この本で解ける疑問は?
- 止まらない離職…どうすれば止められる?
- 優秀な人材、入社したての人材、ポテンシャルが高い人材…どこから手を付ければいいの?
『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』って?
最近は「組織づくり」や「変革」に興味のアンテナが立っているこの頃です。
いつも通り本屋さんを徘徊していると、何とも変わったタイトルの本が目の中に飛び込んできました。
「…え、どうするんだろう?」と気になって、いつの間にか手に取っていました。
この本、買って正解でした。
なぜ正解だったのか?
この点をしっかり説明できればと思います。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
【組織が病んでいくメカニズム】
- いきなり処方箋に飛びつくのではなく、まずは「組織が病んでいくメカニズム」を知っておく必要がある。組織は「マイナスの感情」が蔓延することで病んでいってしまう。
- まず、マイナスの感情が発生する要因は何なのか?
結論からいうと、「社会が求めるもの」と「会社が与えるもの」の差がマイナス感情を生んでしまう。
さらに、「労働価値」が人によって異なるため、全員を満足させることはできないことを念頭に置く必要がある。全員を満足させようとすると、中途半端な施策しか打てず、結果的にマイナスの感情を増大させてしまうことになる。 - 次に、マイナスの感情が発祥するメカニズムについて。我々が職場で働くときのエネルギーは次の3つで構成されている。
①働きがい
②働きやすさ
③心身コンディション
このうち、③がグラつくと、他の2つも崩れそうになるため、注意が必要である。
なお、①が崩れると「積極的離職」を、②が崩れると「消極的離職」を、③が崩れると「離脱(心身の疲弊によって働けなくなること)」を招いてしまう。 - 以上の個人のマイナス感情が周囲に影響し、連鎖反応=伝染が起こる。
また、「働きがい」が低下し、「働きやすさ」ばかり向上すると「消極的定着=ぶら下がり」が生じてしまう。
【悩める組織を救う「ターゲティング戦略」】
- 上述のように病んでいく組織を変えるために、「ターゲティング戦略」が必要になる。
- まず、救う優先順位を決める必要がある。パフォーマンス×社歴の2軸で捉えると、従業員のセグメントが見えてくる。ターゲティングの優先順位は以下の通りとなる。
①ハイポテンシャル
②立ち上がり
③優秀
④普通
⑤ぶら下がり - 次に、どの人材セグメントのマイナス感情を解消すると、効率よく全社的にプラスの効果が伝染するかを考える。この時、最も重要な論点は「起きてはいけない離職が起きていないか?」である。
- ある程度、施策を打つ対象の当たりがついたら、心身コンディション×働きやすさ×働きがい…この3つの変数を総合的に調査したうえで、具体的な施策を考えていく。
いかがでしたでしょうか。
優先順位が高い順から救っていく戦略的な考え方や、プラスではなくマイナス感情に着目している点など、他の本にはない斬新な視点が学べます。
組織という捉えどころのない概念に「補助線」を引いてくれる良本です。
学び
並列で捉えるか順列で捉えるか
最近は「〇〇大全」と書かれている本を多く見かけるようになりました。
いわゆる「大全シリーズ」、私はあまり好きではありません。
「大全シリーズ」を書くのはもの凄く大変な労力を要すると思います。
しかし、「エッセンスは100個です!」みたいに箇条書きで書かれても、正直あまり嬉しくないものです。
100個すべて試すリソースなんて、我々は持ち合わせていないからです。
知りたいのは「100個のうち、どの施策を、どの順番でやるか」なんです。
知りたいのは「箇条書きで並列されたもの」ではなく「順列まで示されたもの」なんです。
しかし、「順列」「順番」まで示そうとすると、めちゃくちゃ頭を使います。
「順列」を示すためには、物事のメカニズムを紐解き、仮定を置きながらシミュレーションを繰り返さないといけないからです。
本当に頭のいい人にしか「順列」まで示すことはできないんですね。
その意味で、今日ご紹介した『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』は、施策の順列まで示している点で、良本と言えるでしょう。
毎日良本と出会えて幸せです。感謝