スキルセット 書く 番外編

「わかりにくい文章」の書き方

「つまり、どういうことだってばよ?」

こんなフレーズを毎日頭に思い浮かべながら仕事をされている方も少なくないのではないでしょうか?

私も昔からこの悩みと闘っています。

なんせ、センター試験の現代文が100点満点中40点しか取れないレベルの読解力なもので…

だいたいの文章は2回くらい読まないと理解ができません。

でも一方で、こんな私にでも一瞬で理解できる文章とも何度か出会いました。

  • 何が言いたいのか全くわからない長すぎる文章
  • 頑張って解釈しないとわからない短すぎる文章
  • 少し長いけど何が言いたいのかよくわかる文章
  • 短くてよくわかる文章

これらの違いはいったい何なのだろうか?

こんな純粋な疑問について考えてみたいと思います。


「わかりにくい文章」を紐解く3つの軸

わかりにくい文章の正体に迫るために、3つの補助線を引いてみます。

次の図をご覧ください。

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わかりやすさ=文章力の高さ×結論の明確さ×文脈の共有度

他にも色々な切り口があるでしょうが、私は今のところこの3軸がしっくりきています。

①文章力の高さ

文章力とは「文章をわかりやすく書くためのお作法をどれだけ身につけているか」を表しています。

  • 1文は80字以内で短く言い切る
  • 「という」「こと」を連発し過ぎない
  • 「ので」を1文で2回使わない
  • 結論→理由の順番で書く
  • ポイントをナンバリングする
  • etc…

と、挙げ始めたらきりがありません。

文章の中身はおいといて、上述で列挙したような「お作法」を身につけておくだけで、グンとレベルアップできます。

②結論の明確さ

では、お作法ができていればOKか?というと、そんなことはありません。

仮にお作法どおりに、文章のはじめに結論が書かれていたとしても、結論がボヤっとしていてはわかりません。

「よい結論=読んで30秒後に手を動かせるレベル」まで、結論の明確さを追求することが大事です。

③文脈の共有度

そして3つ目の要素が「前提となる文脈をどの程度共有できているか」です。

この文脈とは、依頼や相談事の「背景・目的」の部分です。

背景や目的が書かれていないまま、「あれやっといて」とだけ書かれていても、読み手は理解はできど納得はできないはずです。

文章力がないと読んですらもらえない

例えば、次の文章を読んでみてください。

「本の読み方セミナー」というイベントですが、Twitterとメルマガ施策が効いたので、現在100人ほど集客できているので、目標進捗は順調ということかと思います。

ただし、今後の伸び悩みの可能性を考慮すると、あと数本は集客施策を増やした方がいいと思いますので、再度マーケティング部門とミーティングを行いたく、日程調整をしたいので、このメールに添付している予定調整表を入力いただきますと幸いでございます。

ちょっと大袈裟に書きすぎました(笑)

  • 何をしてほしいか、パッと見てわからない
  • 「という」は不要
  • 「ので」を連発しすぎ
  • 一文が長い
  • 「いただきますと幸いでございます」は無駄に丁寧すぎ

こんな文章を読みたいと思いますか?

読みたくありませんよね。

そうです。文章力がなければ、文章を最後まで読んですらもらえません。

いくら良いことが書かれていても、基本的なお作法が守られていないと、スタートラインにすら立てません。

 

ただ、悲観する必要はありません。

Amazonで「文章力」と入力して検索すると、良本が山ほどヒットします。

「文章力」を語っているだけに、どの本もわかりやすく書かれています。

中でも断トツでオススメなのが『書くのがしんどい』です。

レビューや要約も以下の記事に書いていますので、気になった方はご覧ください。

【1枚でわからない!?】『書くのがしんどい』竹村 俊助 - BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで

文章力があってもわかりにくいのはなぜか?

では、文章力を鍛え上げたとして、それだけで本当にわかりやすい文章を書けるのでしょうか?

…実は、ここからが「わかりやすい文章」への挑戦のはじまりです。

次の図をご覧ください。

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文章力があったとしても、さらに突破すべき壁があります。

  • 結論が明確かどうか
  • 文脈が共有できているかどうか

この2軸を掛け算して考えると、わかりにくい文章の輪郭が見えてきます。

①小難しい文章:結論が不明確×文脈が共有できていない

まずは次の文章を読んでみてください。

貴社が成功するためには、「ダイレクトチャネルの成長」と「オペレーションモデルの再構築」が必要です。

そのためには、デジタル戦略に必要なケイパビリティの向上に加え、エマージングテクノロジーの理解を深める必要があります。

いかにも外資系コンサルが書きそうな文章を想像で書いてみました。

文章力の観点では、一文一文は80字以内に収まっていますし、結論ぽいものも書かれています。

しかしこの文章、人によってはわかりにくいと感じるのではないでしょうか。

例えば、経営者ではなく、そこそこビジネス書を読んでいる課長レベルの人は次のような感想を抱くでしょう。

  • 「ダイレクトチャネルの成長」と「オペレーションモデルの再構築」が必要…と言われても、まあ当たり前だよね。なぜ当たり前のことを、わざわざ力説しているのか?
  • エマージングテクノロジーと書かれても、何だか自分からは遠い用語のように感じる。
  • てか、どうして今そんな話をしているの?話の位置づけがわからん。

…と、こんな疑問を言語化できるのであれば、問題は深刻ではありません。

むしろ不味いのは、「何やらようわからんけど、頭が良い人が言っていることだろうから、たぶん自分の読解力が足りないから理解できないんだろう」と感じる人が多い場合です。

この「小難しい文章」は、得てして「読み手が悪い」と錯覚させてしまうことがあります。これが一番厄介です。

 

小難しい文章にならないためにも、

  • 読み手は誰なのか?
  • その読み手は何を知っていて、どこに関心を抱いているか?

…これらの問いを考えたうえで文章を書く習慣を持ちたいものです。

自分が書きたいことではなく、相手が読みたいことを書く。

これが、わかりやすい文章を書くための一丁目一番地です。

②言葉足らずの文章:結論が明確×文脈が共有できていない

次の文章を見ていきましょう。

11月中に、リモートワーク前後の労働時間の変化について調べてもらえますか?

結論が具体的でわかりやすいですね。何をすればよいか、イメージがつきます。

しかし、一方で次のような疑問が出てきます。

  • なぜリモートワーク前後の労働時間を調べる必要があるのか?どんな課題感があるのか?調査結果は何に使うのか?
  • なぜ私がやらなくてはいけないのか?他の人ではダメなのか?なぜ今なのか?

要するに、前提となる文脈=背景や目的について書かれていないので、読み手は「理解はしているけど納得はしていない」のです。

結論だけが書いてあって、前提となる文脈が添えられていない。

これが「言葉足らずの文章」です。

 

あくまで前職のコンサル時代の経験則ですが、経営層や部長クラスの人が書く文章は「言葉足らず」なケースが多かったです。

分刻みのタイトなスケジュールで動いているからこそ、1つひとつの文章に割く時間を最小化せざるを得ない。

だからこそ、1~2行の「言葉足らずの文章」になってしまうのでしょう。

 

しかし、言葉足らずな指示を量産すると、部下が間違った目的感で想定外のアウトプットを作ってしまうリスクが高まります。

そうなると、手戻りが発生してしまい、かえって余計に時間がかかります。

依頼事の背景や目的を丁寧に添えてあげたほうが、実は近道なのです。

③読解を強いる文章:結論が不明確×文脈が共有できている

次はこんな文章を見て見ましょう。

■背景

  • コロナ禍に突入し、社員にオフィスに出社してもらうのは危険を伴うようになった
  • そこで5月より、全社員に「リモートワーク推奨」の号令を出した
  • しかしここ最近、契約社員のリモート導入が進んでいないことを耳にした

■依頼事項

  • リモートの導入状況について調査してもらえますか

背景が丁寧に書かれているので、依頼の前提となる文脈はよく理解できます。

しかし、結論となる依頼事項の記載が曖昧です。

  • 「リモートの導入状況」とは、具体的に何を見ればよいのか?
  • 背景から察するに、正社員と契約社員とでリモートの導入率がどう違うかを見ればよいのだろうか…
  • だとすると、正社員と契約社員の何名かに「週何回リモートワークしていますか?」とアンケートを取るのがよさそうだ。

…と、こんな風に、読み手が頑張って解釈する必要があります。

先ほども書きましたが、「よい結論=読んで30秒後に手を動かせるレベル」です。

読み手に「解釈する手間」を強いてしまってはいけません。

身につけるべきは「要約力」

では、どうすれば「わかりやすい文章=結論が明確で、文脈も共有できている文章」が書けるのでしょうか?

答えは「要約力を鍛えること」ではないでしょうか。

要約力とは、"要点"を"約"する力のことです。

要約=要点×約する

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「要点=問い×答え×根拠」をセットで書く

私は、要点とは「問い」「答え」「根拠」のセットだと考えています。

  • 問い=白黒つけたい論点
  • 答え=自分が考えている仮の答え
  • 根拠=答えの背景(Why)と、答えの実現方法(How)

この3つを書いてあげると、文章の裏側にある文脈を共有できます。

問いとセットで表現することで、結論の明確さや解像度も増します。

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約する(=文章を短くする)意識を持つだけでも、わかりやすさは上がる

次に、要約の「約」について。

これは先ほどから何度か書いていることなので割愛いたします。

具体的なヒントは『書くのがしんどい』に書かれています。

この本に書いてあることを何度も何度も真似すれば、文章力も各段に上がるはずです。

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…と、少し端折って書きましたが、「要約」について詳しく知りたい方は、こちらの記事も是非ご覧ください。

それ、本当に「要約」といえますか? - BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで

※編集後記

いかがでしたでしょうか。

個人的な感想で恐縮ですが、こんな記事を書いてみるのは勇気がいりますね(笑)

「わかりやすい文章」について書いた記事がわかりにくかったらどうしよう?…とビクビクしています。

まあ、「わかりにくい」と言われたら言われたで、また新しく「わかりにくい文章の正体」に近づくことができるかもしれません。

賛否両論、様々な意見をお寄せいただけると嬉しく思います。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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