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【要約・書評】コンサル脳を鍛える

コンサルのノウハウ本がこんなに溢れているのに、なぜ、コンサルタントと同じスキルが身につかないのか?

これは、我々が大いに疑問に思う問いでもあり、筆者の最大の問題意識でもあります。
今回ご紹介する『コンサル脳を鍛える』は、この問いに真正面から答えた本です。

『コンサル脳を鍛える』とは?

本書は、ボストンコンサルティンググループ(BCG)やアクセンチュアで20年間、後進のコンサル育成を担ってきた方によって書かれた本です。
一般的に「仕事ができる人材が多い」と言われているコンサル業界で、文字通り「仕事ができる人材」を大量に世に送り込み続けてきた。
そんな筆者は、本書を通して、ある問いに答えを出そうとしています。

それが冒頭の問い「コンサルのノウハウ本がこんなに溢れているのに、なぜ、コンサルタントと同じスキルが身につかないのか?」です。

確かに、Amazonで「外資コンサル」と検索すると、200件以上の本がヒットします。
「外資系コンサル流、〇〇の技術」的なネーミングで、似たり寄ったりの本がズラリ。
ロジカルシンキング、プレゼン、リサーチ、分析、エクセル、パワポ、プロジェクトマネジメント、経営のフレームワーク・・・一般的なビジネススキルは、ほぼコンプリートされてるんじゃないでしょうか。

にも関わらず、やはり「コンサルの人ないしコンサル出身の人」のほうが、他のビジネスパーソンよりも、相対的にビジネススキルが高い印象です。
私もコンサル業界に3年間いましたし、いろんな業界の人とお仕事をしましたが、コンサルのほうが「ビジネス基礎力(読む、書く、聞く、話す)」に長けているなと思います。
やっぱり違うんですよ。資料の書きっぷりとか、話し方とか、議論のファシり方とか。そういうテーマの本いっぱいあるのに。
・・・なんで?

この疑問に、今回、『コンサル脳を鍛える』の著者、中村健太郎氏がズバリと答えてくれています。

コンサルが一般的ビジネスパーソンとの違いを生む「根源of根源」の基礎スキル。
それは、なんと、「日本語力」「論理力」「コミュニケーション力」の3つとのこと。

三大基礎スキル「日本語力」「論理力」「コミュニケーション力」

この3つのスキルについて、私なりの解釈も交えたメモは以下のとおり。

  • 日本語力:使う言葉への「感度」を高めて、多義性が生じない文章を書く力
  • 論理力:目的に沿って論理的に整理することで、説得力のある主張をつくる力
  • コミュニケーション力:相手の認識・反応・関心を踏まえた形(順番、表現、語り口…)で伝える力

この3つこそが、三種の神器くらい大事だそうです。
・・・うん、納得感しかない。

「正しい日本語=多義性が生じない言葉づかい」を運用して「納得感のある論理」を作り「相手に適切に伝える」という基礎力がないと、いくらコンサル流資料作成とかファシリテーションとかの本を読んでも意味がありません。
資料の見た目だけが良くなるだけ、議論中にとりあえず「3つあります」と言うだけ、になりかねませんからね。

確かに、私もそれでイタい思いをしました。

コンサルに入社する前に、「外資系コンサル流〇〇術」の本を大量に読み込んだんですよ。
で、いざプロジェクトに配属されて「3つあります」「結論からいうと」「ホワイトボードに書きますね」「こういうチャートで整理してみました」とか、本でかじった小手先スキルを披露しました。
・・・見事に、ボコボコにされましたね。
待っていたのは、赤入れ地獄。
議事録なんて何度書き直したか。

なぜなら、基礎スキルの「日本語力」「論理力」「コミュニケーション力」がフニャフニャだったから。

テニスでいうと、筋力も体力もラケットの振り方も知らないのに、「テニスの王子様」だけ見て、いきなり「ツイストサーブだ」って言ってるだけですからね。
ぼくも中学生のころ、よく体育のときにやってました。

・・・話が逸れまくりました。まだまだ「日本語力」「論理力」「コミュニケーション力」が身についていない証拠です。
でも、そんな私みたいな読者(私だけか)のために、本書は「第2部:コンサル脳を鍛える錬成ドリル」を用意してくれています。
長年コンサルタントの育成を担っていた筆者による、非常に質の高いドリルでした。

で、もし、本書のドリルだけじゃ満足できない!という方。
「日本語力」「論理力」を鍛えるのに、うってつけの本があります。
野矢 茂樹氏の『論理トレーニング101題』と『大人のための国語ゼミ』です。
MBAの講師の方に「絶対に読んどいたほうがいい」と言われた本なので、マジで良い本なんだと思います。

日本語力を鍛えるのにオススメ「ビッグワード自問自答ゲー」

本書の「日本語力」のパートで、次のようなことが書かれていました。

では、次の例はどうでしょう?

「次回討議までに、当社の提供価値を整理しておきます」

(中略)

「整理する」とひと言で言っても、分類する、新たに作成する、内容に見直しをかけるなど、作業イメージは複数考えられます。お互いのイメージが大きく異なっていると認識齟齬を生みます。社内でしたら、至急やり直せば済むこともありますが、その「整理」の作業にもフィーが生じる外部委託作業の場合、もめごとになりかねません。

誰が読んでも同じ解釈しかできないレベルまで、抽象度を下げなければいけません。

『コンサル脳を鍛える』p46より

この話に出てくるような「非常に抽象的で、いろいろな解釈を生んでしまう言葉」を「ビッグワード」と呼びます。
多義性が生じない文章を書くためには、「ビッグワード」に注意せねばなりません。

この「ビッグワード」と上手く向き合う術がありまして。
「ビッグワード自問自答ゲー」ってやつです。

例えば「IT」という言葉があります。ビッグワード筆頭です。
「IT」みたいなビッグワードを見たときは、次のことをやってみるのがオススメです。

  1. 「ITってどゆこと?」と自分で自分に突っ込んでみる
  2. 「○○化」と捉えなおしてみる

1つ目はイメージつきやすいですよね。
「ITってどゆこと?」と自分に突っ込んでみて、自分なりのITの定義を書き出してみます。
そのあとは、ググるなりChatGPTに聞くなりして、一般的なITの定義を調べます。
で、自分なりの定義と一般的な定義を見比べて、違う点があれば「なんで違うんだろう?」とか「こう定義したほうがイケてるんじゃね?」とさらに改良を加えていく。
・・・この一連の作業を繰り返すと、1つひとつの言葉に対する「感度」が爆上がりします。

次に、2つ目の「○○化」について。
例えば、ITを「IT化」と捉えることで、「IT化が進むプロセスを言語化しよう」という発想になります。
用語を一面的に切り取らず、全体のメカニズムの中で考えることができます。
「IT化は、あるべき業務の流れを定め、その業務の流れを支える技術を選び、選んだ技術を作りこみ、今ある業務を変えていくこと」
・・・みたいにプロセスで捉えてみると、一言で「IT化」といっても様々なニュアンスが含まれていることがわかります。

以上のような「ビッグワード自問自答ゲー」をやるクセをつけておくと、日本語に対する感度が上がり、
結果的に「多義性が生じない文章=ビジネスにおける正しい日本語」を運用できるようになるでしょう。

最後は少し話が逸れましたが、まとめると・・・
ビジネスにおける三大基礎スキルは「日本語力」「論理力」「コミュニケーション力」の3つ。
この3つの正体を知り、鍛えることができる本が『コンサル脳を鍛える』です。
めちゃくちゃオススメです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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