世の中には、次の3タイプの人材がいる。
- 何も言わなくても勝手に育つタイプ
- 勝手には育たないが、教えれば育つタイプ
- 教えても何をしても育たないタイプ
そして、これら3タイプを他人の力で変えることはできない。
だから、いかに1のタイプを採用するかがカギである。
お恥ずかしながら、最近までの私は、そんな勘違いをしていました。
しかし、そんな勘違いを正してくれる本と出会えました。
サイバーエージェントの常務執行役員CHOである曽山哲人氏が書かれた『若手育成の教科書』です。
『若手育成の教科書』とは?
まずは、本書のことを一言でご紹介すると、
「若手が勝手に育って活躍する仕組みのつくりかた」が詰まった本です。
こう書くと「なーんだ、じゃあ上司とか人事向けの本か」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
・・・ちょっと待ってください。
実は、この本を強くオススメしたいのは、2人いらっしゃいます。
1人目は、育成責任を持っている方。
つまりは、若手を部下に持つ上司や、人事部門の方々ですね。
この本を読むと、
- 最近の若者はなぜ「やる気がないように」見えるのか?
- どうすれば、若者がやる気を出して、勝手に育ってくれるか?
これらを知ることができれば、若手の面倒を見るコストが最小化されるので、オススメです。
そして2人目は、今の職場で悩んでいる若い人たちですね。
私もまだかろうじて20代ですので、若い人たちの悩みは何となくわかっているつもりです。
例えば、「入社した当初のやる気が失われつつある」と思っている方は、一度この本を読んでみてください。
なぜ自分のやる気が失われているのか、どうすれば取り戻せるのか、そのヒントが必ず手に入ります。
あるいは、部署異動や転職を考えている方にもオススメですね。
「どんな異動先、転職先を選べばいいか?」「自分が気持ちよく成長できる職場は、どんな職場か?」を考えるときに、大いに役立ちます。
本から得られた学び
では、 具体的に『若手育成の教科書』から得られた学びは何だったのか?
1枚にまとめてみました。
若手が勝手に育つ「自走サイクル」
まず一番学びが大きかったのが、この「自走サイクル」。
本書によると、このサイクルは次の4つの要素で成り立っています。
1.抜擢:期待をかけられることで、「自走スイッチ」がONになる
2.決断:覚悟を決める。意思決定によって、自らの「決断経験」を増やしていく
3.失敗:成長において欠かせないもの。必要不可欠なプロセスと理解する
4.学習:失敗を次の経験に活かすための内省。次のステージのための準備をする
『若手育成の教科書』p31
そして、このサイクルにおける基本ルールが「言わせて、やらせる」です。
若手であれ誰であれ、人は「自分で言ったこと、宣言したこと」には本気になれる。
そんな原理原則に則っています。
たしかに、親に言われてやる勉強よりも、自分の意思でやる勉強のほうが、モチベーションが持続しますよね。
しかし、実際に若手に「やりたいです、やります」と言わせるのは至難の業。
放置してても、若者が「これやりたいです」と提案を持ってきてくれるわけではありません。
「これやりたいです」を引き出すためには、「抜擢」について知る必要があります。
抜擢とは「期待をかける」こと
本書では、シンプルに「抜擢とは、期待をかけること」と定義されていました。
具体的には、次の手順で「抜擢」を行います。
- 上司から、期待をかける
- 部下から、「やりたい」と宣言してもらう
- 上司は、部下の「やりたい」を承認する
ここで個人的に重要だと感じたのは、「抜擢は、部下に期待をかけるところからスタートする」ということです。
言い換えると、期待の意思を伝えない限り、部下から提案が上がってこない。
じゃあ、ただ「期待してるよ」と言えばよいか、というと、そういうわけでもありません。
まずは、仕事の「意味づけ」を丁寧に
まずは、部下に対して「仕事の意味付け」を丁寧に説明する必要があります。
「この仕事の目的は何なのか?」
「会社全体やチーム全体のミッションのなかで、この仕事はどういう位置づけなのか?」
こういった点を納得してもらうこと。
それが、「仕事の意味付け」なんだと思います。
特に注意が必要なのが、「目的」の表現。
以前、次の記事でも述べましたが、「目的が"目的もどき"になっていないか」には気を付けておきましょう。
「目的もどき」を一瞬で見抜く術を、2冊の神本に教えてもらった。
例えば「○○の効率化」「○○の見える化」などの表現だと、真の目的感は伝わりません。
もう一歩踏み込んで、「いったい何のための効率化なのか、見える化なのか」まで伝えて、はじめて意味付けが可能になります。
次に、「抜擢セリフ」を磨きこんで伝える
仕事の意味付けができた後は、「この仕事を任せたいけど、どうかな?」と伝えるフェーズに入ります。
このときのセリフが非常に重要なんだとか。
なぜならば、「抜擢をしてもらうときに、上司から何と言われたか」は、部下の記憶に強く残るから。
確かに、以前コンサルティング会社で、すごく忙しいプロジェクトに突っ込まれたときにかけられた言葉はよく覚えています(笑)
「今回お願いしたい役割は、1つ上の職階に求めることかもしれない。でも、あなたの実力やスキルであれば大丈夫。何より、次の職階に上がる何よりの根拠になる」
・・・たしか、こんなことを言われた気がします。
単純な私は、その言葉にのせられて、何とかプロジェクトを乗り切ることができました。
かなり辛いプロジェクトでしたが、今思えば、抜擢していただいて本当に良かったです。
何か大変なことが起きても、「あのプロジェクトよりはマシだ」と思えるようになったからです(笑)
抜擢の前提となる「信頼残高」を積んでおく
では、仕事の意味付けを丁寧に行い、抜擢のセリフを磨き上げておけばOKかというと、実はそれだけじゃ足りません。
前提となる「信頼残高」が必要です。
あんまり話したこともない人から「期待しているよ」なんて言われても、嬉しくもなんともありませんよね。
「この人が言っていることは、信用できる」と思ってもらえる関係を築く。
実はそれが、抜擢への第一歩だと学びました。
・・・と、「抜擢」1つとっても、緻密な準備や気遣いが求められます。
そういった深いレベルで「抜擢」「決断」「失敗」「学習」1つひとつに求められる技術を、体系的かつ実践的に教えてくれる。
それが『若手育成の教科書』です。
年末に、素敵な本と出会えました。