『仕事の教科書』とは?
経営者としてビジネスの第一線で活躍しながら、かたや『転職の思考法』『天才を殺す凡人』などのベストセラーを次々と世に出す作家としての一面も持つ、北野唯我さん。
その北野さんの仕事術の全貌が明かされた本がついに発売されました。
『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』です。
本書を読み終えたときの最初の感想は・・・「この本、誰にも教えたくないな」でした。
それくらい「こんな方法論まで種を明かしていいの?」と思える仕事術がたくさん記されていました。
ただ、本書の「おわりに」を読むと、「誰にも教えたくない」と思っていた自分がちっぽけに思えてきました。
「なぜ、自分の仕事術を一切出し惜しみすることなく公開したのか?」
(中略)
2つめの答えは、この本に限ったことで、それは「自分の仕事術をすべて公開したところで、読者に負けない自信があるから」です。急に生意気なことを言ってすみません。
この本で公開した仕事術は、私がこの10年かけて、膨大な時間とお金を使って獲得してきたものです。だから、この本に書かれたことを、もしあなたがすべて効率的に実践すれば、少なくともこれらの仕事術を獲得した時点の私を、追い越すことはむずかしくないと思います。
ただ、それはもうすでに過去の話です。私は、いまでも必死に勉強して、さまざまな人に出会い、いろんな挑戦をしています。つまり、現在進行形で、進化し続けています。
『仕事の教科書』p154
こう言い切れる著者の姿はかっこいいですね。心からそう思います。
なので、私も「この本をたくさんの人に手に取って欲しい」という思いで、惜しみなく本書の魅力をお伝えできればと思います。
この本から得られた学び
本書のなかで特に印象的だった学びを言語化すると、以下のように整理できます。
仕事の速さは「着手するタイミングがどれだけ早いか」で決まる
最初の学びは、仕事の速さについてです。
これまで私は、仕事を速くするためには、「なるべく最短距離で仕事をする」か「処理速度を格段に上げる」か、2通りで考えていました。
まず、「なるべく最短距離で仕事をする」について。
これは、目的から逆算して最短の段取りを組む、という意味です。
ただ、この方法は、経験値に依存する部分もあるので、若手や転職したてのときなんかに実践するのは、なかなか難しい。
次に、「処理速度を格段に上げる」について。
これは、ショートカットキーや便利な関数・ツールをとにかく習得しまくる、というアプローチです。
私はこのアプローチで、仕事が速くなった気でいました。
で、本題はここから。
今回の『仕事の教科書』が教えてくれたのは、「仕事に着手するタイミングを、とにかく早めなさい」ということ。
そのためにも、
- 「すぐやる」「すぐ出す」「すぐ答える」
- 作業を振られたら、0.01秒でもいいので、いったん着手する
これは、意外と盲点でした。
確かに、すぐに着手すれば、すぐにその作業の難所にも気づくことができる。
難所に早く気付ければ、ヘルプも早いタイミングで出すことができる。
ヘルプを早く出せれば、そのぶん早くヒントを得ることができる。
・・・いいことづくしです。
つい「処理速度」ばかりに速くしようとしていましたが、それよりも「タイミング」を早めたほうが、スジが良い。
これは、仕事を速くするために、一番簡単かつ効果的なコツかもしれません。
仕事ができる人の文章は「密度」が高い
次に印象に残ったのは、北野さんの文章術について。
北野さんの文章術を一言で表現すると、とにかく「密度」が高い。
文章自体は短い。つまり、体積が小さい。
しかし、文章に含まれている情報量が濃い。つまり、質量が大きい。
短いけど、内容の濃い文章を書く。
言うは易く行うは難しで、そんな文章を書くためには、それなりの技術が必要です。
しかし、そんな技術を簡単に言語化して教えてくれるのが、北野さんの本の魅力です。
「目的ファーストの法則」や「短文の法則」など、誰でも覚えて実践できる技術にかみ砕いて、語りかけるように教えてくれます。
だから、安心して読んでみてください。
そして、自分なりの文章術の型を作ってみるといいかもしれません。
ちなみに私は、↓のような型を作ってみました。
「なぜを5回繰り返す」よりも効果的な問いがある
第3章の「提案術」についても、面白い発見がありました。
よく、現場の問題を捉えるときに、「なぜを5回繰り返せ」と言われることがあります。
いろんな本で、そんな方法論が紹介されています。
しかし、なぜを5回繰り返しても、何かしっくりこないときがある。
そんなときに使えるのが、本書で紹介されていた「とはいえ?」の法則です。
これは、現場の「とはいえ」の部分、つまり「あるべき姿を実現するために、現場に強いられる負担」に目を当てる。そんな方法です。
「本当は評価制度を変えるべきだとわかっている。とはいえ、新しい評価制度になると、自分の評価が下がってしまう」
「評価制度を変えるとなると、それを現場に説明して回るのは自分の役目になってしまう。そんな嫌われ役はいやだ」
・・・など、何かの提案を実行するときには、様々な「とはいえ」が息をひそめています。
「総論賛成、各論反対」の根っこにひそんでいる、「とはいえ」を取り除く。
その方法論をたったの数千円で教えてくれるのが、『仕事の教科書』です。
自分を「ご機嫌」にするためのマトリクス
最後、第4章で登場するマトリクスもなかなかの破壊力です。
人生100年時代を息切れすることなく、成長しながら、健康に働いていく。
そのためには、自分の心身をコントロールする必要があります。
そのコントロールの指針になるのが、「ご機嫌マトリクス」です。(勝手に名前をつけてしまいました)
本書によると、
- 「ポジティブで日常的なこだわり」「ポジティブで非日常的なわくわく」を増やし
- 「ネガティブで日常的な面倒事」「ネガティブで非日常的な怒りや悲しみ」を減らす
そのためのマトリクスが紹介されていました。
本書に紹介されていたマトリクスに、試しに自分がやっていくことを整理してみました。
何だか、ネガティブなこと、ポジティブなことを、自分の思い通りにコントロールするための戦略を整理できた気がします。
・・・と、本書の魅力を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
一つ言えるのは、他の本でも紹介されていたありきたりな方法論はほとんど登場しない、ということです。
これだけ仕事術の本が出回るなか、本当にすごいことだと思います。
一つだけ、一つだけ苦言を呈すとするならば、もっと早くこの本と出会いたかった(それも新卒時代に)。
それくらいでしょうか。