この本で解ける疑問は?
- 後悔の少ない意思決定をするためにはどうしたら良いのか?
- 私たちに本当の喜びをもたらす働き方とは何か?
- 「人生の選択」という正解のない悩みにどうやって答えを出せばいいのか?
https://www.amazon.co.jp/dp/4295403741
『科学的な適職』って?
「自分に適した職とは?」
おそらくすべての社会人が、この問いの答えを知りたがっているはずです。
しかしながら、不思議ですよね。
他人にはフラットにアドバイスできている"つもり"でも、いざ自分事となると、一気に強いバイアス働いてしまう。
もっとも、「自分の中のバイアス」の存在にすら気づけないケースが大半ですが・・・
そのバイアスの結果、職業選択に失敗してしまう。
「こんなはずではなかった」と。
ではどうすれば「こんなはずではなかった問題」を解消することができるのでしょうか?
この問いに、4021の研究データを使って答えを導いた本が出版されましたので、ご紹介します。
本のタイトルは『科学的な適職』。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
- 本書のゴールは「仕事選びにおける意思決定の精度を高め、正しいキャリアを選び取る確率を上げ、最終的に"人生の後悔"を限界まで減らすこと」である。
このゴールを達成すべく、複数のデータから「幸福な仕事選び」に役立つ可能性の高いテクニックを抜き出し、5つのステップに体系化したものがある。
それが、「幻想から覚める」「未来を広げる」「悪を取り除く」「歪みに気づく」「やりがいを再構築する」の5ステップである。 - 「幻想から覚める」については、仕事選びにおける7つの大罪に気づく必要がある。7つの大罪とは、1)好きを仕事にする、2)給料の多さで選ぶ、3)業界や職種で選ぶ、4)仕事の楽さで選ぶ、5)性格テストで選ぶ、6)直感で選ぶ、7)適性に合った仕事を求める、の7つである。
- 「未来を広げる」については、仕事の幸福度を決める7つの徳目に自覚的になる必要がある。1)【自由】その仕事に裁量権はあるか?、2)【達成】前進している感覚は得られるか?、3)【焦点】モチベーションタイプに合っているか?、4)【明確】ミッションやビジョンは明確か?、5)【多様】仕事にバリエーションはあるか?、6)【仲間】組織内に助けてくれる仲間はいるか?、7)【貢献】どれだけ世の中の役に立つか?の7つのチェックポイントを確認するとよい。
- 「悪を取り除く」については、最悪の職場に共通する8つの悪を取り除いていく。1)ワークライフバランスの崩壊、2)雇用が不安定、3)長時間労働、4)シフトワーク、5)仕事のコントロール権がない、6)ソーシャルサポートがない、7)組織内に不公平が多い、8)長時間通勤の8つである。この8つを取り除くか、取り除けない場合は、転職を視野に入れる。
- 「歪みに気づく」については、バイアスを取り除くための4つの方法を駆使する。
1つ目は「10・10・10テスト」である。「この選択をしたら、10分後・10か月後・10年後にはどう感じるか?」を考える。
2つ目は「プレモータム」である。①敗北の想定、②原因の探索、③過程の想起、④対策の考察の流れで、失敗したときのシミュレーションを入念に行う。
3つ目は「イリイスト転職ノート」である。1日15分~自分がその日行った「職選びに関する意思決定」の内容を3人称で書いていく。
4つ目は「友人に頼る」である。「360度フィードバック、クローズドクエスチョン、脳内の友人と会話」を活用する。 - 「やりがいを再構築する」については、人生の満足度を高める7つの計画がある。
1)ビフォースケッチ、2)ビフォースケッチの省察、3)動機と嗜好のピックアップ、4)課題クラフティング、5)関係性クラフティング、6)認知クラフティング、7)アクションプランの7つである。
いかがでしたでしょうか。
筆者の言い回しを見て見るとわかりますが、「バイアスをなるべく取り除いて、客観的に語ろう」とする姿勢が浮彫になってくる文章です。
世界の著名な研究者の論文やデータが、実に適切に、絶妙に紹介されています。
何より驚くべき点は、世界の研究者のバラバラの意見を、1つの体系、1つのストーリーとしてまとめあげているところです。
相当な読解力と構造化力がないと、このような本は書けません。
筆者の力量には感服いたします。
学び
「やってみて考えるスタンス」とのバランスが大事
本書は、「人生やキャリアの節目におけるチェックリスト」として大いに活用できます。
実に網羅的に、キャリア選びの論点が記されています。
しかし、この「チェックリスト」を正確に埋めることができるタイミングは、やっぱり「転職した後」であり「やってみた後」なわけです。
「やってみる前」から、チェックリストを完璧に埋めようと思っても、到底無理な話です。
仮にそれなりにチェックリストを埋めてから転職したとしても、マクロ環境の変化で、チェックリストの答えが変わるかもしれません。
以上を踏まえると、「チェックリストが6割くらい埋まったら、とりあえずスタートしてみるスタンス」が大事なんだと思います。
私も今年、「人生最初の転職」をしました。
「最初の転職」を意思決定する前は、かなり慎重になりました。
しかし、一度意思決定をしてしまうと、不思議なものです。
いわゆる「初体験のハードル」を超えた後は、見える世界が変わってきます。
私の場合は、転職を機に「土俵感」を気にするようになりました。
- 自分の土俵と違うフィールドが強いられたら、潔くそのゲームから降りる
=キャリアチェンジする - 自分の土俵上で激しい戦いが強いられたら、歯を食いしばって意地でもそのゲームで勝つ
=キャリアチェンジしない
好き嫌いがハッキリしているタイプだと、この「土俵感」にしたがって意思決定していくと、余計なストレスなくキャリアを設計できるように思えます。
※「土俵感」については、こちらの記事をご覧ください。
【1枚でわかる】『「仕事ができる」とはどういうことか?』楠木 建、山口 周 - BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで