『投資としての読書』を出版して、もうすぐ2か月が経とうとしています。
ありがたいことに、Amazonの評価も4.6(28レビュー)と上々の評価。
中でも、個人的に好評のコメントを寄せていただいたのが、こちら。
「高速回転並読(こうそくかいてん ならべよみ)」
このネーミングは、るろうに剣心の四乃森蒼紫の奥義「回転剣舞六連」に憧れてつけたものです。
「この中二病感がたまらない」とのコメントもいただいて、嬉しい限りです。
・・・冗談はさておき、今回は「高速回転並読」とは何なのか、ブログでも少しご紹介できればと。
MBAで100本のケースを読み込んでたどり着いた「高速回転並読」
まず、「高速回転並読」という方法論に行きついた背景から。
この方法論にたどり着いたのは、MBAを取るために大学院に通っているときでした。
MBAの授業では、週1~2回訪れる授業に向けて、以下のような予習を行う必要があります。
- 企業の事例や財務情報や大量に書かれたケース(10~50ページほど)が事前配布されるので、それを読み込む
- 「自分が当事者だとすると、どんな意思決定をするのか」について考えをまとめる
しかも、同期間に複数科目を受けないと卒業に間に合わないため、「マーケティング」「ファイナンス」「マネジメント」といった別々のテーマと同時並行で向き合う必要があります。
加えて、1つひとつのケースは、業界特有の用語や会計用語が多く含まれていたり、英語の和訳が読みづらかったりと、内容を理解するのに大いに苦戦しました。
そんななか、何とか短時間で膨大な量のケースを理解しようと試行錯誤してたどり着いたのが「高速回転並読」でした。
要約すると、ポイントは以下の2点です。
- 「1周あたりの読む時間」は短くし、とにかく「回転数」を上げる
- 並行して読んでいるあいだに「無意識」を働かせる
この方法にたどり着いてからは、MBAの予習にかける時間が半分で済むようになりました。(毎回の授業に10時間かけていた予習時間が、5時間とか3時間に減りました)
読書もテキパキと捗るようになったので、マジでオススメの読み方です。
ポイント①:「1周あたりの読む時間」は短くし、とにかく「回転数」を上げる
読書にかける時間は、「1回あたりの読む時間×回転数」に分解されます。
この式でいうと、1回あたりの読む時間を減らして回転数を上げるアプローチをとる。
これが1つ目のポイントです。
つまり「本を読むときは、同じ時間をかけたとしても、最初から最後までじっくり熟読するよりは、ざっくり何周も読むほうが効率的である」というスタンス。
具体的には、次の手順で読んでいきます。
- 最初の3周は、理解しようとせずに「ただ眺めるだけ」の感覚で読む
- 4~7周目は、見出し・太字・各章の最初と最後だけを「理解するつもり」で読む
- 8~10周目は、興味があるけど理解できなかった箇所をじっくり読む
最初の3周:理解しようとせずに「ただ眺めるだけ」の感覚で読む
まず、最初の3周を「ただ眺める」ことの効果について。
本をパラパラと眺めるだけだと、何も頭に入ってこないのではないかと疑問に思うかもしれません。
しかし、パラパラと本をめくるだけでも、太字になっている文字や繰り返し登場する言葉であれば、自然と目に入ってくるんですよね。
例えば、DXの本を読んでみると、「標準化」「AI・機械学習」「ビジネスモデルの変革」などのキーワードが何度も出てきます。
キーワードだけでも断片的に掴んでおくと、自分が知っている知識と結び付けて、本の内容を予想できます。
「もしかして、AIを活用するにしても、データが整っていないといけない。データを整えるためには、業務を標準化して回す必要があるのかもな」くらいの想像であれば、本をパラパラ読みするだけでも可能かと。
4~7周目:見出し・太字・各章の最初と最後だけを「理解するつもり」で読む
4~7周目からは、本を理解するつもりで読んでいきます。
ただし、頭からじっくり読むのではなく、ざっくり要所を読み飛ばす感じで。
まず、本の骨子を理解するために、見出しに目を通します。
気になる見出しがある場合は、周辺の「太字の文章」にも目を通します。
よく理解できない見出しは8~10周目で回収するつもりでスルーしましょう。
興味を持てない見出しもスルーしてOKです。
また、各章の最初と最後だけを読む方法もオススメです。
各章の最初には、その章で解き明かしたい問いや問題意識が書かれています。
そして各章の最後には、その章の結論やまとめが記載されているケースがほとんど。
このように「見出し・太字・各章の最初と最後」だけに目を通せば、本全体の2割程度の分量を読むだけで、筆者の主張の8割程度を理解できるでしょう。
8~10周目:興味があるけど理解できなかった箇所をじっくり読む
8~10周目は、興味を抱いたものの理解できなかった箇所をじっくり読んでいきます。
8周目あたりに差し掛かると、本の主張や骨子をおおむね理解できている状態になっています。
筆者との間にある情報格差がだいぶ埋まっているはずなので、最初は理解できなかった箇所も、徐々に読み解けるでしょう。
実は、「回転数」を上げる読み方は、古来より重宝されていた?
ちなみに、何回も繰り返し読む方法については、『三国志・魏志』でも「読書百遍義自ずから見る」と言及されています。
これは「どんなに難しい本や文章でも、何度も繰り返して読めば自然と意味がわかるようになるもの」という意味です。
読書の回転数を上げるのは、古来より通用しつづけた効率的な読み方なのかもしれません。
ポイント②:並行して読んでいるあいだに「無意識」を働かせる
同じ本を何度も繰り返し読む方法をお伝えしましたが、1つ補足すべきポイントがあります。
それは「繰り返し読むときは、インターバルを挟む」ということです。一気に10周するよりも、3周読んだらいったん寝かせ、もう3周読んだらまた寝かせるほうが、本の内容を頭のなかで整理しやすくなります。
これは、頭のなかの「無意識」を活用できるからです。発想法の名著でありバイブルでもある『アイデアのつくり方』でも指摘されているように、情報を無意識に放り込んでおくと、水面下で整理整頓してくれます。
以下の図は、『アイデアのつくり方』の読書メモです。
本書によると、資料を収集してそれをかみ砕いて考え抜いたら、「絶望状態=頭の中がしっちゃかめっちゃかで、はっきりした明察が生まれてこない状態」になると。
この絶望状態に陥ったタイミングで、いったん問題を放棄する。
すると、頭の中の「無意識くん」が独りでに情報を整理整頓してくれると。
そしてある日、シャワーを浴びているとき、トイレをしているときなんかに、ふとアイデアが降ってくる。
・・・こんなメカニズムで、新たなアイデアは生まれてきます。
以上の話を読書に当てはめると「本を読んだあとは、いったん放置して、情報を無意識に放り込んでおきましょう」ということです。
では、本の情報を無意識に寝かせている間どうするかというと、別の本に手を出します。
Aを読んでいる間はBの本を無意識に放り込んでおいて、Bを読んでいる間はAの本を寝かせておく。
このように、複数の本を並読しながら、意識と無意識を同時並行で動かしていくと、より効率的に本を読み進められます。
まとめ
以上、るろうに剣心の四乃森蒼紫の奥義「回転剣舞六連」に憧れて名付けた「高速回転並読」を紹介してきました。
サマると、以下2点がポイントでした。
- 「1周あたりの読む時間」は短くし、とにかく「回転数」を上げる
- 並行して読んでいるあいだに「無意識」を働かせる
この方法をやるだけで、本の理解度を爆上げできるはずです。
・・・とはいえ、今回紹介したのはあくまで、読書術の一部にすぎません。
「理解した内容を、どのように要約しておくと、本の学びを忘れずに済むか?」
「そもそも、ハズレ本を引かないために、どんな基準で本を選べばよいか?」
「そもそも、読書はあくまで独学の手段にすぎない・・・であれば、独学のやり方はどうあるべき?」
といった論点を体系的に理解してこそ、今回の「高速回転並読」の効果が何倍にも跳ね上がります。
『投資としての読書』では、これらの論点を全部クリアにしています。
気になる方は、ぜひ!