この本で解ける疑問は?
- 平成終了後も日本は衰退する?それとも発展する?
- 人口減少、超高齢社会、社会保険の破綻…どう向き合えば?
- ところで「ポリテック」って?
『日本進化論』って?
この本を手に取ったのは、「何となく日本社会が悪いって思っているけど、本当にそうなの?」という疑問を確かめたかったからです。
というのも、以前、『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の記事でもご紹介した通り、私たちは「世界は悪くなっているという思い込み」をしがちです。
ひょっとしたら、普段よく知っているつもりの日本についても、「思い込み」があるのでは?
…と思い、本ビジネス書を手に取ってみました。
あと単純に、落合陽一氏の番組でのコメントが好きだったことも、本書を読んでみたかった理由の一つです。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「はじめに」には、次のように述べられています。
本書は、2018年7月に衆議院議員の小泉進次郎さんと僕(落合陽一)の共同企画で開催された、「平成最後の夏期講習(社会科編)ー人生100年時代の社会保障とPoliTech」(以下、「平成最後の夏期講習」)というニコニコ動画の生放送番組と、その現場で展開された議論のまとめがきっかけになっています。番組での課題設定や参加者の皆様の議論を下敷きに、僕が改めて考えたこと、平成の次の時代を生きる皆さんに伝えたいと思ったことを書き綴りました。(6ページ)
つまり「平成の次の時代を生きる我々にとっての指針を示すこと」が本書の目的と読み取れます。
そのために、本書の帯にも記載されていた「縮小する社会で、我々はどう生き残るか?」という論点を解かねばなりません。
-What-なにをすべきか?
次の時代の指針を示すにあたり、本書は「PokiTech(ポリテック)」というキーワードを提示しています。
この「PokiTech(ポリテック)」について、次のように説明されています。
ポリテックは、政治(Politics)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、「テクノロジーによって何が可能になるか」といった観点を、政治の議論の中に取り入れていくことです。でも決して、「何にでもテクノロジーを取り入れればいい」というわけではありません。政策が決められる過程で出てくる政治・経済といったあらゆる論点の中に、「テクノロジーの観点から見るとどうなのか?」といった視点を新たに加えたいのです。(20ページ)
確かに、政治の議論にテクノロジーの観点を取り入れていくことは、今や必須事項です。
「テクノロジーはあくまで手段であって、目的ではない」点には要注意です。
さて、ここで「じゃあ、早速ポリテックやろうよ」と短絡的に飛びついてはいけません。
ちゃんと立ち止まって、「数ある社会的課題の解決に、テクノロジーがなぜ必要なのか?」を考える必要があります。
事実、本書も序章にて、「テクノロジーと日本の課題を探る」というテーマで、テクノロジーの必要性について論じています。
この論点に入るタイミングで、本書の「ペライチ」を示します。
図1をご覧ください。
図1の赤枠の部分をご覧ください。
テクノロジーは、社会的課題の解決の方向性である「限界費用ゼロ化」を実現に寄与する。これが、テクノロジーが必要な理由のようです。
この「限界費用」とは、財やサービスをある生産量から一単位多く生産するときに発生するコストを指します。
テクノロジーを使うと、この「限界費用」が限りなくゼロになるそうです。
例えば、限界費用ゼロ化の鍵の1つである「事業のプラットフォーム化」について、筆者は次の例を挙げています。
さらに、ユーチューブやインスタグラムといったプラットフォームは、ユーザーが投稿するコンテンツによって巨大なエンターテインメントサービスとなっています。企業は場の維持・管理をするだけで、コンテンツ自体は何も作り出しません。これはプラットフォームとスマートフォンの普及によって、限界費用のゼロ化が極限まで推し進められた事例といえるでしょう。(47ページ)
なるほど、段々とイメージも掴めてきました。
では、具体的に、このようなテクノロジーを、社会的課題の解決に繋げていけばよいのでしょうか?
-How-どのようにすべきか?
今回は、個人的に関心のある「子ども」にフォーカスしてみます。
本書ではまず、"若手層の「子育てのしづらさ」はどこから生まれるのか"というテーマについて、図3を用いながら論じています。
筆者は特に、子育てする若年層が追い詰められる要因として、高度経済成長に伴う「核家族化」に着目しています。
この「核家族化による、子育てのしづらさ」に対して、筆者は次の2つの打ち手を提示しています。
- 「手が空いている人材の子どもの面倒を見てもらう仕組み」の構築
- 「隣人たちと共同で子育てに携われる地域コミュニティ」の再構築
まず1について。
これは、ベビーシッターのマッチングサービス「キッズライン」が具体例として挙げられています。
「信頼」がきちんと口コミによって可視化されているので、安心して子育てを依頼できますね。
次に2について。
これについて、筆者は次のように発想の転換を促しています。
これまでは「勤労世代が高齢者を支えなければならない」と言われてきましたが、今後はむしろ「高齢者が勤労世代を支える」という発想が求められるようになるかもしれません。(136ページ)
個人的に、この「高齢者が勤労世代を支える」が一番刺さったキーフレーズでした。
特に子育てが困難な「1歳~6歳まで」の未就学児の育児のコスト軽減に向けた、高齢者と勤労世代が協働できる仕組みづくりが喫緊の課題ですね。
「最近の若者は」とか「日本を食いつぶす老人どもめ」などといがみ合うことなく、勤労世代と高齢者それぞれにとって、受益と負担が乖離しないような仕組みを議論していきたいものです。
学び
本ビジネス書?を通して、次の学びを得ました。
危機の「危」と「機」両面に着目するクセをつける
これは『自分のことだけ考える』の記事でも取り上げましたが、危機の「機」に着目し、活かすクセをつけたいものですね。
『日本進化論』の帯にも、「人口減少社会は、史上稀なるチャンスだ!」と述べられています。
確かに、人口減少という課題に直面したからこそ、「少ない人数でやりくりするために、テクノロジーの実装を優先的に進めよう」というムーブメントが強くなり、結果的に世の中が急速に便利になっていくかもしれません。
このように、一見どうしようもない「人口減少」などの課題について、「どういった機会があるか?という視点で眺めるクセ」、つまり「思考を停めないクセ」が必要だなと改めて認識できました。
明日から取れるアクション1つ
- 「高齢化」によってもたらされる「機会」を洗い出してみる