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「自分の頭で考えろ」に困っているあなたへ!『知的複眼思考法』苅谷 剛彦

この本で解ける疑問は?

  • 自分の頭で考える、って結局どういうこと?
  • 何のために、自分の頭で考えないといけないの?
  • 考える力はどうやって身につければいいの?
  • 「あなたはどう思いますか?」という質問に、「特にありません」としか答えられない…そんな状況が嫌だけど、どうすれば?

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『知的複眼思考法』って?

-Why-なぜ書かれたのか?

本書の「まえがき」にて、筆者はこのように述べています。

何ともいえない不透明感が私たちを取り囲んでいる。他方で、善か悪かといった白黒の決着を迫る、わかりやすい二分法的なものの見かたが広まっている。単行本版『知的複眼思考法』の出版から六年が経つが、その後強まったこうした変化を見ると、改めて「自分の頭で考える」ための方法を、できるだけ多くの人々が身につけることの重要性を痛感する。(3ページ)

この「自分の頭で考える」ための思考法として、「知的複眼思考法」が紹介されています。

-What-なにをすべきか?

知的複眼思考法とは何か?筆者は次のように定義しています。

ありきたりの常識や紋切り型の考えかたにとらわれずに、ものごとを考えていく方法(27ページ) 

例えば、「AIが今後急激に発達する」というニュースを見て、「職が失われる、大変だ」というムードに流されてしまうのは、「ありきたりの常識や紋切り型の考えかた」にとらわれているといえるでしょう。

そうではなく、「AIとは何か?」「発達するとは、どういう状態を指すのか?」「発達したとして、全ての職が失われるのか?失われない職は何か?」「そもそも、職が失われることは、問題なのか?」と、色々な角度からものごとを考えていく
こうしたものの考えかたが、知的複眼思考法といえるでしょう。

さらに筆者は、知的複眼思考法の身につけ方を、次のような章立てで述べています。

第1章:創造的読書で思考力を鍛える
第2章:考えるための作文技法
第3章:問いの立てかたと展開のしかた
第4章:複眼思考を身につける(9ページ)

今回は、自分の頭で考えるファーストステップとして、第1章について詳しく見ていこうと思います。

-How-どのようにすべきか?

読書を通して、自分の頭で考える力を養うにあたり、筆者は次のようなポイントを挙げています。

ポイント

  1. 著者と対等になって文章を読む。書かれたものを不動の完成品と思わない。
  2. 批判的に読書をするためには、20のチェックポイントがある。
  3. その中でも重要なチェックポイントとして以下の四つをあげることができる。
    (1)著者を簡単には信用しないこと
    (2)著者のねらいをつかむこと
    (3)論理を丹念に追うこと、根拠を疑うこと
    (4)著者の前提を探り出し、疑うこと(109ページ)

個人的には、特に(4)がなかなか難しいと感じます。
それは「明記されていない」ことが多いからだと思います。

ありきたりな例ですが、「ソクラテスは○ぬ。なぜなら、ソクラテスは人間だからだ。」という論理には、「人間は○ぬ」という隠れた前提があります。

こうした文と文の間にある「見えないもの」を「見ようとすること」が、考える力を養うのでしょう。

 

第2章以降を読んでいくと、あくまで、第1章:創造的読書で思考力を鍛えるは序章にすぎないことがわかります。

学校では教えてくれない、わかっているようでわかっていない「自分の頭で考える力」について腹落ちできますので、是非おすすめしたい1冊です。

 

学び

この本は、大学1年時に、「自分の意見を持てない」と悩んだときに読んだ本です。
人生で最も助けられた本の1つといって、過言ではありません。

そんな感動的な本だったので、大学時代に何度も読んだのですが、数年たって改めて読み直してみると、また学びがありました。

  1. マジックワードに出会ったら、言い換えてみる
  2. あるテーマについて、賛成と反対意見両方を考えてみる

1. マジックワードに出会ったら、言い換えてみる

これは先日、転職の面接を受けていた時の出来事です。「将来は、経営人材に」と述べた際に、「経営人材ってなに?」と問われました。

本書では、こうした「ぼやっ」とした、なんにでも解釈できるような言葉を「マジックワード」と呼んでいました。

本を読んで、わかった気になっていても、習慣化して実践するのは至難の業です。

こうしたマジックワードに出くわした際は、「言い換えると?」と、自分もしくは相手に問いかけてみるといいでしょう。

「経営人材を言い換えると、経営者。いや、全社的な意思決定に貢献できる人。いや…」という風に、言い換えを繰り返すことで、聞き手も話し手も腹落ちできます。

最近気になっている言葉だと、ミレニアル世代、バブル期、なんかも言い換えゲームしてみると面白いかもしれません。

2. あるテーマについて、賛成と反対意見両方を考えてみる

これは、本書の「創造的読書で思考力を鍛える」の延長で、新聞で目にしたテーマなどについて、賛成と反対、それぞれの立場に立って、言い分を考えてみる遊びです。

例えば、2019年10月の消費税率引上というありきたりのテーマについて、賛成意見と反対意見を考えてみます。

あんまり時間をかけて一生懸命やると続かないので、「制限時間は3分」「結論と理由3つ」というルールでやってみると、お手頃です。
応用編は、さらに「高齢者から見ると?」「未成年から見ると?」みたいに、視点を増やすと、より思考が進みます。

明日から取れるアクション1つ

  • 1日5分、新聞からテーマを選んで、賛成・反対に分かれて、妻と議論してみる。
    (見えない前提?として、まずは、妻とこの件を合意する、が抜けていましたが、悪しからず)

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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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