書量をこなせば、こんなに盛りだくさんの引用を自由自在に操れるのか・・・終始、筆者の力量に圧倒されるこの「圧倒感」と「過度の知的刺激」こそが、本書の最大の魅力です。
本書の中で最も登場するキーワード「自己組織化」という概念は、おそらく一生モノの宝物になるはずです。
書評や図解をご覧になりたい方は、以下記事をご覧ください。
『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』高松智史
「あなたはどう思う?」
「現状分析はいいから、示唆を出してよ」
「So what?」
ビジネスパーソンとして生きていくにあたって、避けては通れない問いたちがこちら。
よく質問の割には、ちゃんと攻略法を示してくれる本がありませんでした。
「示唆が大事」「事実に対して、自分なりの解釈を加えることが大事」「解釈力で差がつく」なんてことを書いてある本は多いですが、肝心の「示唆の出し方」はブラックボックスのなか。
そんな暗闇に光を照らしてくれるのが本書。
特に印象的だったのが、誰もが知る「桃太郎」を題材に展開された示唆出しの具体例。
「桃太郎は、猿・雉・犬を仲間にした」
「鬼を倒すのだから、犬よりライオン、雉より鷲、猿よりゴリラを仲間に加えたほうが、勝率が高い」
「鬼を倒すのだから、犬よりライオン、雉より鷲、猿よりゴリラを仲間に加えたほうが、勝率が高い」
にもかかわらず
「桃太郎は、猿・雉・犬を仲間にした」
この対比から生まれる示唆は何か?
もしかすると、「チームを作るうえでは、リーダーよりも弱くて使いやすい人を選んだほうがいいのでは?」
・・・この示唆出しの例が本当にわかりやすすぎて、ビックリしました。
「対比のない示唆はゴミである」
この名言は忘れません。
『ネットワーク・エフェクト』アンドリュー・チェン
テクノロジーが発展した今、ビジネスを語るうえで欠かせないキーワードがあります。
それが「ネットワークの外部性」「ネットワーク効果」といった言葉です。
「ネットワーク効果って、ユーザが増えれば増えるほど、価値が増しているってことでしょ」
・・・と私も含め、多くの方々が、ネットワーク効果も意味合いをこのように捉えていることかと思います。
しかし、この認識、実は正しくないんです。
ネットワーク効果を正しく理解するためには、以下に示すような「コールドスタート」「転換点」「脱出速度」「天井」「参入障壁」、この5つのキーワードをおさえておく必要があります。そして、これら5つのキーワードとどう向き合えばよいのかを具体的に示してくれます。
この斬新さこそ、経営者やVC界隈の方々が本書に注目している理由なのでしょう。
『決定版 戦略プロフェッショナル 戦略独創経営を拓く』三枝匡
戦略コンサルタントが実際にどのように思考を巡らせ、フレームワークを活用しながら、人を説得して動かし、成果を上げていくのか?
・・・このテーマについて、おそらく本書以上にリアルに描写できている本は、この世にないのではないでしょうか。
それくらい、現場感をもって「戦略を立案するとはどういうことか」を追体験させてくれるのが本書です。
私自身、前作の『戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ』を読んで、コンサルの世界に挑もうと決意しました。
自分の思考力1つでビジネスの最前線で戦う姿に憧れたからです。
そんな人生を変えてくれた本のリメイク版が、今回紹介している『決定版 戦略プロフェッショナル 戦略独創経営を拓く』です。
前作よりもノンフィクション要素が減り、より現場感がにじみ出る仕上がりになっているため、個人的には今回の新作のほうがオススメです。
『読書について』ショーペン・ハウエル
続いてはこの本。
200年の時を経ても圧倒的影響力を持つ本書は、読書のスタンスを大きく揺さぶるメッセージを授けてくれます。
「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく」
「本から読み取った他人の考えは、他人様の食べのこし、見知らぬ客人の脱ぎ捨てた古着のようなものだ」
何とも痛烈な文章です。
何も考えず多読すればするほど、脳みそがツルツルになって考える力を失ってしまう。
「思考停止して読書するなよ」「読書して努力している気になるなよ」と警鐘を鳴らしてくれる本はそう多くはありません。
そんな貴重な指摘をしてくれる本を、お恥ずかしながらこの年になって初めて読みました。
・・・という意味で、非常に印象に残ったので、今回ご紹介させていただきました。