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【要約・書評】『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』佐々木 康裕

この本で解ける疑問は?

  • 新たなビジネスのあり方「D2C」とは?
  • 「モノからコトへ」の次の時代は?
  • 「世界観やストーリー」を作り上げるために必要なことは?


https://www.amazon.co.jp/dp/491006303X

『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』って?

「D2C(Direct to Consumer)」

このキーワードを聞いたことはありますか?

これは「メーカーが、小売りや代理店などを介さずに、ECサイトから直売するモデル」を意味します。

一見すると、「ふーん、それで?」と思いますよね。

表面上の意味だけを読むと、確かに「ふーん」で終わってしまいます。

 

しかし、もう一歩踏み込んで、「どうすれば、D2Cが成立するのか?小売や代理店を通して伝統的な売り方との違いは何か?」と考えてみます。

例えば、家具を思い浮かべましょう。

これまで通り「機能性」の優先度が一番高い場合、ECサイトで買うのは怖いですよね。

家具などは、「機能性」を現地現物で確かめるために、リアル店舗で売るのが当たり前である。

 

・・・これが従来の考え方です。

では、現在はその通りになっていますでしょうか?

答えは否。

通販で、オシャレな家具がたくさん買われています。

通販では「機能性」を判別するのは難しいのにも関わらず、です。

その理由は、顧客にとっての優先度が「機能性」から「世界観やライフスタイル」に変わってきているからです。

では、どうすれば「世界観やライフスタイル」を表現できるのか。

この方法について教えてくれるのが、本書『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』です。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • これまでは、「モノからコトへ」というキーワードが喧伝されてきた。顧客は、自動車、洋服、アクセサリーなどの「モノ」の消費に価値を感じなくなり、旅行、友達との食事、ヨガや読書などの「コト=体験」の消費により大きな価値を感じるようになってきていた。
    この「モノからコトへ」のトレンドは、現在「コト付きのモノ」へと移ろいでいる。モノによって、顧客が思い描くライフスタイルを実現させる。モノを核としながら世界観を作りこむ動きが主流になってきている。
  • 「コト付きのモノ」を実現させるためのビジネスのあり方が、「D2C」である。この特徴は、伝統的なブランドと比較するとわかりやすい。
    例えば、伝統的なブランドはメーカとして誕生している。一方で、D2Cブランドはデジタルネイティブを出発点としているため、出発時点でデータサイエンスやオムニチャネルの考え方を持っている
  • 「D2C」モデルを実現させるためには、いくつかポイントが存在する。
    • 「機能」ではなく「世界観」を売ること。
    • 「他人」ではなく「友人」に売ること。
    • 「ファネル」から「ループ」へ
    • 「4P」から「4E」へ

いかがでしょうか。

キーワードを追うだけでも、「従来のフレームワークや考え方が大きく変わっていること」がよくわかります。

例えば「"4P"から"4E"へ」の話もそうです。

「一過性の流行りだろ」と穿った見方をせずに、謙虚に新しい考え方を歓迎する姿勢が求められているのかもしれませんね。

そう強く思えたので、新年最初のビジネス書として、本書をご紹介しました。

学び

『WHYから始めよ!』との共通点

本書を読んで、真っ先に思い浮かんだのが『WHYから始めよ!』でした。

下記の図をご覧ください。

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言葉遣いは異なりますが、本質的なメッセージは同じです。

つまり「機能性(=WHAT)ではなく、世界観(WHY)を売れ」と言っているわけです。

WHYから始めよ!』では、WHYを起点にして大成功を収めた企業例としてAppleを挙げています。

D2Cの根底にある思想を、Appleは数十年も前から実践していたわけですね。

驚きが隠せません。

 

なぜ「世界観(=WHY)>機能性(=WHAT)」なのか?

「PC」を例に挙げてみます。

まず、PCを「機能性」重視で売っている企業Pがあったとします。

処理速度がどれくらいで、軽さがどれくらいかをアピールしまくるわけです。

そうすると、確かに、その機能性を評価した顧客は、PCを買ってくれるはずです。

しかし、それで終わりです。

 

一方、PCを「世界観」重視で売っているApple社があります。

Appleはご存知の通り、「世界観」を訴求していますよね。

その証拠に、Appleユーザーに「なぜAppleを買ったのか?」を聞くと、機能性に関わらず「カッコいいから」などのコメントが返ってくるはずです。

そのAppleが、今度はスマホなど、PC以外の商品をどんどん売っていきます。

すると、Appleユーザーの多くは、スマホもApple社のものを購入します。

これは極論ですが、おそらくAppleが洗濯機を売っても、Apple信者は、その洗濯機を買うと思います(笑)

それはなぜか?

答えは、「機能性ではなく、世界観を買っているから」です。

「世界観」に共感してもらえば、買ってもらえる商品やサービスの幅が広がるのです。

これも、D2Cが目指す「世界観」の一つなのだと思います。


https://www.amazon.co.jp/dp/491006303X

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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