この本で解ける疑問は?
- 「ありきたりだね」と言われないためには?
- 「思っていたのと違った」と言われないためには?
- デザインの世界で勝ち抜いていくための考え方は?
『勝てるデザイン』とは
「デザインをオシャレにするための具体的な方法を知りたい」
もしこんな目的感を持っているのであれば、この本はオススメできません。
本書は、デザインのハウツー本ではないからです。
もちろん、「勝負フォント3選」など具体的なハウツーも書かれてはいますが、
それも300ページ以上あるうちの数ページにすぎません。
実は『勝てるデザイン』は、マインドセットと思考法の本なんです。
本気でデザインで勝負していくために必要な心がまえや、相手に刺さるデザインが生み出されるまでの思考過程が赤裸々に綴ってある。
「え、そこまで書いちゃっていいんですか?」とツッコミたくなるくらい、とにかく赤裸々に。
特に、筆者の前田氏が実際にクライアントに提示した「企画書」が登場したページを見たときは本当にビックリしました。
今回は、そんな驚きまみれの本を紹介していきます。
私は本書から得た一番の学びは、タイトル通り「勝てるデザイン」とは何かです。
本書が語る「勝てるデザイン」を紐解くには、以下の2つの問いに答える必要がありす。
- 勝つとは何なのか?
- デザインとは何か?
順番に見ていきましょう。
勝つとは何か?
まず最初に気になったのは「勝つ」について。
素人の私は「デザインに勝ち負けなんてあるんだろうか?」「オシャレだったら勝ちなのかしら?」くらいしか考えていませんでしたが(笑)
本書を見ていくと、次のようにしっかりと定義されていました。
まず、僕が考える「勝てる」の対象はこれらです。
・クライアントが勝てる
・ライバルデザイナーに勝てる
・美大コンプレックスに勝てる
勝つことで自分の心に打ち勝ち、いいデザインをすることで、社内外含め周りの人を笑顔にする。これが勝てるデザインです。
p10
この記述だけでも十分納得できます。
しかし、個人的にもっと心を打たれた記述がありました。
でも、面白くて実績になりそうな案件だったらタダでもやりたい。
ですから今の理想は「0円か100万円以上かのどっちかしかやらない」です。
0円のデザインには、自由にのびのびやらせてもらいチャレンジングな試みをする面白さがあります。
100万円超のデザインには、クライアントの期待のハードルと成果をコミットメントする責任の重みを乗り越える面白さがあります。
(中略)
仕事ではできない面白い経験を積んで、コミュニティで自分を知ってもらい、それがきっかけで新しいマネタイズに活かしていく。
そんな生き方が、これからのデザイナー、非デザイナー関係なく必要となっていくでしょう。
p233-235
ここを読んだとき、率直に「カッコいいなー」と思いました。
そう思うと同時に、私自身にとっての「勝ち」を定義することができたことが、本書で得た一番の収穫でした。
私にとっての「勝ち」とは何か?
それは、「自分なりのスタンスを確立したら、そこからブレないこと」。
スタンスからブレたら負け、ブレずに貫き通せたら勝ち。
…と定義してみたのはいいのだが、勝ち負けを決めるためにも、まずは「自分なりのスタンスが何なのか?」を紐解かねばなりませんね。
また新しい課題が見つかりました。
デザインとは何か?
次に、デザインの定義も見ていきましょう。
デザインは「思考」と「造形」の掛け算でできています。
p28
デザイン=思考×造形
これは非常にシンプルな定義ですよね。
もうすこし詳細化すると、「デザインとは、思考でおもしろくし、造形で美しくすること」でしょうか。
- ただ美しいだけでは、「デザインっぽいデザイン」になってしまう。
- そのデザインの裏側にあるストーリーを作りこんでこそ、そこにおもしろさが加わる。
- デザインはストーリーありきである。
少しですが、デザインの本質に一歩近づけた気がします。
さらにもう一歩、デザインについて踏み込んでみます。
『勝てるデザイン』を読んでいてつくづく思ったのは、デザインの主語は「相手」だということです。
例えば、本書に出てくる「"ならでは"のデザイン」。
この「ならでは」は、自分ならではの表現を身につけろ、なんてことは言っていません。
あくまで「相手=表現する対象」の「ならでは」を描き切ることが大事なんだと。
とにかく徹底して「主語=相手」で考えるのが、デザインです。
一方で「自分ならでは」を表現するのがアートです。
自分の内面と向き合いながら、内から込み上げてくる感情を表現していくわけです。
そう考えると、自分が普段書いているブログはアートとデザインの組み合わせなんだななと、気づかされます。
アートの部分
- 自分ならではの切り口で、オススメの本を紹介する(主語=自分)
- 自分ならではの捉え方を披露する(主語=自分)
デザインの部分
- 紹介する本の「ならでは」の部分を表現する(主語=本)
こんな風に、いろんな物事は「アートとデザインの掛け合わせ」だと考えると、デザイナーであろうとなかろうと、デザインは必須スキルなのかもしれませんね。