「結論から話す」は、ビジネススキルの一丁目一番地
「結論から話しましょう」
この言葉を知らないビジネスパーソンは、ほとんどいないのではないでしょうか。
もはや働く人とっての一丁目一番地ともいえるスキル。
いや、ビジネスマナーと呼んだ方がいいのかもしれません。
それが、今日のテーマ「結論から話す」です。
しかし、いざ職場を見渡すと「結論から話さない人」って結構いますよね。
なぜ、あれほど口酸っぱく言われ続けている「結論から話す」ができないのか?
いや、あえてやっていないだけなのか?
…と、こんな論点について考えてみたいと思います。
「結論から話さない人」の構造
では早速本題です。
結論から話さないのはなぜか?
この問いに対する答えの地図を示すと、次のとおりです。
順に説明します。
そもそも、結論を持っていない人
まずは、一番論外なパターンをご紹介しましょう。
それは、結論を持っていないパターンです。
「A案でいくか、B案でいくか迷っていて…」
「数値を分析してみたのですが、いまいち傾向が見えなくて…」
こんな風に、自分の考えや主張を一切持っていない状態では、結論から話すことはまず不可能です。
「いやいや、舐めないでくださいよ。そんな基本的なこと、できているに決まっているでしょう」という声が聞こえてきそうですね。
でも、本当に胸をはってそう言い切れるでしょうか。
例えば、以下のケースはどうでしょう。
「分析の結論を申し上げますと、A社の売上が急激に伸びていることがわかりました」
いかがでしょうか。
パッと見、歯切れのいい受け答えに見えます。
…が、本当にこれで結論から答えられているかというと、答えはNoです。
これは「結論もどき」であって、「結論」ではありません。
結論とは、事実に対して、自分なりの解釈や判断を加えたものです。
事実だけを伝えるだけでは、ほとんど付加価値はありません。
…と、偉そうなことを書いている私自身も、駆け出しのコンサルタント時代は、なかなか結論を持つことができずに苦しんでいました。
綺麗にファクトを整理して、それっぽい図表にまとめて、いざドヤ顔で資料を上司に見せると、
A上司「うん、それで?お前はどう思ってんの?」
わたし「え?いや、Aさんが、〇〇という結論を出すためのファクトを集めてくれって言ったんじゃ…」
A上司「いや、それはいいからさ。で、お前はどう思ってんの?」
わたし「ええと、クライアントのB部長のご意向を踏まえると、案1がいいのではないでしょうか?」
A上司「いや、それはいいからさ。で、お前はどう思ってんの?」(以下略)
こんな禅問答のようなやりとりを、研修中はもちろん、実際のプロジェクト現場でも何度も繰り返していました。
こういった禅問答を重ねることで、息を吸うのと同じくらい無意識に「自分ならどう考えるか」を考えるようになれます。
「お前はどう思ってんの問答」、オススメです。
結論は持っているが、結論から話さない人
次は「結論は持っているけど、結論から話さないパターン」について。
これは、さらに2つに分けてみましょう。
結論を話したくない人
結論は持っているけど、結論から話さないのはなぜか?
1つは、結論は持っているものの、相手になかなか話したくないときでしょう。
例えば、システムの何らかの不具合が明らかになったとき。
結論を伝えれば、報告した相手から怒られるかもしれない。
こういう気持ちのときは、結論から話したいとは思えませんよね。
結論を話したいのに、結論から話さない人
一方で、さっきの逆を述べると「結論を話したいのに、結論から話さない人」というパターンがあります。
ここは、さらに2つに分解することができます。
結論から話すのに慣れていない人
まずは「結論から話すのに慣れていない人」が挙げられます。
「結論から話す」
これが実は結構難しい。
日本語はどうしてもその特性上、結論となり得る述語が、文章の最後にきます。
なので、無意識に話していると、結論が後ろに来てしまうんですね。
私も、前職のコンサルタント時代には、結論から話すための強制ギプスを装着させられました。
A上司「今日のタスクの進捗を教えて?」
わたし「はい、まずタスク1は、〇〇までは仕上げたのですが、まだBさんのレビューが終わっておらず…」
A上司「待って。結論から言って?」
わたし「はい、まずタスク1は未完了です。なぜならば、、」
A上司「いや、だから結論から言って?タスク1~5の進捗は全体で見ると何%なの?詳細から入るんじゃなくて、概要から喋ってくれる?」
…で、それでもなかなか結論から話せないと、
A上司「じゃあさ、しばらくはもう、枕詞は"結論からいうと"で話し始めてちょうだい。」
…と、強制ギプスを装着させられました。
今のは、ごりごりコンサル上司の例でしたが、、
よっぽどセンスがいい人でない限りは、これくらい徹底して訓練をしないと、無意識レベルで結論から話せるようになるのは難しいでしょう。
まずは不器用なりにも、時には強制ギプスをつけながら、結論から話すことを習慣化してみる。
こういった努力が不可欠なんだと思います。
あえて結論から話さない人
ここまでの話が「初級編」でした。
そして、ここからが「中級編」です。
結論から話せるんだけど、あえて結論から話さない。
実は、結論から話したほうがいい場合と、そうでない場合があるんですね。
結論から話したほうがいいときは、「相手がこちらの話を聞く準備をできているとき」です。言い換えれば、「話の前提」を共有できている場合です。
例えば、日ごろからよく接している相手から「○○について教えて?」と聞かれたとき。
こういったときは、相手と自分との間で、ある程度前提を共有できています。
なので、聞かれたことに対していきなり結論から答えても、相手はすんなりと理解してくれるでしょう。
では、結論から話さないほうがいい場合は、いったいどんなときか。
それは、「相手がこちらの話を聞く準備をできていないとき」です。言い換えれば、相手と自分との間に大きな情報格差がある場合です。
予算の決定権は持っているけど、ITのことを全く知らない部長に対して、「結論から申し上げますと、新しいツールAを導入するために、予算を〇〇程度承認いただけないでしょうか」といきなり話始めても、正直「は?」となりますよね。
そんなときは、
- 相手は、今どこまで知っているのか?
- 相手には、どこまで知ってもらう必要があるのか?
この2つをクリアにした状態で、伝える情報の順番を組み立てる必要があります。
「結論から話せるんだけど、相手の理解度に応じて、伝える順番を変えることができる」
これこそ、ビジネスコミュニケーションにおいて目指すべきレベルといえるでしょう。
以上、書評も何も関係ない、ただのコラムでした。