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【要約・書評】MBAのExcel:即戦力になる!

「終電までに帰りたければ、Excelをちゃんとやりなさい」

一言一句正確に覚えているわけではありませんが、コンサル1年目に、たしかこんなことを言われました。
そこで、入社してから、徹底的にExcelのショートカットキーを覚えました。
マウスは一切使わずに、あらゆる操作をこなせるようになりました。
いろんな種類のグラフも作れるようになりました。
・・・しかし、いっこうに仕事のスピードが上がらない。

なぜか?
それは「Excelをちゃんとやりなさい」の意味を勘違いしていたから。

「Excelをちゃんとやる」の意味、それはマニアックなショートカットキーやグラフを覚える、という意味ではありません。
・仮説を立て
・仮説を検証するための適切な手段を講じ
・データを集め
・正しく素早くExcelで検証しきる
こんなことを意味していたわけです。

今でこそ、ある程度Excelを使いこなせるようになりましたが、「分析の思考過程」と「Excelの操作」の接続にはかなり苦戦しました。
というのも、この両方を扱っている本は、なかなか見当たらないからです。

例えば、「分析の思考過程」を学べる名著中の名著があります。
意思決定のための「分析の技術」』です。
分析の基本は「大きさを考える」「分けて考える」「比較して考える」「時系列を考える」の4つである。
・・・と、分析の本質を教えてくれます。

一方の「Excel操作」を、ある程度実務で使うイメージを持ちながら学べる本もあります。
その代表作が『外資系金融のExcel作成術』や『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』です。

私自身は、これらの本を読んで、実践し、フィードバックをもらいながら、少しずつ「分析の思考過程」と「Excelの操作」を接続させていきました。
ただ、本を行ったり来たりせねばならず、少し面倒ではありました。

・・・が、今回「分析の思考過程」と「Excelの操作」の両方をカバーしてくれる本が出版されました。
それが『MBAのExcel:即戦力になる!

これまでご紹介した本との関係性を図示すると、↓のような感じですね。

MBAのExcel:即戦力になる!』では、まずイントロダクションにて、問題解決のプロセスをおさらいしてくれます。
本書で語られている問題解決のプロセスは、非常にオーソドックスな流れでして。
What→Where→Why→Howの順に考えましょうね、ってやつです。お馴染みの、あれです。
一応おさらいをしておきましょう。

  • What:解くべき問題を明確化する。「何が問題か?」を先に決める。この定義がズレていると、後続の作業が全部パーになる
  • Where:問題箇所を特定する。「どこが悪いのか?」を見つける。解決して効果が大きそうな箇所を見つけることが大事
  • Why:原因を追究する。「なぜ悪くなったのか?」を深堀りする。問題を引き起こしている真因を掘り起こさないと、問題が再発するおそれがある
  • How:解決策を立案する。「どうすればいいか?」を考える。真因を解決するイケてるアイデアを出して実行できれば、めでたしめでたし

このなかで、特に「Where」と「Why」のときに出番なのが、「分析」です。
本書いはく「分析とは、ある問いに対して、分解して、比較して、意味のある差を抽出し、解釈すること」だそうで。
分析の本質をおさえた、シンプルな定義です。
ここまでが、本書のイントロダクションに書かれています。

そして「この分析のセオリーに沿いつつ、どうやってExcel操作に落とし込んでいくのか?」ってとこまで語ってくれるのが、本書のユニークな点です。
具体的には、以下の章立てで、「実際の業務に出てきそうな実例」を使いながら「Excelをすぐ操作できるレベルの解像度」で語ってくれます。

Chapter1:定量データからの顧客理解
Chapter2:RFM分析を用いた顧客セグメンテーション
Chapter3:回帰分析に基づいた「因果関係」の仮説検証
Chapter4:DCF法を用いたプロジェクトの投資判断

このように、実際の経営企画やマーケティングで使いそうな実例をピックアップして教えてくれます。
読み進めるたびに、筆者の親切心を感じずにはいられないはず。

あ、ちなみに「マリメッコグラフ」っていう超便利なグラフがあるんですけど。
このグラフについても知りたくなったら、私のこちらの記事も覗いてみてください。
実際の仕事で使いそうなサンプルデータを用いて解説しています
書評ブログでなぜかこの記事だけ「グラフの作り方」を語っていますが、「マリメッコグラフ」と検索して2番目に出てくるので、それなりに良質な記事かと。

【5分でわかる】マリメッコグラフはExcelで作れる

いつも書評と抽象的な考察ばかり書いているので、たまには仕事に使えるTips的なこともお伝えできればと思います。 今回は「マリメッコグラフ」がテーマです。

続きを見る

・・・途中で自分のブログの宣伝を挟んでしまい、すみません。
MBAのExcel:即戦力になる!』の話でしたね。

本書の魅力は「分析の思考過程」と「Excelの操作」を丁寧に接続してくれる点です。
この本に書かれていることを一通りマスターできれば、職場で「あの人はExcel得意だよね」と言われるレベルにはなるはず。
しかも、本が180度開く特殊な製本様式「コデックス装」なので、本書を読みながらPC操作の可能です。
もう、とことん親切な一冊なので、おすすめせざるを得ませんでした。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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