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【書評】『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ハンス・ロスリング

この本で解ける疑問は?

  • 世界はぶっちゃけ悪くなっている?良くなっている?
  • どうして賢い人すら、事実を「誤解」するのか?
  • 正しく、ありのままに世界を見つけるためには?

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『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』って?

このビジネス書には、「丸善・丸の内本店」にて出会いました。

書店の入り口付近に、山積みにされている中でも、一番私の頭の中に飛び込んできたのがこの本でした。

コンサルということもあり、「ファクト」というキーワードが引っ掛かったのでしょう。

スウェーデンの著者ということで、自身のエピソードやジョーク、時にはシニカルな要素も交えながら、「ロジックとメタファーがいい具合にブレンドされた本」という印象です。

そんな魅力的な本の全容を、先に「ペライチ」で示しましょう。
図1をご覧ください。

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図1

「10の本能」や「FACTFULNESS」など、気になるキーワードが散らばっていますね。
詳しく見てみましょう。

-Why-なぜ書かれたのか?

本書の「イントロダクション」では次のように述べられています。

この本は世界の本当の姿についての本でもあり、あなたについての本でもある。あなたや、わたしが出会うほとんどの人がありのままに世界を見ることができないのはなぜだろう。どうすれば世界を正しく見られるのだろう。そんな疑問にこの本は答えてくれる。(25ページ)

つまり「事実に基づいて世界を見ることができないのはなぜか?」「どうすれば世界を正しく見つめることができるか?」の問いに答えることが本書の目的です。

これらの問いの答えを追っていくことが、すなわち、本書の全容を浮き彫りにすることにつながります。

-What-なにをすべきか?

まず「事実に基づいて世界を見ることができないのはなぜか?」について考えてみます。

そこで突然ですが、次の質問に答えてみてください。

現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A:20%

B:40%

C:60%

(9ページ)

ちなみに低所得国とは、1人あたりの1日の所得が2ドル以下の国々を指します。

 

正解はC:60%です。

いかがでしょうか?
一番正答率が高い国スウェーデンでも、正解率は11%でした。
日本は7%です。

ちなみに、3択問題ですので、チンパンジーに答えさせれば、理論的に、正解率は33%になります。
つまり、我々日本人は、チンパンジーの正解率の3分の1にも及ばないわけです。

なぜ、このようなことが起こるのか?

それは「10の本能」が、我々の認識を妨げているためです。
この「10の本能」とは、次の10個を指します。

  1. 分断本能
    物事や人々を2つのグループに分けないと気が済まない本能

  2. ネガティブ本能
    「世界はどんどん悪くなっている」という勘違い

  3. 直線本能
    視覚を頼りに、何らかの軌道を反射的に予測する本能

  4. 恐怖本能
    「身体的な危害」「拘束」「毒」に対する恐怖心

  5. 過大視本能
    数字をひとつだけ見て、「この数字はなんて大きいんだ」「なんて小さいんだ」と勘違いすること。ひとつの実例を重要視しすぎること

  6. パターン化本能
    「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み

  7. 宿命本能
    持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込み

  8. 単純化本能
    世の中のさまざまな問題にひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう傾向

  9. 犯人捜し本能
    なにか悪い事が起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなる傾向

  10. 焦り本能
    いつやるか?いまでしょ!明日じゃ遅すぎる!という勘違い

これらの本能が、我々の正しい認識を妨げている真因です。

ただ、裏を返せば、これらの「本能の抑え方」を知っておけば、世界を正しく見つめることができます。

ここでは、図2の「分断本能」の抑え方を詳しく見てみます。

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図2

-How-どのようにすべきか?

例えば、我々は何気なく、「先進国と途上国」「私たちとあの人たち」のように、2つのグループに分ける発言をすることがあります。

テレビで放送される狩猟民族の生活を見て、「あの人たち」と呼ぶことも少なくありません。

では「あの人たち」とは何を指しているのでしょうか?
本当に「私たちとあの人たち」のように、区別できるのでしょうか?
図3をご覧ください。

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図3(出典:https://www.gapminder.org/topics/fertility-child-mortality/

縦軸に「5歳まで生存する子どもの割合」、横軸に「女性ひとりあたりの子どもの数」を取っています。
左下=途上国、右下=先進国と定義してみます。
そうすると、確かに「先進国と途上国」という2つのグループに分断されています。

では図4をご覧ください。

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図4(出典:https://www.gapminder.org/topics/fertility-child-mortality/

実は図3は1965年のデータを示しています。
一方、図4は2017年のものです。

さて、「先進国と途上国」という分類はできるでしょうか?
「私たち」と「あの人たち」の違いは、何なのでしょうか?

見事に分断が無くなっていますね。
これは、他の色々なデータの分布についても、同じことがいえます。

私たちが普段使っている「私たちとあの人たち」という区分は、実は正しくないことが多いのです。

このことからも、「あ、もしかして、分断本能が働いている?」という疑問を持ち、自分で調べる習慣を持つことが大事だといえます。

 

他の9つの本能についても、あっ!と驚くデータが示されています。
冒頭のクイズの解説や、クイズの誤りを招いてる本能の正体もわかります。

この本を読む前と後とでは、冗談抜きで、世界の見え方が変わります。
これは是非、全員に手に取ってほしい一冊です。

 

学び

本ビジネス書を通して、3つの学びを得ることができました。

悪いニュースを見聞きしたら、その分良いニュースを探す習慣を持つ

本書を読んで、「自分はたくさんの誤った認識を持っていた」ことがわかりました。

ただ、だからといって、「世界銀行のデータブックを覚えよう」とか「日経新聞を隅々まで読もう」とか、そういう話では無いと思うんです。
そんなことをしても覚えきれませんし、数年後、同じ誤りをしてしまうでしょう。

そうではなく、「自分の本能に気づき、疑う習慣を持つこと」が大事です。

 

例えば、最近は「児童虐待」や「アルバイトの不適切動画」が多くメディアで取り上げられていますが、

  • 本当に、最近「出来事」として増えてきたのか?
  • 昔は殺人事件が多くて、実は「児童虐待」や「アルバイトの不適切動画」は明るみに出ていなかっただけなのでは?
  • 殺人事件が減って、世の中は多少良くなっている部分もあるのでは?

…と疑ってみます。

そこで、上記の疑問を払拭すべく、「殺人事件被害者数」の推移を見てみました。
2012年までと、少々古いですが、図5をご覧ください。

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図5(出典:https://nenji-toukei.com/n/kiji/10042

ピークの年から、4分の1以上減少していることがわかります。

ここで言いたいのは、「悪いニュースは多いけれども、同時に、世界は少しずつ良くなっている」ということです。

こうやって、「悪いニュースだけでなく、良いニュースや傾向にも目を向けること」ができるようになりたいものです。

正しく見えるものほど、疑う習慣を持つ

これも、本書で改めて実感できた学びでした。
以前の『臆病者のための億万長者入門』の記事でも触れたことなので、多くは述べませんが、やはり「直観的に正しそうな話こそがもっとも疑わしい」という意識を常に持っておくことは大事だと感じました。

現地現物を見る習慣を持つ

本書にもありましたが、データの数字だけでなく、その裏側のストーリーを知ることも大事です。

今回、それを強く再認識できました。

私は大学1年、2年生のときに、ネパールの小学校へ訪問したことがあります。

ネパールを訪れる前は、「貧困とは何か?」「私たちに何がしてあげられるか?」といった意識を抱いていました。

ところが、実際にネパールを訪れてみると、先ほどの意識が一瞬でぶち壊されました。

「日本で見たこともない、村人の笑顔」を目の当たりにしたからです。

この笑顔を見た瞬間、

  • そもそも貧困とは何か?日本人の「毎朝辛い思いをしながら通勤して、遅くに帰って寝る。でも、金はまあまあある状態(=先日の私)」の方が、見方を変えれば「心の貧困」といえないか?

  • これ以上ないくらい笑顔の村人たちに、そもそも私たちが「やってあげる」ことなんてないんじゃないか?むしろ、「やってあげる」とは、なんともおこがましい

…という感情が湧き上がりました。

 

今思い返すと、本書でいう「分断本能」や「ネガティブ本能」に支配されていた、哀れなエピソードだと、改めて振り返ることができました。

現地現物のストーリーを、ナマで見る習慣は大事です。
一方で、このエピソードを過度に意識しすぎると、今度は「過大視本能」に注意しないといけないわけですが。

明日から取れるアクション1つ

  • 悪いニュースを見たときに、その裏側にある「良い傾向」を考えて、調べてみる

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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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