「対面で頻繁に会いに行って、飲みにケーションを取りながら、信頼関係を築いていく」
コロナ前は、この営業スタイルで上位10%の成績を取っていたけど、コロナ禍になってからは全く通用しなくなった。
関係を構築しているお客さまには売れるんだけど、そうでないお客さまには全く売れない。
気づいたら、営業成績が上位10%から真ん中くらいに落ちてしまった。
だから、思い切って、商談資料を綿密に設計するスタイルに変更することにした。
スタイルを変えたばかりのときは苦戦して、「やっぱり前のやり方に戻そうかな」と何度も後悔するハメに。
でも、半年ぐらいたつと、新しい営業方法にも慣れてきて、以前よりもちょっとずつ成績もよくなってきた。
・・・こんな話を、ついこの前、友人から聞きました。
そのときは「コロナ禍の営業は大変なんだなー」くらいにしか思わなかったのですが(笑)
ある本を読んでから、友人のエピソードがいかにすごいかを思い知らされました。
彼は「アンラーニングの達人」だったのだな、と。
今回は『仕事のアンラーニング』という本をご紹介します。
『仕事のアンラーニング』とは?
本書は、北海道大学大学院の松尾睦教授が書かれた本です。
著者は長年「経験学習」など、「学び」をテーマに研究をされている方です。
もしかすると、人によっては「学術研究をしている人が書いた本だから、難しい内容なのでは?ビジネスパーソンが読んで意味あるの?」と思うかもしれません。(失礼ながら、私はそう思っていました・・・)
そう思っている人に、まず伝えておきたいのですが、
「この本、めちゃくちゃわかりやすいですし、何より親切です」
何が親切なのか。
本書は以下の構成になっています。
- 第1部:アンラーニングの概観
- 第1章:アンラーニングとは何か
- 第2章:アンラーニングの全体像
- 第2部:アンラーニングをうながす個人要因
- 第3章:アンラーニングをうながす学習志向と内省
- 第4章:アンラーニングをうながす自己変革スキル
- 第3部:アンラーニングをうながず状況要因
- 第5章:上司行動とアンラーニング
- 第6章:昇進とアンラーニング
- 終章:仕事のアンラーニング・プロセス
そして、「はじめに」のところで、次のようにガイドしてくれています。
「実務家の人は、第1章・第2章・終章を読めばよい。そのあとは、気になった章だけ読めばOK」と。
実際に1章や2章を読んでみると、難しい単語や研究データは一切登場せず、図解も用いながらシンプルな内容が展開されています。
1章と2章を読んだあとに、「これ、どういう根拠なんだろう?どういうデータや事例があるの?」と疑問に思った点があれば、2章~6章のなかで回収していく。
そんな読み方が可能な仕立てになっています。
非常に親切ですよね。
本書から得た学び
では、本書から得た学びを振り返っておきます。
ざっとまとめたものを、以下に貼っておきます。
本書のp138の図をベースに、私なりの気づきを交えて加工してみました。
アンラーニングとは何か?
そもそも、アンラーニングとは何か?
本書では様々な定義が紹介されていますが、中でも一番気に入っている表現が・・・
「知の断捨離」
要は、「通用しなくなった知識・スキルを捨て、新しい知識・スキルを取り入れる」ということです。
それを「断捨離」と表現しているのが、何ともシンプルでわかりやすい。
そんなアンラーニングにも、プロセスがあるそうです。
- アンラーニングのきっかけとなる要因があらわれる
- 「他部署への異動、昇進、転職」による影響が7割
- 「自分の上司などの行動」による影響が2割
- 「研修や書籍」による影響が1割
- 自分の業務や、その裏側にある考え方をリフレクション(内省)する
- 仕事をするうえでの信念やルーティン(やり方)をアンラーニングする
- 成果に反映される
そして、上記のプロセスを回すためには「学習志向や自己変革スキル」を養っておかなくてはなりません。
一方、アンラーニングの妨げになる要因にも注意が必要だそうです。
・・・以上が、アンラーニングの全体像ですね。
「アンラーニングのきっかけ」「リフレクション(内省)」「アンラーニングによって得られる成果」「アンラーニングの妨げとなるもの」「学習志向と自己変革スキル」
気になるキーワードがたくさんありますね。
中でも、私は「リフレクション(内省)」が気になったので、もう少し深堀りしてみます。
アンラーニングの鍵となるのは、「批判的内省」
本書において、個人的に一番大きな学びだったものが、「アンラーニングの鍵」についてです。
アンラーニングが上手くいくかを左右するのは、実は「批判的内省」である。
このことは、具体的な研究結果も交えて論じられていました。
ちなみに、批判的内省とは、「自分の仕事の進め方の前提となっている考え方や価値観を、深く振り返ること」です。
しかし一方で、「どうすれば批判的内省が可能になるのか?」は、まだ判明しておらず、今後の研究課題であると記されていました。
確かに、自分にとっての「当たり前」となっている考え方を振り返るのは、容易なことではありません。
というか、そんなことできるの?・・・とすら思いますよね(笑)
ちなみに、私が知る中で、「批判的内省のやり方」と近しいものが書かれた本があります。
それは、以前ご紹介した『リフレクション』という本です。
※書評記事が気になる方は、以下の記事をご覧ください。
この本で述べられていた「リフレクションの基本型」なるものがあります。
- 「意見」「経験」「感情」「価値観」の順番で振り返ること。これがリフレクションの基本である。具体的には、以下の4つの問いかけについて考えるとよい。
- ①あなたの意見は何ですか?
- ②その背景には、どのような経験がありますか?
- ③その経験には、どのような感情が紐づいていますか?
- ④そこから見える、あなたが大切にしている価値観は何ですか?
この基本型にそって、振り返りをしていくと、いわゆる「批判的内省」に近い気づきが得られるんじゃないでしょうか。
もちろん、完全に「批判的内省」についての謎が解けるわけではありませんが、、、
このように、複数の本の学びを組み合わせてみると、新しい発見があることもあります。
これが、いろいろな本を読んでみることの、1つの面白さだなーと、改めて痛感しました。
最後は少し話が逸れてしまいましたが、今回は『仕事のアンラーニング』をご紹介しました。