はじめに
そもそもの問題意識
以前から引っかかっている言葉があります。
「それ、やるべきだよね」
「やったほうがいいから、やろう」
「やるべきこと」は、もちろん漏れなく処理する必要があります。
一方で「やったほうがいいこと」は何でもかんでも手を出せばよいのでしょうか?
もちろん、手元のリソース(人や時間)が無限に存在するのであれば、全部対応することができます。
しかし残念ながら、リソースは有限です。
だからこそ、「優先順位」という概念が必要になります。
「当たり前じゃないか」という声が今にも聞こえてきそうです。
しかし、この当たり前を軽視している人、結構いませんか?
少なくとも私は軽視してました。
今日はその反省も兼ねて、「やるべきこと」と「やったほうがいいこと」との向き合い方について妄想してみたいと思います。
組織というより個人にフォーカスしたい
組織視点で述べるのもよいですが、明日からすぐ実践することを考えて、今回は「個人」にフォーカスしてみます。
1人のビジネスパーソンとして、「やるべきこと」と「やったほうがいいこと」にどう立ち向かえばよいのか?
僕だったらこんな風に向き合っていきたいな、という視点で、自由気ままに妄想してみます。
あくまで「自由気ままに」ですので、「こいつ生意気な」と感じる部分も多々あるでしょう。
そんな部分がありましたら、ぜひ叱咤激励をよろしくお願いいたします。
では、妄想タイムスタート。
まずは、補助線を引いてみる
妄想をスタートするにも、「やるべきこと」と「やったほうがいいこと」の1軸だけだと解像度が低い気がします。
そこで、1つ補助線を引いてみます。
それは「自分の土俵内」か「自分の土俵外」かです。
土俵って何?
土俵というのは、大きく2つの要素で成り立っています。
1つ目は、自分がやりたいことか否か。
好き嫌いと言い換えてもいいでしょう。
自分がやりたいことだったら土俵に立てばいいし、自分がやりたくないことであれば意地でも土俵から降りる。
…こんな考え方もあるでしょう。
2つ目は、自分が得意なことか否か。
特に、得意なことと苦手なことがハッキリしている人にとっては、この要素を外すと致命傷に至ります。
『仕事に関する9つの嘘』にも書かれていましたが、「最高の人材は"オールラウンダー"である」という考え方が成立しにくくなっています。
オールラウンダーよりも「尖った人材」の存在価値が高まってきている。
そして「尖った人材」になるためには、自分の「土俵感」を研ぎ澄ますことが重要です。
2軸で見えてくる4種類の仕事
さて、「やるべきことか、やったほうがいいことか」の軸に加え、「自分の土俵か否か」の軸を引いてみました。
ここで、下図のような4つのタイプが浮かび上がってきます。
- やるべき×自分の土俵外の仕事
- やったほうがいい×自分の土俵外の仕事
- やるべき×自分の土俵内の仕事
- やったほうがいい×自分の土俵内の仕事
順番に説明します。
①やるべき×自分の土俵外の仕事
まずは「やるべきだけど、自分が嫌いor苦手な仕事」についてです。
こういう仕事との向き合い方って難しいですよね。
組織的には、絶対にやらなければならない。
でも、自分がやったところで、他の人よりも大した価値を発揮できない。
頑張って頑張って、何とか「人並みのレベル」までは行けたとしても…
でも所詮「嫌いor苦手」な仕事です。
人よりも好きで熱意を持てるようになるわけでもないし、人よりも抜きん出て得意になるのも難しいでしょう。
サッカーが嫌いで苦手な人が、サッカーが好きで得意な人よりも上手くなれるのか?
おそらく、なれませんよね。
考え方はこれと一緒です。
人生の時間は限られていますから、「嫌いor苦手」なことに沢山時間を使うのはなるべく避けたい。
じゃあどうするか?
組織的に「やらないといけない」ことに変わりはない。
でもやりたくない。
そんなときは、何が何でも「自分以外の人にやってもらう努力」をしたほうがいいでしょう。
要は、「撤退戦略」をとるわけです。
これには勇気がいります。「組織的にやるべき仕事」を避けるわけですから、当然反発の声もあります。
でも、例えば、「別のことで貢献しますので、この仕事は他の人にやってもらえませんか?」と伝えるだけでも、何も動かないよりは効果があるはずです。
そして自分が得意なことでガンガンに成果を出して存在感を出しつつ、やるべきことをやってくださっている周りの方々に感謝の意を伝え続ければ、ちょっとずつ周りの理解を得ることができるかもしれません。
もちろん、「組織的にやるべきこと」からは撤退しているわけですから、自分に対する不満をゼロにすることは難しいでしょう。
そこは腹をくくる必要があります。
まとめます。
「やるべき×自分の土俵外の仕事」については、2通りの向かい方があります。
1つ目は、嫌いor苦手だけど、周りに不満を抱かれるのはもっと嫌だから、辛抱強く「やるべき×自分の土俵外の仕事」と向き合う。そしていつの日か、自分の才能が開花する日を待ち望んで、コツコツ努力を重ねる。
2つ目は、自分の土俵外の仕事に時間を費やすのは、組織の資源配分的にも自分の人生の過ごし方的にも許せない。だから、「やるべき×自分の土俵外の仕事」からは撤退する。それで周りから不満が発生したら、しっかりと受け止める。
いずれにせよ、「やるべき×自分の土俵外の仕事」は、いばらの道と言えるでしょう。
②やったほうがいい×自分の土俵外の仕事
次は「やったほうがいい、かつ、自分が嫌いor苦手な仕事」です。
さっきと打って変わって強気で書きます。
こういう仕事は、消しにかかりましょう。
具体的には次の3つの方向性があります。
- ハッキリ「No」と明言する
- さっさと「省力化」「自動化」してしまう
- 「必要ない理由」を証明して、その仕事自体を無くす
ハッキリ「No」と明言する
「やったほうがいいこと」というのは、裏を返すと「やらなくてもいいこと」でもあります。
「やらなくてもいいこと」まで強制されたらキリがないですよね。
ハッキリとNoと言いましょう。
ただし、ただNoと言うだけでは、相手からよく思われません。
「それはやりません。代わりに〇〇をやります。いいですか?」
…こんな風に、代替案もセットで示しましょう。
さっさと「省力化」「自動化」してしまう
「やったほうがいい」くらいのニュアンスの仕事の中には、地味な仕事もいくつかありますよね。
「それ、わざわざ人がやる必要ある?」と食って掛かりたくなる仕事ですね。
そういう仕事は「自動化できないか?」を考えてみましょう。
毎週集計させられているデータは、自動でレポート化しておく。
フォーマットを作っておいて、そこに貼り付けるだけにしておく。
…こんな風に、徹底的に手を抜く方法を考えてみましょう。
「必要ない理由」を証明して、その仕事自体を無くす
あるいは、「そもそも、それやる必要ある?」と問題提起して、仕事自体を無くすことだってできます。
仕事を無くすことも立派な仕事です。
なぜならば、「組織が非付加価値業務に割く時間を減らし、代わりに付加価値業務に割く時間を増やしている」からです。
「組織のパフォーマンスを上げるため」という大義名分のもと、自分の土俵外の仕事はどんどん手放してOKだと思います。
③やるべき×自分の土俵内の仕事
次に「やるべき、かつ、自分が好きor得意な仕事」について。
これは、組織で生き残るための生命線となる仕事です。
「やるべき×自分の土俵内の仕事」で成果を示すことができれば、組織に無くてはならない存在になることができます。
それに、自分の土俵内の仕事をやっている時間は楽しいものです。
仕事が趣味に思えてくるくらい、楽しくなることもあります。
組織としてもやるべきことで、自分にとってもやりたい仕事であれば、お互いハッピーです。
一方で、この領域の仕事で成果を示すことができなければ、短期的に見れば、自己肯定感を大きく損ねることにつながります。
自分が得意だと思っていたことで結果を出せないのは辛いものです。
しかし、見方を変えれば、自分が土俵だと思っていたことが、実は「自分が立つべき土俵ではなかった」と気づくことができます。
そういう意味でも、「やるべき×自分の土俵内"だと思っている"仕事」は、積極的に取りに行った方が良いでしょう。
④やったほうがいい×自分の土俵内の仕事
では、「やったほうがいい、かつ、自分が好きor得意な仕事」はどう扱えばよいでしょうか。
個人としては、こういう仕事はぜひとも手を付けたいですよね。
一方で組織としては、「やったほうがいいよね」と言ってくれる人もいれば、「それ、やる必要ある?」と懐疑的な人もいるでしょう。
この「やったほうがいい×自分の土俵内の仕事」は、懐疑的な人に潰されないよう、大事に育ててあげる意識が大事です。
まずは、自分が「やったほうがいい」と思ったことは、提案書レベルに落としてみましょう。
次に、身近なキーパーソンに提案書を見せてみて、意見を聞いてみましょう。
スジが良さそうであれば、スモールスタートで着手しちゃいましょう。
要は、そういう「やったほうがいい」と思える仕事を何本も試してみて、10本に1本くらいを「組織としてやるべき仕事」に育てていけばいいのです。
新規事業の立ち上げやベンチャー投資の考え方と一緒ですね。
「やったほうがいい仕事」から「やるべき仕事」に育てることができれば、またまた組織も自分のハッピーです。
まとめ
以上をまとめると、以下の図のように整理できます。
自分の土俵外の仕事からは手を引き、自分の土俵内の仕事にリソースを集中させる。
これが1つの基本戦略ではないでしょうか。
『仕事に関する9つの嘘』にもあるように、1人ひとりがオールラウンダーである必要はありません。
組織としてオールラウンダーであればOKなわけです。