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【要約・書評】『集中講義デジタル戦略 テクノロジーバトルのフレームワーク』根来 龍之

この本で解ける疑問は?

  • そもそも「デジタル戦略」とは何なのか?
  • イノベーションのジレンマなど、よく登場する横文字たちは、デジタル戦略とどう関係しているのか?


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『集中講義デジタル戦略 テクノロジーバトルのフレームワーク』って?

今の時代テクノロジーを語れないとダメだ。

こんな記述をあちこちで見かけます。

確かに、新聞でも毎日のように、AIやロボティクスといったキーワードが登場します。

では、これらのキーワードを一つ一つ覚えていけば、テクノロジーを語れるようになれるのでしょうか?

…なんか、ちょっと違和感がありますよね。

そんな違和感から、「では、そもそもテクノロジーを語れる状態とは、どういう状態か?」を考えてみました。

その答えの一つとして、「デジタル戦略学べば、経営に必要なテクノロジーを網羅的に把握できるのではないか」と考えました。

そうして手に取った本が、本書『集中講義デジタル戦略 テクノロジーバトルのフレームワーク』です。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • デジタル戦略論は、「レイヤー構造論」「ディスラプションの理論」「既存企業の対応戦略論」「プラットフォーム理論」「バリューイノベーション論」「エクスポネンシャル企業論」によって構成されている。

  • 「レイヤー構造論」とは、モジュール化・プラットフォーム化・ネットワーク化の3つが起点となり、産業がバリューチェーン構造からレイヤー構造へ移ろう、と主張する論である。特に重要となるモジュール化とは、誰でも部品がつくれて組み合わせられるほど、インターフェースが固定・公開されている状態を意味する。例えば、秋葉原で買ってきた部品を組み合わせてパソコンが作れるのは、パソコンの部品1つ1つのモジュール化が進んでいるからである。

  • 「ディスラプションの理論」は、いわゆるイノベーションのジレンマのこと。ただし、イノベーションのジレンマは、製品が「完全代替」される可能性しか指摘していないため、少々極端な主張である。したがって、「部分代替」の可能性も加味したものが、この「ディスラプションの理論」。
    ※一度イノベーションのジレンマを理解した後の方が、すんなり理解できます。

  • 「既存企業の対応戦略論」は、先述のディスラプションの脅威に対して、既存企業が取り得る戦略のパターンを示している。防衛的な戦略としては、1)退却(ニッチ市場へと縮小または撤退)、2)収穫(部分的デジタル対応で、できるだけ既存事業を長持ちさせる)の2点。攻撃的な戦略としては、3)創造(デジタル対応で先行するビジネスモデルを創出。既存事業とは独立)、4)破壊(自らビジネスモデル転換をはかり、デジタル事業で既存事業を代替)が取り得る。

  • 「プラットフォーム理論」は、プラットフォーム事業が1人勝ちするメカニズムを示したもの。プラットフォームとは、「顧客に価値を提供する製品群の土台になるもの」である。収益モデルの確立~製品シナジーの利用を時系列に達成していくことで、1人勝ちができる。ただし、攪乱要因(市場の急成長や政府の規制など)には注意が必要。

  • 「バリューイノベーション論」は、ブルーオーシャン論とイノベーション論の統合を図ったものである。イノベーション論の内訳は、ジョブ理論デジタルボルテックス論の2点である。

  • 「エクスポネンシャル企業論」は、指数関数的に成長していく企業の特徴を示したものである。戦略の特徴は、「代替+新需要」「収穫逓増+ネットワーク効果」「急速な拡大+事業間シナジー」を追求している点が見受けられる。組織の特徴は、「野心的目標を持つ点」「"価値"感を共有できる人材を確保している点」が挙げられる。事業展開の特徴は、必ずしも「強みを生かした参入」論ではなく、タイミング重視の参入と「後からの資源獲得」を狙っている点が確認できる。

以上です(キリッ)…と申し上げたいところですが、デジタル戦略だけあって、正直聞いたことのない単語がたくさん出てきて、わかりにくい点も多いかと思います。

ですので、上述のペライチを地図にしながら、1単語・1理論ずつ学んでいただくのがスムーズかと思います。

やはり、世の中でもあまり浸透していない理論を学ぶわけなので、最初はとっつきにくい部分もあります。

しかし、何度も読み直したり、自分の言葉で置き換え直したりすることで、徐々にデジタル戦略が理解できます。徐々に理解していくことで、視野が広がっていく感覚はたまらなく楽しいものです。

本書『集中講義デジタル戦略 テクノロジーバトルのフレームワーク』は、そういったデジタルならではの理論1つ1つを、図解や具体例を多用しながらわかりやすく解説してくれます。「集中講義」と書いてあるだけあって、初学者向けにわかりやすさが徹底されています。

デジタル戦略やテクノロジー戦略をこれ以上わかりやすく、かつ体系的にまとめたビジネス書は見たことがありません。それくらいオススメしたい一冊です。

学び

新しい理論の覚え方=具体と抽象の行来+自分で言語化

本書を読んでいて、デジタル戦略独特の理論の理解に苦戦しました。

本を読んだときは「わかった気」になれるのですが、いざ友人に語ろうとすると、どうしても躓きがち…

そんなこんなで悪戦苦闘しながら、「あ、こうやれば、新しい理論もすんなり理解できるな!」と思ったことを共有できればと。

1)具体と抽象の行来

まずは、具体論と抽象論を行ったり来たりすることから始めてみました。

例えば、イノベーションのジレンマについて。いったん抽象論を理解するために、イノベーションのジレンマの定義を見ていきます。

イノベーションのジレンマは、業界トップ企業が持続的イノベーション(顧客の意見を取り入れ、品質の改善を図っていくこと)に注力すればするほど、破壊的イノベーションを自分で起こすことが難しくなってしまう現象、を意味しています。

 

次に、具体的な事例を見ていきます。デジカメ市場に当てはめてみます。

デジカメのトップ企業たちは、デジカメの品質向上のために、どんどん顧客のフィードバックを取り入れて改善活動を進めていきます。しかし、この改善活動を進めていけばいくほど、顧客の中には、「そこまで高品質を求めていない層」が生まれてきます。

一方、スマホメーカーは、あくまで携帯電話の付随機能として、カメラを提供しています。付随機能ですので、カメラの品質はデジカメには及びません。

このスマホ市場に、デジカメのトップ企業が手を出すかというと、手は出しません。
なぜなら、1)デジカメと狙っているターゲットが違うから、2)新市場のためまだ利益率が低いから、です。

しかし、先ほどの「そこまで高品質を求めていない層」にとっては、スマホの付随機能のカメラで十分事足りてしまいますので、この層は徐々にスマホ市場に流れてきます。

以上のように、デジカメのトップ企業が品質改善を努力すればするほど、「そこまで高品質を求めていない層」が増えていき、他の市場に流れていってしまう。
こんな現象を、イノベーションのジレンマと呼びます。

この結果こそが、スマホメーカーの動きが、破壊的イノベーションと呼ばれる所以です。

2)自分で言語化

少々乱暴ですが、イノベーションのジレンマを僕はこう理解しています。

「優等生のToo muchジレンマ」

優等生は、つい「自分が勝ってきた領域」をどんどん追求してしまう。

でもいつかは「Too muchの境界線」を越える瞬間がある。

「Too muchの境界線」を越えたとき、振り向いたら誰もついてくる人がいなかった…

こんな現象だと理解しています。

 

以上のように、自分で言語化して、アウトプットしてみると

「いや、ここは違うくて、本当はこうだよ」

「この例えはわかりやすいね」

…みたいなフィードバックをいただくチャンスが巡ってきます。

フィードバックをもらって、自分の理解に磨きをかけることができるので、やってみて損はないと思います。(一時的な恥ずかしさはありますが…)

明日から取れるアクション1つ

  • 新しい理論を覚えるときは「具体と抽象の行来+自分で言語化」をやってみる


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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