この本で解ける疑問は?
- 株価急落は、どういうメカニズムで生じるのか?
- 投資の「売り時」は、いったいいつ?
『逃げて勝つ 投資の鉄則』とは?
本書のプロローグは次の言葉でスタートします。
「含み益は幻」
この言葉通り「一時は含み益が倍だったんだよ。私の眼は正しかった。なのに、あのとき売っておけば」と嘆かれたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
ご多分に漏れず、私も含み益に泣いた一人でもあります。
泣いたと同時に「投資は買い時も大事だが、売り時はもっと大事かつ難しいのではないか」と問題意識を抱くようになりました。
しかし、どの本を読んでも、歯切れよく「逃げ方はこうです!」と教えてくれるものはありませんでした。
そうして「ああ、売り時や逃げ方は、個人のセンスや運なんだな…再現性がないから、誰も本に書かないのか」と諦めかけていたそのとき。
ついに探し求めていた本と出会ったのです。
それが『逃げて勝つ 投資の鉄則』です。
筆者は四半世紀以上、投資の世界の最前線で生き残ってこられた方です。
四半世紀以上の経験と知識から、バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍いずれにも共通する「逃げ時を見抜くロジック」が導かれています。
そして、「逃げ時を見抜くロジック」から、ある結論を提言されています。
それが「コア・サテライト投資」です。私なりに2行で要約すると…
- 投資の中心(コア)には、インデックスを据える
- 逃げ時のアンテナ役(サテライト)として、各国成長株を混ぜておく
本書を読んでみると、この「コア・サテライト投資」がいかに合理的な戦法かがわかります。
是非、本書のロジックにナマで触れていただきたい。
そのためにも、この『逃げて勝つ 投資の鉄則』の魅力を全力で伝えていきます。
※★の基準は以下の通りです。
★★★★★:満足
★★★★:やや満足
★★★:普通
★★:やや不満
★:不満
わかりやすさ
「わかりやすさ」については、以下2つの観点で評価していきます。
- 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
- 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
詳しく見ていきましょう。
本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
まず、本書の構成は「損失から学ぶ教訓8つ」「逃げて勝つ投資の鉄則7つ」…とポイントを絞って書かれています。どこが重要なのかがスッと理解できますね。
一方で、8つの教訓や7つ鉄則同士の因果関係・つながり・包含関係を読み解くには、それなりに熟読する必要があります。
中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
株価に影響を与えるマクロ環境の複雑なトレンドを、シンプルなロジックで解き明かしている点が非常に素晴らしいです。
『How google works』にも「正しい戦略には、ある種の美しさがある」と記されていますが、まさにその美しさが宿るロジックが展開されています。
一方で、基本的な経済学の知識(金利・ドル円相場など)を理解していないと、読むのに少し苦労するかと思います。私も「円安だと、どんな企業がどんなメリット・デメリットに直面するのか」を調べながら読み進めました。
経済の基礎知識をお持ちの方は、スムーズに読めるかと思います。
深さ
「深さ」については、元コンサルっぽく「So what?」「Why so?」「How?」と問いかけながらレビューしてみます。
具体的には、以下の3つの観点で見ていきます。
- 他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)
- 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?(Why so?)
- 明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?(How?)
他の本に無いような「あっと驚く洞察」がなされているか?
この項目については、文句なしで★×5でした。(本当は10くらいつけたい…)
よく投資のアドバイザーが言っている「長期で、分散させながら、積立投資をしましょう。リスクを抑えながら、長期的に複利効果で大きなリターンを獲得できますよ」というアドバイス。
一見正しそうなこのアドバイスにも、筆者は鋭く切り込んでいます。その切り込む確度とロジックの強さには驚きました。
また、冒頭にも書いた通り、どの本でもあまり語られていない「売りどき」にフォーカスしている点が斬新かつ実用的でした。
主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?
多くのファクトと共に、短期・中期・長期・超長期の軸で、美しく納得度の高いロジックが展開されています。
少なくとも金融初心者の私の眼には、非の打ち所がないロジックに映りました。
明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?
まず、「コア・サテライト投資」という具体的な投資方針が示されている点は、非常に魅力的です。
一方で、「コアにどの銘柄の株式を据えるか?」「コアとサテライトの比率はどうすればよいか?」については、自分の頭で考える必要があります。なので、すぐにアクションを取るためには、もうワンクッション何らかのインプットが必要になりそうです。
学び
自分なりの「逃げの条件」を言語化できた
この本を読んだことで、自分なりに「逃げ(売り時)の条件」を以下のように定義できました。
- 世界の最先端経済国であるアメリカが、金融引き締めの方針を示し、
- アメリカの住宅市況を示す指標(例:ケース・シラー米住宅価格指数)が2ヶ月以上下降傾向にあり、
- 保持している個社株式が1週間で5%以上値下がりしたとき
まだまだ素人考えなので、この定義をUpdateしていく必要はあるでしょう。
しかし、何よりも収穫だったのは、自分の中で「定量的な撤退条件」を定義できたことでした。
ファイナンスや投資の勉強は面白いですね。
引き続き、勉強を積み重ねたいと思います。