この本で解ける疑問は?
- 職場に対する不満はどこから来ているのか?
- 転職を妨げているものは何なのか?
- 転職力を高めるために、どうすればよいのか?
『転職学』とは
先に結論から申し上げますと、「今まで読んだどんな転職本よりも、納得感が高い本」でした。
300ページ以上、1万2千人の大規模調査のデータによって、強固なロジックが展開されているこの本。
執筆者は、大学教授とパーソル研究所。まさに、理論の雄×実践の雄によって書かれた本だけあって、圧倒的な内容でした。
論より証拠。早速レビューに入っていきます。
※★の基準は以下の通りです。
★★★★★:満足
★★★★:やや満足
★★★:普通
★★:やや不満
★:不満
わかりやすさ
「わかりやすさ」については、以下2つの観点で評価していきます。
- 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
- 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
詳しく見ていきましょう。
本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
本書の骨格を支えるのが、転職の方程式です。
この転職の方程式とは、次の式で表されています。
D(今の会社への不満)×E(転職力)>R(転職への抵抗感)
この方程式をベースに、体系的に論が展開されています。
図で示すと、以下のように表現できます。
- 職場に抱く不満の本質は何なのか?
- 転職力を構成する、①ステータス(個人が持つ知識やスキル)、②アクション(転職において発揮される一連の能力)の2つを底上げするためには、どうすればよいのか?
- なぜ人は転職に抵抗感を抱くのか?
- 転職したとして、新しい職場に馴染むためにはどうすればよいのか?
…このような論点を網羅的に拾ってくれる本です。
中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
300ページ以上と、そこそこボリューム大なのですが、スラスラと読み進めることができます。
というのも、図解が多様されていたり、専門用語にも丁寧に解説が加えられていたりと、わかりやすくする工夫が随所に施されています。
まさに、学生からビジネスパーソンにとっての「転職学のテキスト」となり得る一冊です。
深さ
「深さ」については、元コンサルっぽく「So what?」「Why so?」「How?」と問いかけながらレビューしてみます。
具体的には、以下の3つの観点で見ていきます。
- 他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)
- 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?(Why so?)
- 明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?(How?)
他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?
「あっと驚く洞察」の中でも、特に圧巻だったのが「転職の方程式:D×E>R」でした。
転職の意思決定を、このようなシンプルなモデル式で表すとは…
筆者の思考力には脱帽です。
また、個人的に面白かったのが「職場に不満を抱く、本質的な理由」についての記述でした。
筆者の仮説と1万2千人のデータを行き来しながら、「職場の不満の真因」を特定していくプロセスには、思わず息をのみました。
詳しくは本書をご覧になってほしいのですが、不満の真因を読んでいただくと、「あ、なるほど。言われてみれば、本質を突いているな」と思える結論だと思います。
…と、このような「唸る洞察」が多数登場します。
間違いなく、良書だと思います。
主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?
論拠についても申し分ございません。
1万2千人のデータを用いて、あらゆる角度から定量的な分析がなされています。
読んでみると、50以上のグラフが登場して、驚くかと思います。
さすがに大学教授と民間の研究所が出している自信作だけあって、主張の論拠がしっかりしています。
明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?
実践性についても、本書は丁寧にフォローしてくれます。
例えば、自己理解を高めるためのワークを掲載しているなど、読者がすぐに手を動かせるよう工夫がなされています。
一方で、いざ転職に向けて動き出すときの第一歩や、面接の攻略法、自己学習の方法論については、自分なりにワンクッション解釈を加えないと、アクションに落とし込むのは難しいかと思います。
まあこのあたりは、巷にたくさんのハウツー本が出回っているので、全く持って問題ありません。
学び
これまで読んだ本を統合して、転職の考え方を整理すると、以下の図表のようになります。
- 本書『働くみんなの必修講義 転職学 人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは』の「転職の方程式:D×E>R」をベースにしています。
- E=転職力の「ステータス(個人が持つ知識やスキル)」の部分は、『転職の思考法』のフレームワーク「業界の生産性×技術資産×人的資産」で説明することができます。
※『転職の思考法』の書評をご覧になりたい方は、こちらの記事をご覧ください。
…と、このように、複数の本を通した学びを、自分なりに統合してみると、また新しい発見がありますね。
今日も良本との出会いに感謝です。