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【要約・書評】『世界は贈与でできている』近内 悠太

この本で解ける疑問は?

  • お金で手に入らないものは何か?
  • 資本主義の隙間を埋めるカギになる「贈与」とは何か?

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『世界は贈与でできている』とは?

「プレゼントはなぜモノでないといけないのか?」

私が昔から抱いていた疑問です。

経済学的に考えれば、モノよりも現金を渡した方が、渡された方の効用も高くなるはず。

なぜならば、モノよりも現金の方が、使い道に「選択の自由」があるから。

なのに、プレゼントは現金よりもモノが喜ばれる。

これは一体なぜなのか?

一応私なりに次の2点の仮説を立てました。

  • 相手にとって物を選択して買うこと自体がコストになるとき
  • プレゼントを悩んで選ぶ過程そのものが付加価値になるとき

しかし、もっと本質的な理由が何かあるはず…

そんなモヤモヤを抱えて数年がたち、ついにこの謎に答えを出してくれたのが、本書『世界は贈与でできている』です。

 

 

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 贈与とは「我々が必要としているのにも関わらず、お金で買うことのできないものおよびその移動」のことである。
  • 贈与は受け取ることなく開始することはできない。
  • 贈与は贈与を生まなければ無力になる。
  • 贈与は確実に相手に届くとは限らない。
    贈与はそれが贈与だと知られてはいけない(知られた瞬間「交換」になる)。
  • 贈与は未来にあると同時に過去にある。
  • 差出人にとっては・・・
    ★「届いてくれたらいいな」という未来時制で贈与を差し出している
    ★贈与は差出人に倫理を求める
    ★他者への贈与を通して、逆に贈与を受け取っている
  • 受取人にとっては・・・
    ★「あれは贈与だったのか」という過去時制で贈与を受け取っている
    ★贈与は差出人に知性を求める

いかがでしたでしょうか。

本書は、「贈与」というものの本質と構造に迫る、深い本でした。

特に驚くべき点は、引用されている作品の数です。

日本の小説から海外の古典まで幅広い知見が、この本に集約されています。

「金銭を用いた交換」を前提とした資本主義を超える「贈与」という概念を提示している、斬新で機知に富んだ本でした。

所感

良い矛盾と悪い矛盾

個人的に本書を読んでいて一番印象に残ったのが、次の文章です。

矛盾には「質の悪い矛盾」と「質の良い矛盾」があります。

質の悪い矛盾はその主体から生命力を奪い、その場に縛りつけますが、質の良い矛盾はその主体に生命力を与え、その人を動かします。

p102

ただ合理的なメッセージを10個も20個も並べ立てても、ありきたりすぎて、相手を感動させることはできない。

合理的なメッセージの後に、ほんの少しだけ不合理な要素を混ぜる。

 

プレゼントをわざわざモノで渡すのも、不合理の1つです。

こうした「ちょっとした不合理」によって贈与は成り立っているのだと。

これは他の色々な物事にも当てはまるエッセンスのように感じました。

日常の中で「質の良い矛盾」を見つけていこうと思います。

 


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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