この本で解ける疑問は?
- 昔もデジタル時代も変わらない、マーケティングで持つべき視点とは?
- 正しい「目的」の立て方とは?
- ブランドとマーケティングの違いは何か?
『マーケティングプロフェッショナルの視点』って?
本書はとあるマーケターの方からオススメされた本です。
その方とは初対面で、5分間ほどお話をしたわけですが…
「初対面、かつ5分」という僅かな情報量にも関わらず、私が現在抱いている課題感にピッタリ当てはまる本を紹介してくださったのです。
それが『マーケティングプロフェッショナルの視点』だったわけですが、
何より、本書を紹介してくださったマーケターの方の「人間理解力」に驚きました。
そこで、本書を読めば、そのマーケターの方の「人間理解力」の裏側のメカニズムに迫れるのでは?と思い、手に取ってみました。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「まえがき」には、次のように述べられている。
マーケティングプロフェッショナルのモノの見方や考え方を体得するには、自分で相応の時間をかけて経験から学ぶこともできるし、運が良ければそうした人と一緒に働くことを通しても学べるだろう。いずれも、いささかの時間と運を必要とする。そこで本書では、時間と運の必要性を下げるために、実用性が高いものを選んで説明している。
(中略)
本書では体系化した概念というよりは、断片的、散発的でありながらも汎用性と有用性の高い考え方に焦点を当てている。(4ページ)
つまり「プロが運に恵まれながらも時間をかけて醸成した、マーケティングのモノの見方を体得してもらうこと」が本書の目的といえます。
-What-なにをすべきか?
ずばり「マーケティングプロフェッショナルの視点とは?」というテーマで、本書では24のヒントが詰め込まれています。
これら24のヒント整理しますと、次の3つの要点に集約されました。
- 戦略:目的達成のための資源利用の指針を立てる
- マーケティング:「いい〇〇」を定義することで市場創造する
- ブランド:固有の大義や人格、ベネフィットなどを中心とした「意味」を作る
このように、マーケティングのエッセンスを200ページ弱に凝縮した筆者の力量には、驚きを隠せません。
中でも印象的だったのが、「戦略」の話でした。
マーケティングの書籍なのに、「戦略」について丸々1章を割いて、約50ページに渡って述べられているのです。
そう、マーケティングと戦略は切っても切り離せない関係なのです。
ですので、今回は「戦略」の部分を詳しく見てみます。
-How-どのようにすべきか?
戦略は目的と資源
先述したように、戦略の定義は「目的達成のための資源利用の指針を立てること」です。
本書では、「戦略は目的と資源」というキーワードが何度も登場します。
つまり、マーケティングを語る上で、外せないポイントだということです。
では、本書で言っている「目的」と「資源」とは、どういう意味合いなのでしょうか?
普段我々が使っている「目的」と「資源」とは違うのでしょうか?
まずは、「目的」ありき
サンプリングの目的:「1人でも多くのお客さまと出会うこと」
よく資料の「目的」のページで見かける記述です。
これ、実は"イケていない"目的なのです。
- 明確な人数目標は?
- お客さまが誰なのか、新規なのか既存なのか?
- 「出会う」は何を指しているのか?
…と、このような指摘が出てきそうですね。
しかし、この問題の本質はそこではない。筆者は次のように指摘しています。
ここで目的として示されているのは、サンプリングという活動の記述にすぎない、ということだ。試供品を配るという行為は、文字通り、1人でも多くのお客さまと出会うことであるだろう。このサンプリング活動の目的は、果たして競合ブランド使用者からの試用者を増やしたいのか、新たに製品カテゴリーの使用者を増やしたいのか、既存顧客の離反を防ぎたいのか、それとも既存顧客の使用量や金額などを増やしたいのか。これが目的である。(70ページ)
要は、「何のために?」をしつこく問うことが肝ということでしょう。
この「何のために?」を怠ると、サンプリング自体が目的になりかねません。
サンプリング自体が目的になったまま、マーケティング活動が設計され、実行されてしまっても、「サンプリングして終わり」です。
強いとは資源をたくさん持っていること
戦略を語る上で、目的と並んでもう一つ大事な要素が「資源」です。
筆者は、「強さ」について、「強いとは資源をたくさん持っていること」と述べています。具体的には、次のように語っています。
こう話すと「桶狭間の戦いで、織田信長は3000の兵で3万人とも4万人ともいわれる(※諸説あり)大群を率いた今川義元を打ち破ったではないか」と反論されることがある。
確かに。全体を見ればその通りであるけれど、討ち取られた今川義元の周囲だけ見れば、鋭気に満ちた織田軍3000人と、慣れない土地で疲れている旗本3000人の戦闘だ(※諸説あり)。頭数は同じでも、地の利、霧雨に紛れた奇襲の効果、疲労の度合いなどを考えれば、織田軍は資源的に大いに優勢であったことは想像に難くない。(72ページ)
この説明を見てみると、確かに「織田軍の方が、資源をたくさん持っていたから強かった」と捉えることもできます。
そうすると自ずと、次の論点は「どうすれば、資源を増やせるのか?」です。
筆者は次の2点の方法を提示しています。
-
活用できていない資源を見つけて活性化する
例)ある程度結果が出せなくてもしょうがないと思っていた「新人の営業部隊」に目をつける。「自社の弱み」を資源として捉え直す。 -
基礎的な資源を消費して新たな資源を入手する
例)人材トレーニングや設備投資を通して、資源を増強する。
…と、だいぶ簡略化して書きましたが、ここで一番お伝えしたいメッセージが「マーケティングの前提は、戦略」ということです。
この前提を知っておいた方が、マーケティングやブランドを学ぶ際の効果が最大化されそうです。
個人的には、「パーセプションフロー・モデル」も非常に興味深く、実践に即活用できそうな学びでした。
このモデルについては、下記のブログでもわかりやすく説明されていますので、是非ご覧ください。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。
マーケティングの本質は「人間に対する深い洞察」
至極当然のことだと思われる方も少なくないでしょう。
しかし、言うは易く行うは難しです。
「デジタルマーケティング」
「オムニチャネル」
「マーケティングオートメーション」
「ビッグデータ」
…このような、頻出ワードを目にすると、どうしても「取り残されないように、自分/自社も早く取り入れないと」と考えがちです。
事実、私の書棚にも、デジタルマーケティングやマーケティングオートメーションの書籍から先に並んでいきました。
しかし、いくらこうした先端技術を学んでも、その前提となる「人間理解」が無ければ、宝の持ち腐れです。
なぜならば、マーケティングとは「人を動かす」わけですから。
では、「人間に対する深い洞察」を得るには、これから何を心がけるべきか?
私は次の2点をテーマにしてみます。
- 哲学、心理学のインプット
- 人との対話の場を意図的に作る
おそらく、1は好きなので、問題ないでしょう。
問題は2です。極度の人見知りですから、どうしてものか…
ゴールデンウィークを使って、ゆっくり考えてみます。
明日から取れるアクション1つ
- 上述の問題のヒントを得るべく、「内向的」というキーワードの本を読んでみる