この本で解ける疑問は?
- 思考力のさらに上流にある力とは?
- 見えないものを観る「知覚力」とは何か?
- 知覚力を磨くにはどうすればよいか?
『知覚力を磨く』って?
さて、突然ですが、次の画像は人間の胸部をCTスキャンしたものです。
これを見て「異常」を発見してみてください。
「異常を見つけてくださいと言われても…私、専門家じゃないしな」と思われるかもしれません。
しかしこの画像は、医師としてのトレーニングを受けていなくとも、異常を発見することができます。
正解は、右上にいる「ゴリラ」です。
実は、24名の放射線医師のうち20名が、このゴリラに気づけなかったそうです。
それほどに、我々は「観ているつもりで見えていない」ことがわかります。
…おそろしいですよね。
おそろしいと思われた方は、この『知覚力を磨く』をオススメします。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
- 知覚力とは「眼の前の情報を受け入れ、独自の解釈を加える能力のこと」である。この能力は、知的生産の最上流に位置付けられる。
- この能力を磨くためには4つの方法がある。
①「知識」を磨く
自分が関わっている仕事と”ゆるく”関連する分野を意識して学ぶ
②「他者」の知覚を取り入れる
自分が持っていない知覚を、選り好みせずに「読書」で吸収する
③知覚の「根拠」を問う
「なぜその解釈に至ったか?」「なぜその事実が正しいと言えるのか?」などを自問自答する
④見る/観る方法を変える
自分の眼が「何を/どのように見るのか」をコントロールする。この④は、半自動的に行われるため、最も自力でコントロールすることが難しい。その前提のもと、④を磨く視点として「何を見るか?」「どう見るか?」を考える必要がある。 - 「何を見るか?」については、「絵画」を観るべきである。その理由は3つある。
①バイアスが介在しづらい
絵画には非日常が描かれているため、バイアスが介在しにくい
②フレームで区切られている
絵画はアーティストが世界の一部を鑑賞者のために切り取ってくれる
③全体を見渡す力がつく
個別の要素だけでなく、要素が置かれた文脈や周りとの関係性にも目を向ける必要がある - 次に「どう見るか?」については、次の4ステップを踏むとよい。
①全体図を観る
②組織的に観る
③周縁部を観る
④関連づけて観る
いかがでしたでしょうか。
『知覚力を磨く』の骨格はお示しできたかと思います。
しかし、この本の一番見どころは、具体例として引用されている「絵画や偉人たちの名言と、それらに対する筆者の解釈」です。
絵画や偉人たちの言葉を、筆者がどう知覚(受け止め、解釈しているか)しているか?
筆者の知覚力そのものを表現しているのが、この『知覚力を磨く』という本です。
知覚力は何たるかを知りたければ、本書を読みながら、筆者が知覚したプロセスを辿ってみるのが一番の近道です。
いつかは筆者のように、「え、そんな解釈の仕方があるのか…」と誰もが驚く知覚力を手に入れたいものです。
本当にオススメの一冊です。
学び
観察とは何なのか?
『知覚力を磨く』を読んでいて、個人的に一番印象的だったのが「シャーロックホームズ」の引用です。
ホームズ
「君は見てはいるけれど、観察していないね。その違いは明らかだ。たとえば、君は玄関からこの部屋につながる階段を頻繁に見ているよね」ワトスン
「しょっちゅうね」ホームズ
「どのくらい頻繁に?」ワトスン
「えーと、何百回でしょうね」ホームズ
「では、何段あるのかな?」ワトスン
「何段かだって?わかりませんよ」ホームズ
「まったくそういうことなんだ!君は観察していない。ただ見ていることは見ているけどね。そこが私のポイントだ。私は17段あることを知っている。なぜなら私は見ているし、観察することも両方しているからね」p158
階段を観察して「17段あること」がわかれば、
「じゃあ、17段を昇るのにどれくらいの時間を要するだろうか?」
「階段を昇るリズムから察するに、今昇ってきている人は誰だろうか?」
…などの推察も可能になります。
観察とは「観て察する」と書きます。
つまり「何らかの示唆を出せるレベルまで、物事を観ること」なのかもしれません。
…と、こんな風に、本書の1ページだけ読むだけでも、このように深い学びがあります。
それくらい、この『知覚力を磨く』は読みごたえのある本でした。
いつも左脳寄りの本を読んでいたので、余計に心に突き刺さりました。
良書との出会いに感謝ですね。