この本で解ける疑問は?
- 問題解決関係の本がたくさんあるけど、結局どう組み合わせればいいの?
- そもそも問題解決ってなんだっけ?
- 「広く」「深く」「速く」考えるために必要なことってなに?
『問題解決の全体観 上下巻』って?
個人的には、このビジネス書こそが「問題解決本の決定版」だと思います。
なぜならば、問題解決に必要なことを「体系的に」「ユニークな表現で」「わかりやすく」書いてあるからです。
何より、本書のタイトル通り、問題解決に必要な要素の「全体観」を知れるので、「現時点で、自分に足りている部分、不足している部分はどこか」がすぐわかるようになります。
そんな本を掻い摘んでご紹介します。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「はじめに」の内容を要約すると、次のようなことが述べられています。
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我々を取り巻く問題は時代の変化とともに新しく、難しくなっている。
問題自体が難しくなっており、相対的に個人の知的戦闘力が低下している。 -
こうした問題解決に関して、様々な書籍やノウハウが存在するが、それらはいずれも問題解決に必要な技の1つに過ぎない。
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上手い問題解決のためには、これら、あるいはこれら以外の新しい技を組み合わせることが必要。
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そのためには、問題解決における「技の全体像」と「プロセスと技の絡み合い」を捉えること、つまり問題解決の全体観を掴むことが重要。
そして、本書を通して、筆者は次のような想いを述べています。
本書では、個人の戦闘力強化、すなわち「問題解決力強化のための全体観と方法論」を説明するものである。
一人でも多くの方のお役に立てれば幸いである。
また、より多くの方々や組織に知的生産性で社会に貢献いただけるように願っている。(4ページ)
つまり、知的生産性で社会に貢献すべく、戦闘力として「問題解決の全体観」を取得してもらうことが本書の目的です。
-What-なにをすべきか?
問題解決の全体観の説明に入る前に、まずは本書でいう「問題解決とは?」の部分に触れます。
本書では次の5タイプの問題解決について説明されています。
- Trouble対応型
突発的に発生し、現状に大きな不具合を与えている問題に対応すること(15ページ)- Problem解決型
Troubleほど緊急性はないものの、明らかに理想的な姿と現状にギャップが発生している場合(16ページ)- Poteintial Risk解決型
将来、TroubleやProblemを引き起こしそうな潜在的なリスク要因に対して、事前に処置を施し、その発生を未然に防ぐ問題解決(17ページ)- Improvement Opportunity追求型
現状に甘んじず、よりベターな状況を目指して行う問題解決(18ページ)- Theme回答型
家族や友人、会社の上司や顧客などから投げかけられた心掛かりな命題(テーマ)に対応する問題解決(19ページ)
このような問題を解決していくにあたり、問題解決の「型」「道具」「思考様式」「試合運び」を全体観を持ってマスターすべし、と筆者は述べています。
これらの全体観について、次の章立てに沿って説明されています。
Part Ⅰ:問題解決は、確実性のある「型」に沿って進める
Part Ⅱ:問題解決は、威力のある「道具」を使って進める
Part Ⅲ:問題解決は、それに適した「思考様式」で進める
Part Ⅳ:問題解決は、うまい「試合運び」で進める
それぞれ、Part ⅠとPart Ⅱが上巻、Part ⅢとPart Ⅳが下巻で扱われています。
この中でも、基本の「き」の字に該当しそうな、問題解決の「型」を見てみようと思います。
-How-どのようにすべきか?
「空・雨・傘」
問題解決の「型」として、本書では初級者用に「空・雨・傘」という考え方が述べられています。
例えば、
- 空=状況:空を見上げると、西の空が暗く曇っている
- 雨=解釈:どうやら雨が降ってきそうだ
- 傘=行動:傘を持って出かけよう
…といった一連の思考の流れを指します。
先述した5タイプの問題の解決も、基本的にはこの「空・雨・傘」という「型」で対応できるというのです。
ただ、読者の中には、「雨=解釈は何通りも存在するが、問題ないのか?」と疑問を持たれる方もいるでしょう。
しかし、大事なのは、多面的に漏れなく「あらゆる可能性を考えること」です。
なので、「考えられる雨=解釈を何パターンも想定する力」が重要になってきます。
「それ」と「それ以外」
この「何パターンも想定するコツ」として、筆者は「それ」と「それ以外」という考え方を紹介しています。
イメージを掴んでもらうために、図1をご覧ください。
図1は、「模擬試験の偏差値が悪い」という「1つの空=事実」に対して、「複数の雨=解釈」が書かれています。
「複数の雨=解釈」を考えるためには、「それ」と「それ以外」という考え方を使っていきます。
- まず、「慎重モード」と「それ以外」に分けて。
- 次に、「それ以外」を「楽観モード」と「諦観モード」に分ける。
…みたいに、「それ」と「それ以外」に分けながら、思考を進めて行くのです。
そうして「複数の雨=解釈」を考えることができれば、「複数の傘=行動」を幅広く検討することができるようになります。
よくコンサルティング業界では「MECEに漏れなくダブりなく分けろ」と言われますが、その作業スピードを劇的に速めてくれるのが、この「それ」と「それ以外」という考え方です。
今の「空・雨・傘」は、あくまで問題解決の「型」の【初級者】向けです。
【上級者】向けには「解読・創案・評価・選択」という「型」も紹介されていますので、興味のある方は是非読んでみてください。
この他にも、問題解決に活用できる「道具」や、心の持ちようといった「思考様式」、実際にプロジェクトとして進める際の「試合運び」についても、これでもか!というくらいわかりやすく書かれています。
絶版のうわさもあるので、在庫が尽きる前に、また価格が吊り上がる前に、手にしたい本の一冊です。
学び
本書を通じて次の2つの学びを得ることができました。
- 報連相も「空・雨・傘」を意識
- 「それ」と「それ以外」のコツ
1. 報連相も「空・雨・傘」を意識
よく報連相で、
- 「~がありました」と空=事実だけ伝える人
- 「~だと思うんですよね」と雨=解釈だけ伝える人
- 「まずい、早く~しないと」と傘=行動だけ伝える人
…を見かけます。
かくいう私も、空=事実だけを報告して、上司に叱られた経験がありますが…
この「空・雨・傘」ですが、報連相する方も、される方も、同じ意識を持っておく必要があると思います。
-
まず、報連相する方。
やはり、「空・雨・傘」のストーリーで報連相した方が、された方も「何が起きたのか」「なぜ起きたのか」「どうすべきか」がわかり、必要な判断を素早く下すことができます。
報連相の目的は、「相手に何らかの意思決定をしてもらうこと」なので、その意思決定をサポートするためにも「空・雨・傘」で報告することが大事だと考えます。 -
次に、報連相される方。
部下が報連相してきたときに、「空・雨・傘」が抜け落ちていないかを確認する必要があると思います。
「傘」が抜けていれば、「どうすべきだと思う?」と聞いてあげたり、
「雨」が抜けていれば、「なんでそう思う?」と聞いてあげたり、
報連相される方も、自分が意思決定するために必要な情報を拾いにいく必要があるでしょう。
2. 「それ」と「それ以外」のコツ
「それ」と「それ以外」の考え方をご紹介してきました。
この考え方を加速させるためのコツは「自分以外の視点で考えるクセをつけること」だと思います。
例えば、
- 目の前の顧客にとっては?
- 目の前の顧客の上司にとっては?
- 自社のA部門にとっては?
- お役所の〇〇さんにとっては?
…と、「自分が思ったこと」と「他人が思いそうなこと」を分けて考える習慣を持っておくと、「それ」と「それ以外」をスムーズに考えられるようになると思います。
明日から取れるアクション1つ
- 上級者向け「解読・創案・評価・選択」を実業務で試してみる
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