この本で解ける疑問は?
- 「何でも言ってね」と伝えても、誰も意見をしてくれないのはなぜ?
- 「心理的安全性」はどうやって作ればいいの?
『心理的安全性のつくりかた』って?
「気になったことがあれば、何でも言ってね」
おそらく、多くの上司が優しい声で、こんなことを言ってくれるかと思います。
この一言があると、一見「あ、何でも言っていいんだな。なんていい職場なんだ」と思いませんか?
しかし、この「何でも言ってね」には、ある罠が含まれている可能性があります。
次のやりとりを見て見ましょう。
あなた:「1つ課題を見つけました。弊社には〇〇が必要だと思います!」
上司:「なるほどね、じゃあ、あなたやっといて」
あなた:「わかりました(マジか。提案したらやらされるのか…もう二度と提案しねえ)」
…このパターン、よく見かけませんか?
提案したことが「やりたいこと」だったらまだしも、「やりたくないし、これ私の仕事なの?」と思えるようなことまで押し付けられたら、あなたはどう思いますか?
私だったら「もう二度と提案するもんか。"何でも言ってね"と言われても、絶対口を開くまいぞ」と思います。
はい、これが「心理的安全性が低い例」ですね。
では逆に、心理的安全性の高い場を作るためにはどうすればよいのでしょうか?
この問いに答えをくれるのが、石井 遼介氏が書かれた『心理的安全性のつくりかた』です。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
- 心理的安全性とは「組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言える状態」を意味する。
- 心理的安全性に変革をもたらすには、次の三段階がある。
①行動・スキル
一人一人が行動を取るかどうか。
また、的確なタイミング・品質の行動が取れるかどうか(スキル)
②関係性・カルチャー
組織・チームが背負った歴史に起因する、チームとしての習慣・行動パターン
③構造・環境
会社や事業・ビジネスの仕組み自体に起因する構造・環境要因(パワーバランス、組織構造、ビジネスプロセス、業態上の制約) - 上記①~③のうち、③については直接のアプローチは難しい。構造や環境要因は「前提」と捉えた上でその中で何ができるかを検討する必要がある。
①に対しては言語行動や行動分析、②に対しては言語行動や心理的柔軟性がアプローチとして有効である。 - 中でも心理的柔軟性とは、「変えられないものを受け入れ、大切なものへ向かっていき、それらをマインドフルに見分ける能力」を意味する。
- 例えば、以前、自信のある企画を提出したら、ひどいフィードバックをされたとする。
次に、「"どうせまた、傷つくことになるだろうからやめておこう"と自分は考えているな」と、自分の思考や感情を切り離して受け止める。
その後、「新しい企画に挑戦してみたい」と、自分が大切にしたい思いを言語化する。
最後に、「実際に企画書を書いて、実現したい企画書を企画会議にかけよう」と具体的な行動に移す。
このようなサイクルを回せる人が増えると、場の心理的安全性が高まる。
いかがでしたでしょうか。
他にも、本書には「心理的安全性が高まっていくメカニズム」が体系的に記されています。
加えて、最後の方は、心理的安全性を高めるための具体的なアイデア集や事例も載っています。
まさに「心理的安全性の教科書」ともいえる一冊です。
組織づくりに関心をお持ちの方には、強くオススメします。
学び
部下から報告や提案があがってこないのは、部下にやる気がないから?
「部下から提案があがってこない」
「"何でも言ってね"と伝えているのに、何も報告があがってこない」
「提案や報告がないのは、部下のやる気や当事者意識が足りないから」
このように感じている管理職の方々にモノ申したい。
「いや、部下から報告や提案があがってこないのは、あなたが心理的安全性の低い職場にしてしまっているからではないか?」と。
私は年代的に、いわゆる「部下」の人たちと話す機会が多いですが、彼ら彼女らは決してやる気がないわけではありません。
むしろ、「もっと活躍したい」と思っている方々もたくさん見かけました。
しかし一方で
「報告するだけ仕事が増えるだけだよね。もっとやりたい仕事あるのに…」
「報告しても、連絡しても、相談しても、怒られる」
…などの声も聞きます。
一方的にどっちが悪いと断じることはできませんが、「報告や提案が上がってこない」という問題には、部下と上司双方に原因があるはずです。
こちらの記事でも書きましたが、問題の裏側には、単純ではない何かしらのメカニズムがあります。
提案や報告を進んでしたくなる「心理的安全性の高い組織」を目指したいものですね。