「論理思考」「デザイン思考」「アート思考」「水平思考」「プログラミング思考」
こういった「〇〇思考」がより一層乱立してきた気がします。
しかも、「〇〇思考」同士がマウンティングし合っている。
「論理思考は汎用品しか生まないから差別化できない。これからはデザイン思考だ」
「いや、課題起点のデザイン思考よりも、これからは自分起点のアート思考だよ」
(ところで、水平思考はどこいった?)
こんな具合です。
しかし、ここで一度、原点に立ち返ってみましょう。
論理やらアートやらデザインやらはいったん置いておいて、
思考とは平たくいうと「問い×答え×根拠をセットで考えること」ではないでしょうか。
- 問いを捻り出すときに、アート思考やらリベラルアーツが登場して
- 答えを仮決めするときに、仮説思考が登場して、
- 根拠となるWhyやHowを集めるために、分析思考なりデザイン思考なり水平思考が登場する
- そして全体の論理構造を整えるために、論理思考が登場する
…とこんな感じで、〇〇思考たちはマウンティングし合っている暇なんてなくて、互いを補い合う必要があります。
vsで対立させるのではなく、withで組み合わせる方向で考える。
このマインドが大事です。
ということで今回は、「思考=問い×答え×根拠をセットで考える」にあたって、
どういう組み合わせの本を読めばよいか、
「〇〇思考」に関連する本たちをまとめてみました。
図にすると、こんな感じです。
思考の全体像を知りたい場合は『ロジカル・シンキング』
先ほど、思考とは「問い×答え×根拠をセットで考えること」だと述べました。
このことを体系的に、かつ、わかりやすく教えてくれる本が『ロジカル・シンキング』です。
この本は、「問いを立てて、その問いに対する答えを述べ、答えの論拠を整理する」といった基本の"き"の字を徹底してレクチャーしてくれます。
巷に出回っている「ロジカル・シンキング」の本も、よくよく参考図書のページを見てみると、この本が原典として書かれていることが多いです。
今でこそ、読んでみると「こんなの当たり前でしょ」と思うことも書かれていますが、
2001年当時にこれだけ体系的にロジカル・シンキングについて整理できている本がどれだけあったでしょうか。
何度読んでも新しい気づきがある、そんな味わい深さを持っている本です。オススメです。
問いを立てる力を鍛えてくれる本
次に、思考のスタートである「問い」を立てるにあたって、オススメの本を2冊紹介します。
問いの見極め方を教えてくれる『イシューからはじめよ』
まず、良い問いとそうでない問いの区別を教えてくれるのが『イシューからはじめよ』。
本書のタイトルにある「イシュー」とは
- 2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
- 根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
を意味しています。
そして、我々が普段向き合っている問いは「イシューではない、些末なもの」だという現実を突き付けてくる、厳しくも実用的な本なんですね。
そんな本書の魅力的なポイントは「イシューとそうでないものの区別の仕方」と「イシューの作り上げ方」を教えてくれる点。
本書以上に、解くべき問い=イシューの精度にこだわっている本は見たことがありません。
「問いの作り方・見極め方」を知りたい方には、全力でオススメしたい一冊です。
問いを立てるための材料を提供してくれる『読書大全』
ただ、解くべき問いを見つけ出すためには、その材料が必要となりますよね。
具体的には『自由になるための技術 リベラルアーツ』でも指摘されていたように、「誰もが見逃しがちな、疑うべき常識」を見つけるための材料が必要です。
その材料が何かというと、教養でありリベラルアーツです。
そして、「どんな教養を身につければよいか」を一冊でまとめて教えてくれるのが『読書大全』。
本書のすごいところは、200冊もの教養本を「一本のストーリー」として繋げて紹介している点。
そして読み進めていくうちに、「宗教」「哲学」「科学」「経済」「歴史」の枠組みが、頭の中に整っていく。
これらの教養を知っておくと何が嬉しいかというと、
「教養として、大昔から常識とされていた概念」と
「実は最近になって生まれた"常識もどき"の概念」が見極められるようになるんです。
こういったことが、「よい問い、よいイシュー」を立てるための大前提となります。
『読書大全』は、よい問いを立てる材料集めの旅にうってつけの本です。
答えを醸成させるための『アイデアのつくり方』
ここまで「よい問いを立てるためのオススメ本」を紹介してきましたが、
次は「よい答え」について考えていく必要があります。
ただ、この「答え作り」もまた、一筋縄ではいかず。
問いと根拠の間を何度も往復しながら、答えを作り直さなくていけません。
そういったモヤモヤに決着をつけてくれる本が『アイデアのつくり方』です。
この本を読んでいて、個人的に重要だと思った示唆は
- よい答え、よいアイデアは、一朝一夕では生まれない
- 情報を大量にインプットして、考え尽くすこと
- そして考え尽くした後に、「いったん寝かせる」。ここが一番大事
この中でも、特に3は一番の収穫でした。
「無意識の力を意識的に使う」といいますか。
たしかに、学生時代にテスト勉強をするときも、一度たくさんつめ込んだあとは、とりあえず熟睡してみる。
すると、翌朝には、頭のなかで知識が整理されている。
…なんてこともありました。
もしくは、上司からダメ出しされている瞬間や、家に帰った直後なんかは、
「うーん、いいアイデアが思いつかない」と唸るんですが(笑)
翌朝シャワーを浴びていると「あ、ひらめいた」と、急に妙案が浮かぶこともあります。
こういった「無意識に考えさせるプロセス」を意図的に作ることを示唆してくれるのが『アイデアのつくり方』です。
たった50ページしかない本ですが、これほど「学びの密度」が高い本は見たことがありません。
WhyとHowを考え抜くための教科書『進化思考』
最後に、自分が作り出した答えを補強するために
- なぜその答えが妥当なのか…Why
- どうすればその答えが実現できるのか…How
を導き出す必要があります。
そのための方法論を体系的に教えてくれるのが『進化思考』です。
ところで、「進化思考」とは何なのか?
本書では次のように説明されています。
創造は、進化と同じく変異と適応の繰り返しによって生まれる。
ここまでの発見をまとめると、進化思考の本質はこの一文に集約される。つまり進化思考は、生物進化のように二つの思考プロセスを繰り返すことで、本来誰のなかにも眠っている創造性を発揮する思考法だ。自然のように考えるための新しい哲学とも言えるだろう。そして二つの思考はこのように表現できる。
適応の思考:適応状況を理解する生物学的なリサーチ手法
変異の思考:偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法
『進化思考』p54より
つまり、突拍子もないHowを思いつくための手法が「変異」。
その突拍子もないHowを周りに納得させるために、Whyを考えぬく手法が「適応」だと。
まず驚きなのが、創造やイノベーションを「進化論」で説明し切っている点です。
読めば読むほど、「生物の進化」と「イノベーションが生まれるプロセス」が全く同じだと思い知らされます。
ぶっとんだアイデアが突然変異で生まれ、それが世の中に適応できるように大義名分を与える。
文字にすると、本書が言っていることはこの一文に集約されますが…
この一文を実現させるための方法論がびっしりと詰まった「思考の辞書」のような存在です。
一家に一冊置いておくことをオススメします。