この本で解ける疑問は?
- 部下のモチベーションは上げないとダメなのか?
- どうすれば部下が自走してくれるのか?
『これからのマネジャーは邪魔をしない。』とは
「邪魔をしない・何もしない」
「一体感の追求こそが、モチベーションを下げている」
「モチベーションは上げなくていい」
…本書で語られる考え方1つひとつが、私が抱いていた「マネジメントのイメージ」を覆していく。
最近読んだ本の中でも、本書は断トツで「固定観念が良い意味で壊された本」でした。
その本の名は『これからのマネジャーは邪魔をしない。』。
早速レビューに入っていきます。
※★の基準は以下の通りです。
★★★★★:満足
★★★★:やや満足
★★★:普通
★★:やや不満
★:不満
わかりやすさ
「わかりやすさ」については、以下2つの観点で評価していきます。
- 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
- 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
詳しく見ていきましょう。
本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
この本の目次を見てみると、丁寧に「Why(なぜ)→What(何を)→How(どのように)」のステップを踏んでいるのがわかります。
- コロナ禍で、マネジメントにどんな変化が起きているのか?
- 変化に鑑みると、マネジャー・リーダーはどうあるべきで、チーム・組織とどう向き合うべきか?
- 具体的に、どのような仕事術を習得すればよいか?
…と順序立てて話が展開されているので、頭にスッと入ってきやすい仕立てになっています。
中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
表現や文章の書き方も非常にわかりやすいです。
一文一文が短く区切ってありますし、身近に感じることができる経験談が豊富に盛り込んであります。
なので、スラスラと、自分に引き寄せながら読み進めることができます。
特に個人的に驚いたのは、「図解が少ないのに、読みやすい点」です。
通常であれば、図解がないと、スピーディーに本の内容を理解するのはなかなか困難です。
しかし本書は、図解があまり使われていないのですが、きちんと概念が頭の中に流れ込んできます。
余談ですが、この感覚は『アイデアのつくり方』を初めて読んだときの感覚と似ています。
それくらい、驚くほど頭に入り込んでくる本でした。
深さ
「深さ」については、元コンサルっぽく「So what?」「Why so?」「How?」と問いかけながらレビューしてみます。
具体的には、以下の3つの観点で見ていきます。
- 他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)
- 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?(Why so?)
- 明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?(How?)
他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?
この点については、言うまでもありません。
冒頭にも申し上げたように、一見すると「マネジメントと対極にあるような考え方」が次々と展開されます。
「邪魔をしない、とはどういうことなのか?」
「邪魔をしないと、どんな利点があるのか?」
「どうすれば、邪魔をしないで済むのか?」
その答えに全て答えてくれます。
主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?
実体験や具体例が充実している点に加えて、個人的に驚いたのが「失敗談の量」です。
およそ20ページに渡って、筆者の失敗談が赤裸々に記されるパートがあります。
このパートを読むと、「なぜ、邪魔をしないスタイルに行きついたのか?」を知ることができます。
失敗談に裏付けされた説得力がとにかく凄まじい本です。
そんな中、もし無理やりいちゃもんをつけるとしたら、マネジメントの先行事例や定量データまでついていると、さらに説得力が増すなと思いました。
あ、でも、この本がそもそも「最先端のマネジメント」なのかもしれない…
明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?
本書には、「本書はマネジメントのノウハウが載っている本ではありません。」と記されています。
…そう言っておきながら、第5章は「リモート時代のマネジメント仕事術」なんですね。
コロナ禍に合わせたハウツーまで丁寧にフォローしてくれる、本当に親切で優しい本なんです。
もちろん、メインは「考え方」が書かれているので、自分なりに解釈を加えて行動に落とし込む必要があります。
それでも、私たち読者が具体的にアクションに移せるように、しっかり実践まで踏み込んで語ってくれる良本です。
学び
本書には、「メンバーが主体的に動く4つの条件」が紹介されています。
①自走を可能にする情報が共有されていること
②自身の判断で動いていい権限を与えられていること
③自身が何をすべきか考える能力を備えていること
④失敗してもマイナス評価にならないこと
p105
この4条件が揃わないと、メンバーが当事者意識を働かせるのは無理だと語られていました。
これを読んだとき、思わず手が震えました。
私自身、全く同じ問題意識を持っていたからです。
具体的には「当事者意識にも、良いものと悪いものがあるはず」「当事者意識を正しく働かせることが必要だ」と考えています。
以下の図表をご覧ください。
横軸は、当事者意識を自分から抱いているものなのか、他人から半強制的に抱かされたものなのか。
縦軸は、組織の統制がとれているかどうか。
この「組織の統制がとれているかどうか」の部分は、実は先ほどの4条件の①や②のことを言っているんですね。
①自走を可能にする情報が共有されていること
②自身の判断で動いていい権限を与えられていること
③自身が何をすべきか考える能力を備えていること
④失敗してもマイナス評価にならないこと
詳しくは、以下の記事で述べていますが、「当事者意識をきちんと機能させる方法」について、同じ方向性の考え方と出会えたのは、何だか勇気を持てました。
本をたくさん読んでいると、思わぬ思想との出会いがありますね。
良書との出会いに感謝です。