この本で解ける疑問は?
- なぜ、劣化したオッサン社会が形成されたのか?
- なぜ、オッサンは劣化するのか?
- なぜ、忖度が繰り返されるのか?
- オッサン社会の処方箋は?
『劣化するオッサン社会の処方箋』って?
この本を手に取った動機は、「会議でふんぞり返っている、無能なオッサンが、大嫌いだから」です。
ロクにアドバイスもせずに、「ここ、ダメじゃね?」とダメ出ししかしてこない。
かといって、「じゃあ、あなたのお考えをお聞かせ願えますか?」と遜ってお伺いを立てても、「うーん(わかんね)、てか自分で考えなよ」と返ってくる。
そんな「提案なき批判」を偉そうにしてくる人が、私は大嫌いです。
そんな人を、年上だろうが同年代だろうが、男女問わず「無能なおっさん」と呼ぶことにしています。(心の中で、ですが)
ただ、文句ばかり言っているだけでは、自分も「無能なおっさん」になりかねない。
そこで、「無能なおっさんを、駆逐する方法はないか?」と思っていたとき、書店でふと目に飛び込んで来たのが、本書でした。
「さよなら、おっさん」という想いを込めて、記事にしてみます。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書には「はじめに」にあたる記述がありません。
ですので、本書が書かれた目的を、いつもとは異なるアプローチで探してみます。
目次に着目してみましょう。
第1章:なぜオッサンは劣化したのか-失われた「大きなモノガタリ」-
第2章:劣化は必然
第3章:中堅・若手がオッサンに対抗する武器
第4章:実は優しくない日本企業-人生100年時代を幸福に生きるために-
第5章:なぜ年長者は敬われるようになったのか
第6章:サーバントリーダーシップ-「支配型リーダーシップ」からの脱却-
第7章:学び続ける上で重要なのは「経験の質」
第8章:セカンドステージでの挑戦と失敗の重要性
最終章:本書のまとめ
(3ページ)
第1章のタイトルからは、オッサンの劣化に対する危機意識が読み取れます。
また、第3章のタイトルからは、そうした劣化したオッサンへの対抗策が述べられていることがわかります。
劣化したオッサンに対抗するスタンスが見受けられます。
ただ一方で、第2章や第4章のタイトルからは、「オッサンの劣化には、同情の余地もある」「そんなオッサンにとっても、突破口が存在する」と、オッサンに寄り添ったスタンスも見受けられます。
以上より、「オッサンと若者双方に寄り添った格好で、オッサン社会への処方箋を提言すること」が本書の目的といえます。
-What-なにをすべきか?
本書でいう「オッサン」って?
本書は、「オッサンの定義」からスタートします。
オッサンとは、次の人物像に当てはまる人を指します。
- 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
- 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
- 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
- よそ者や異質なものに不寛容で、排他的(10ページ)
決して「中高年の男性」を指しているワードではない、という点にご注意ください。
劣化するオッサン社会が、なぜ形成されたか?
これは、本書のメインメッセージを理解する上で、避けては通れない論点です。
この問いに対する考察の全体像を図1に示します。
「劣化するオッサン社会が、なぜ形成されたか?」の答えは、ずばり、次の2点。
- オッサンが「個人」として劣化しているから
- 組織の劣化が不可逆的に進むから
第一に、オッサンが「個人」として劣化したのには、同情の余地がある「時代の流れ」があります。
20代で「会社に乗っかっていれば、将来が保証される」という希望を持って、入社してのにも関わらず、バブル崩壊で、その約束は反故にされてしまった。
そんな「誰に怒ってよいかわからない、憤り」を抱えてきて生きてきたわけです。
また、ちょうど「大学のレジャーランド化」と呼ばれていた、一番ゆるい時期に大学生活を送ってきた。
おかげで、本人たちには悪気は無いものの、「教養」も「実学」もロクに学んでこなかったゆえ、経営の構成要素である「アート」も「サイエンス」も弱い。
…「そんなの、知ったこっちゃ」という気持ちは封印して、こうしたオッサンたちの価値形成の背景を知っておくことは重要だと思います。
第二に、組織の劣化が不可逆的に進むのには、さらに3つの理由がある。
- やがて二流のリーダーが引退し、三流がリーダーとなる
- 劣化したオッサンにより劣化したオッサンが拡大再生産される
- 劣化したオッサンの下で忖度が繰り返される
…さらにこれら3つの背景にある要因を図1のように深堀っていくと、いずれも、手の付けようが無いように思えてきます。
しかし、この3つを引き起こしている要因の中に「手を付ける余地はある」と筆者は言っています。
年長者の価値を毀損する3つの変化
それは、年長者の価値を毀損する3つの変化が起きているからです。
図2をご覧ください。
先述の「組織の劣化が不可逆的に進む」原因を深堀ると、「年長者を尊重すべきという幻想」という要因に突き当たります。
しかし、この幻想から目を覚ますきっかけとなる変化が起きている。
それが、次の3つです。
-
社会変化のスピード
→向き合う問題が、若者にとっても年長者にとっても、新しいものになっている -
情報の普遍化
→かつては年長者から教えてもらうしかなかった知識が、今ではいつでもどこでも手に入る -
寿命の増進
→かつては年長者の数が少なく、年長者というだけで希少性があったが、今では年長者で溢れ返り、年長者の希少性が薄れた
こうした変化が我々を取り巻いている今こそ、「劣化するオッサン社会の処方箋とは?」という論点を考えるべき、ということでしょう。
その処方箋の方向性は、次の2点。
- 年長者は尊重すべきという幻想を捨てる
- 年長者にも、今までと別の方法で、組織や社会に貢献してもらう
それぞれ、詳しく見てみます。
-How-どのようにすべきか?
先ほどの処方箋の方向性を詳細化していきます。図3をご覧ください。
色々とキーワードが見受けられますね。
ここでは、パッと見てよくわからない「オピニオンとエグジットを活用してオッサンに圧力をかける」を見ていきます。
オピニオンとは、おかしいと思うことについてはおかしいと意見すること、を指します。
エグジットとは、権力者の影響下から脱出することをいいます。
この2点については、筆者は次のような例を用いて、説明しています。
商品を購入して不満があれば、クレームという形でオピニオンを出し、それでもあらたまらなければ買うの止める。取引関係を中止するという形でエグジットをする。
(中略)
明治維新の際も、太平洋戦争終戦の際も、中堅以下の人々がこのオピニオンとエグジットという武器を使い、既存の権力構造をゲリラ的に攻撃しました。
脱藩した上で説得によって同志のネットワークを構築し、船中八策をまとめた坂本龍馬などは、このオピニオンとエグジットという武器を最大限に用いた人物と言えます。(57ページ)
いかがでしたでしょうか?
最後に、お待たせしました。(待っていない?)
以上の記述を踏まえた「ペライチ」を図4に示しておきます。
山口 周氏の本は、どれも「コンサルとしてのスキルや経験」と「哲学のフレームワーク」とが掛け合わさった機知に富んだ示唆で溢れています。
この本も、多分に漏れず、れっきとした良書ですので、是非読んでみてください。
新書ですので、安く、早く読める点もおすすめです。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。
大企業でイノベーションが起きない理由は劣化したオッサンのせい!?
まず、図5をご覧ください。これは、「劣化するオッサンが社会が、なぜ形成されたか?」の答えを一部切り取ったものです。
次に、図6をご覧ください。
覚えていますか?
実はこれ、『天才を殺す凡人』の記事の「ペライチ」を切り取ったものです。
ここで、図5と図6を並べてみましょう。図7をご覧ください。
一流=天才、二流=秀才、三流=凡才と置き換えて、両方の書を読んでみると、実に共通点が多いです。
例えば、図7でもオレンジの四角や青の四角の部分は、似通っていますね。
さらに「凡才=三流=劣化したオッサン」と置き換えるとどうでしょう?
「劣化したオッサンの存在こそが、大企業でイノベーションが起きない理由」という論を組み立てることも難しくないでしょう。
明日から取れるアクション1つ
- 毎日1回以上、勇気を出して「オピニオン」してみる