この本で解ける疑問は?
- 今の時代、なぜ志が重要なのか?
- そもそも、志とは何か?
- 志を育むためには?
『志を育てる』って?
「少年よ大志を抱け」
有名な言葉ですね。
無意識に「持つべきだ」と思い込んでいましたし、
何気なく使っていた「志」。
一体何者なのでしょうか?
仮にその正体がわかったとして、誰にでも「志」は抱けるものなのでしょうか?
何となく、偉い人やすごい人専用で、自分からは程遠い存在だと思い込んでいました。
…が、実は誰にでも手が届くものらしい?
今回は、この所説ある「志」を紐解いていきます。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「はじめに」には、次のように述べられています。
現在日本では、社会の成熟化が進み、少子高齢化、経済のゼロ成長といった、厳しい状況に入っている。また、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響もあり、先行きが非常に不透明な状況が続きそうだ。
だからこそ、右肩上がりの経済の自然な成り行きの中で昇進昇格が果たされ、職責が広がり、部下の数も増えるというプロセスの中で精神的な充足感も得やすかった時代とは異なり、
「自分とは何を付加価値として世の中に還元するのか」
「何のために働くのか」
といった、自分起点の、まずは小さい志を見つけることが重要になってくると私たちは考えている。自らの心と向き合い、「志」を醸成するきっかけを得、有意義な人生を歩まれる方が一人でも増えることを目指し執筆に取り組んだ。(5ページ)
つまり「充足感に満ちた有意義な人生を自分の手で掴むために、志を醸成すること」が本書の目的といえます。
-What-なにをすべきか?
まず最初に明らかにすべきなのは、わかりそうでわからない「志」の定義です。
本書では、「志」を定義するにあたり、次の2点の整理をしています。
- 一定期間、人生をかけてコミットする目標=「小志」
- 一生涯を通じて達成しようとするもの=「大志」(13ページ)
読者の中には、後者の「大志」=「志」と捉えている人も多いのではないでしょうか。
同時に、誰もが「大志」を抱きたいはず。
では、「大志」に対する自覚は「いつ」生まれるのか?
筆者は次のように説明しています。
(1)小志を積み重ねていく中で、徐々に自分自身の大志に気づく。
(2)はじめに「大志」ありきだが、小志を積み重ねていくことで、その大志の具現化を進めていく。
そして、実際には、(1)であっても(2)であっても、「小志の積み重ねの中で大志を形作っていく」というプロセスに本質的な違いはない。(15ページ)
なるほど。いずれにせよ、動き出しは、まず「小志」に向かう必要があると。
だからこそ、本書では「小志」の方を、主に「志」として扱っています。
-How-どのようにすべきか?
では、「志」はどうやって形作ればよいのでしょうか?
本書をもとに、私の理解を示すと、図1のように整理できました。
志のサイクルに影響を与える要素を理解する
志を醸成するサイクルの説明に入る前に、まずは志に影響を与える要素について説明します。
この「影響を与える要素」こそが、「志」を醸成するにあたり、重要なインプットとなるからです。
我々が普段体験しているような「実体験」や「仮想体験」が、志を醸成するにあたって、次の役割を果たしているそうです。
- 「志」に踏み出すきっかけを与える役割
- 「志」を実現する自信やエネルギーになる役割
- 「志」のベースとなる価値観を育む役割
したがって、日常や仕事上の「実体験」や「仮想体験」を見過ごすことなく、丁寧に意味づけして、確実に「志」のインプットに変換していくことが求められます。
志が醸成されるサイクル
上述のインプットを材料に、志はどのように醸成されるのでしょうか?
本書では、次のように述べられています。
あるきっかけで目標を持つ
人生で最初の目標を設定する、または親などに設定される。達成への取り組み
新たに見出した目標の達成に向けて、実行を進めていく段階。取り組みの終焉
目標の達成に限らず、本人の心が折れたり、心変わりしたり、他の要因で終了させられたりなど、目標に到達できない場合も含めて、その取り組みがその人の中で終わってしまう段階。客観視
自分が没入し取り組んでいた目標の位置づけや目標を取り巻く環境を、一定の距離をとって客観的に見つめ直す段階。自問自答
自分自身にとって、その目標が何を意味するのか、自分が本当にしたかったことは何なのかを問い、答えを出す段階。新たな目標の設定
客観視と自問自答のプロセスを経つつ、自身の価値観やスキル、実現可能性、リスクなどに鑑み、新たな目標(志)を見出していく段階。(22ページ)
このサイクルは「一周すればゴール」ではなく、「螺旋階段のように際限なく続いている道」だと筆者は表現しています。
志の成長の方向性
ただ、「成長」だと表現するんだったら、「どこに向かっているか?」も明らかにしなければなりません。
「志」の成長の方向性は、次の2軸で定義されます。
- 自律性
- 社会性
この両軸を高めて行くことによって、自らの志を、「自分が決めた、みんなの志」へと昇華させることができます。
以上のように、雲を掴むような存在である「志」が、ここまで論理的に体系化されていることに、驚きを隠せません。
そもそも「志の醸成」に、「再現性」を持たせようとする姿勢自体、類を見ない、非常に価値あるものではないでしょうか?
何度も読み返すことで、味が増していく本だと思いますので、手元に置いておこうと思います。
最後に本書の「ペライチ」を図2に示しておきます。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。
筋のよい「小志」を設定するには、自分の価値観を明らかにする必要がある
「小志」といえど、「一定期間、人生をかけてコミットする目標」なわけですから、取り組んで苦痛に感じるような志を設定するわけにはいけない。
「気づいたら、時間を忘れていた」といえるものを設定しないといけない。
そのためにも、自分の「原動力となる価値観」を特定する必要がある。
…と、こんな帰結に至りました。
では、「原動力となる価値観」はどうやって明らかにするのか?
これには、誰もが、それぞれ持論をお持ちでしょう。
ちなみに私は、「原体験=思春期までの衝撃的な経験」を特定することが、一番の近道だと考えます。
よっぽど親しい人にしか話したくないような、思春期までの「とんでもなく辛かった思い出」がトリガーとなって、今の価値観の大部分を構成しているのでは?
…これが私の仮説です。
トラウマになっている「強烈な過去」は、自然と我々の行動を「無意識」のうちに制御しているのではないでしょうか?
「あんな経験はもう二度としたくない」
「だからこそ、こうしないと」
…このような無意識が、いつでも自分の原動力として働き続けているんだと思います。
こういった「原動力」を特定しておくと、「概ね筋のよい小志」を定義できそうです。
明日から取れるアクション1つ
- 客観視のタイミングを意図的に作る仕組みを考えてみる