この本で解ける疑問は?
このビジネス書自体がQ&A式になっていますので、
42個書かれている問いから、5個ほど抜粋。
- 大企業とスタートアップで迷っています
- いまから起業すべきか、一年修行すべきか?
- 「キャリア計画がない」私はダメ人間ですか?
- 納期に追われ寝袋で寝る日々。仕事を続けるべきですか?
- 大企業のジョブローテーションに意味はあるのか?
(ixページ)
『好きなようにしてください』って?
新卒入社3年目のある日の、会社でのキャリア面談。
「ちゃんと長期的なキャリアプランを考えたほうがよい。君のように、"その時々で、面白そうだと思ったことにチャレンジしたい"のような、行き当たりばったりな考えはダメだよ」と言われて、何となくムシャクシャ。
そんな帰り道で立ち寄った書店で、私の目に飛び込んできたのが、この本でした。
この本の背骨となる主張は、一貫して「好きなようにしてください」。
読んで、先述のムシャクシャした気持ちもクリアになったので、紹介させていただきます。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書は、NewsPicksで連載されていた「楠木教授のキャリア相談」の記事がまとめられて出来上がっています。
そんな本書の「はじめに」は次のような記述で締められていました。
しょせん人間はなるようにしかなりません。第四コーナーを回りきってホームストレートに入った時、そこにどのようなゴールが見えるのか、いまははっきりとはわかりませんが、これからもせいぜい好きなようにしていきたいと思います。
読者の皆さんにおかれましては、本書がご自身の「好きなようにする」を再認識したり、再定義するきっかけになれば幸いです。好きなようにするその先に、充実したキャリアが拓けますように。(viiページ)
つまり、「好きなようにする思考を身につけ、キャリアを充実させること」が本書の目的といえます。
-What-なにをすべきか?
本書を通して「好きなようにする思考」を身につけるためにも、42個のQ&Aの応答の中にある「共通項」に着目する必要があります。
その「共通項」として、筆者は「仕事の原則(僕のバージョン)」という題名で、154~166ページの20ページ以上にわたって持論を展開しています。
ただし、この「仕事の原則」はあくまで、大学教授である筆者にとっての原則です。
その大学教授の仕事である「研究」とは次の要素で構成されているそうです。
①ふわふわしている:世の中の超間接業務。虚業中の虚業。
②人間の本性の発露:「知る」「考える」「それを人に伝える」は人間の本性・自然にやりたくなる活動。
(中略)
③以上の自然な帰結として、慢性的に供給が需要を大きく上回る:人間の本性だから研究を仕事にしたいという人は少なからず出てくる。しかし、そこは社会の超間接業務、虚業中の虚業であるだけに実需が薄い。(156ページ)
以上を前提とした「仕事の原則」を示したものが図1です。
掻い摘んで説明しますと、次の通りです。
-
「仕事と趣味は違う」の原則
客のためにやるのが「仕事」、自分のためにやるのが「趣味」 -
「自己評価はなしよ」の原則
仕事はアウトプットが全てで、その「成果」は客が評価する -
「客を選ぶのはこっち」の原則
対象とするターゲットは、こちら(供給者側)で選択できる -
「誰も頼んでないんだよ」の原則
仕事は本当のところは誰にも頼まれていないし、だれにも強制されていない -
「向き不向き」の原則
やり続けてもどうしてもアウトプットができないときもある。それは、しょうがない。才能の問題だから -
「次行ってみよう(ただし、近場で)」の原則
向いていないことがわかったら、さっさと別のことをやるべき -
「自分に残るのは過程」の原則
仕事のやりがいは、自分の納得を追及する「過程」にある -
「仕事の量と質」の原則
客側で記録に残るのは「仕事の量」で、客の記憶に残るのは「仕事の質」 -
「誘因と動因の区別」の原則
「誘因」は仕事の「量」を左右し、「動因」は仕事の「質」を左右する -
「無努力主義」の原則
脱力を知る、全力で脱力する
筆者は特に、10.「無努力主義」の原則を大事にされているそうです。
この原則を詳しく見てみます。
-How-どのようにすべきか?
10.「無努力主義」の原則について、図2をご覧ください。
筆者が述べる「無努力主義」は、別に「怠けろ」と言っているわけではありません。
仕事をする中では、必ず「必要とされるアウトプット」と「自分の現状」、そしてその両者の間に「ギャップ」が存在します。
これを前提としたときに、
- 「持続性に欠ける」状態
- 「持続的で理想的な」状態
…の2種類があると、筆者は述べています。
第一に、図2の左下は「持続性に欠ける」状態を示しています。
これは、先ほどの「ギャップ」を、なんとか努力して埋めようとしている状態です。
このときの「努力」は「努力していると、自覚している状態」です。
こういう状態は、心身ともに疲弊し、仕事の質も量も長続きしません。
第二に、図2の右下は「持続的で理想的な」状態を示しています。
これは、先ほどの「ギャップ」を埋めるのに、時間を忘れて夢中になっている状態です。
他人から見たら「努力」しているように映るのですが、当の本人は「努力している自覚がない状態」です。
ゲームに夢中になるのと同様に、こういう状態は長続きします。
まさに「好きこそ物の上手なれ」です。
以上の原則を核として、公私の様々な悩みを、スッキリした論調で切っていく様が、クセになる本です。
400ページありますが、漫画や小説みたいに、時間を忘れて、すぐに読み終えることができます。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。
ブログも研究の類?
先述のように、「研究」とは
①ふわふわしたもの
②人間の本性の発露
③需要<<供給
…といった特徴を孕んでいます。
おや?これ、ブログにも当てはまりませんか?
-
①については、ブログのほとんどは、虚業中の虚業。
別に、ブログが無くても、物は買えるし、食べれるし、世の会社の経営が揺らぐこともない。
ブログがあろうと無かろうと、個人も企業も政府も、ほとんど困りません。 -
②についても、ブログはど真ん中に当てはまりますね。
ブログを書くことは、「知る」「考える」「それを人に伝える」という人間の性ど真ん中を行く営みです。
ここに、反論の余地は無いでしょう。
(ただのお金儲けを目的としたブログは、その限りではありませんが) -
③についても、ブログは当てはまります。
事実、ほとんどのブログは、それ単体で生計を立てることはできません。
なぜ、このようなことが起きるのか?
それは、ブログにはあまり需要がないからです。
本当に需要があるものであれば、お金を出してでも手に入れようとする人が多数いるはずです。
以上の理由から、研究とブログは、3つの共通項を持っています。
…ということは?
ブログにも、本書にある「仕事の原則」が当てはまる
つまり、こういうことだと思います。
先述の仕事の原則10個が、そのまま、ブログにも当てはまる、ということです。
例えば、「無努力主義」の原則は、まさにブログ運営にも言えることです。
ブログの内容を考え、書き続ける…この繰り返しに「時間を忘れて無心になれる」ようであれば、持続性があります。
反対に、ブログを書くことを「私は毎日努力している」と自覚している人にとっては、1か月、半年、1年とブログを継続することが苦かもしれません。
「苦」と思う努力に、持続性はありません。
本書を通して、ブログを書く上での原則を知ることができたのは、大きな収穫でした。
明日から取れるアクション1つ
- 本書の「おわりに」に書いてある、「楠木先生はどうやって、文章がうまくなったのですか」の Write like talking を実践してみる