この本で解ける疑問は?
- 毎日の会議時間を半分に短縮させるためには、どうすればよいか?
- 日本トップ企業「トヨタ」秘伝の会議術とは?
『トヨタの会議は30分』とは
こんにちは。
毎年300冊以上読んでいるビジネス書オタクのビズペラです。
以前はコンサル務めだったこともあって、会議・ファシリテーション術の本をたくさん読んできましたが…
またしても、とんでもない本と出会ってしまいました。
それが、今回ご紹介する『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』です。
まず、本書を読むと、なにが手に入るのか?
一言で述べると、「普段の会議時間を半分にするためのスキルとマインド」が、たった数時間で手に入ってしまいます。
それもそのはず。
筆者のプロフィールを見てみると「トヨタ→外資系コンサル→戦略コンサルとして独立」という経歴。
トヨタ×コンサル
脳みその筋肉がバッキバキに鍛えられているんでしょうね。
だからこそ、会議というレースを凄まじいスピードで走り切る方法論を書けるのでしょう。
では、そんな本書の魅力を2つ紹介できればと思います。
- 日本最強企業の暗黙知が見事に体系化されている
- 枝葉のハウツーではなく、根っこのコツを教えてくれる
魅力①日本最強企業の暗黙知が見事に体系化されている
論より証拠。
まずは、本書の構造を見てみましょう。
会議の生産性を上げるためには、どうすればよいか?
この問いに答えるための要素は、「個人」と「組織」の2つに分けることができます。
特に、本書は「個人」にフォーカスをして、会議を爆速で仕切るために必要な「スキルセット」と「マインドセット」を教えてくれます。
もう少し具体的に書くと、以下のエッセンスが記されています。
■スキルセット
- 極限まで無駄を減らす「時短会議術」
- 確実に相手を仕留める「コミュニケーション術」
- 良好な人間関係を築く方法
■マインドセット
- トヨタ魂の根幹「本質思考」
- スピリットをつなぐ「トヨタの教育」
- 人間力を崇上げする「配慮」のつくり方
トヨタでは、上記で述べた心構えや技術が「暗黙知」レベルで備わっているそうなんです。
例えば、
- 問題の根本原因を知るために、なぜ?を5回考える
- 会議が終わるまでに「次に何を話し合うか」「次の会議までに各人で何をするのか」を必ず決める
こういったことを1人ひとりの社員が「息を吸う」かのごとく実践しているわけですね。
日本最強企業「トヨタ」がなぜ強いのか?
その秘密が垣間見えた気がします。
魅力②枝葉のハウツーではなく、根っこのコツを教えてくれる
会議やファシリテーションの本を読むと、便利なハウツーをたくさん紹介してくれる本があります。
「オンライン会議のツールは〇〇を使いましょう」
「XXについて議論するときは、こんなフレームワークを使いましょう」
こんな具合に、明日から使えるハウツーを20個30個、多いときだと100個くらい教えてくれる「〇〇大全」的な本です。
一方で、本書はというと。
目次を見てみると、紹介されているテクニックが意外と少ないんですね。
「え、これだけマスターすればいいの?」とビックリされる方もいらっしゃるかもしれません。
というのもこの本、枝葉のハウツー100個などではなく、絞りに絞り込んだコツ10個が記されています。
これ、簡単なようで、実はめちゃくちゃ難しいんです。
100個のハウツーから、10個のコツに絞り込むためには、かなりの思考力が求められるからです。
この「ハウツーとコツの話」は以下の記事に詳しく書いていますので、よろしければ後ほどご覧ください。
では、本書で語られているコツとは何なのか?
例えば、
- 相手の話に集中するために、会議ではメモを取らない。本当に興味がある話であれば、メモを取らなくても覚えられる
- 会議の参加者の顔を見ながら、「いきなり本題に入ってよいか」を5秒で判断する
- 相手に何かを伝えるときは、結論からではなく「何についての話か=テーマ」を先に宣言する
…など、会議形式がオンラインでもオフラインでも使えて、かつ効果が絶大なコツを絞って教えてくれます。
そして、これらのコツ1つひとつに対して「なぜ、そうする必要があるのか」が徹底的に解説されています。
HowよりもWhyの説明が長く、その辺のハウツー本とは言葉の重みが違う。
そんな素晴らしい本でした。
所感
ここまで紹介してきたように、『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』からは、会議を回す上で押さえてくべき本質的なコツを学びました。
そこに加えて、2つの気づきを得たので、順番に説明します。
- 「会議ではメモを取らない」の本当の意味
- 会議の生産性=個の力の大きさ×組織デザインのシンプルさ
「会議ではメモを取らない」の本当の意味
本書では「会議ではメモを取らない」という方法が紹介されていました。
これは「自分自身の記録用のメモは、取ってもあまり意味がない」ことを意味しています。
なぜならば、
- メモを取らないほうが、相手の話や表情に集中できるから
- 本当に興味がある話であれば、メモを取らなくても記憶できるから
これはその通りだと思います。
仮にメモを取るとしても、会議の後に「振り返り用」に数行程度書いておけば十分です。
一方で、「議論を可視化し、アクションに繋げるメモ」は取るべきです。
特にオンライン会議であれば、会議のメモを画面共有しながらリアルタイムで書きこんでいくほうが、認識のズレが起きにくくなります。
「会議ではメモを取らない」
その本当の意味は、
- 自分のためだけであれば、メモは会議中に取らないほうがよい
- 周りを動かすためであれば、メモは積極的に取った方がよい
こんなことを示していたんだと考えます。
この「周りを動かすためのメモ」の取り方は、以下の記事にもまとめてあります。
前職の外資系コンサル時代に叩き込まれた議事録スキルを紹介していますので、よろしければご覧ください。
会議の生産性=個の力の大きさ×組織デザインのわかりやすさ
もう1つの気づきは、会議の生産性を上げる変数についてです。
『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』は、主に「個の力」にフォーカスして書かれていました。
確かに、個の力を底上げできれば、会議の時間は見違えるほど改善されます。
それは、間違いありません。
しかし、個の力を高めるだけではどうしようもない問題もあります。
以前わたしが、全国各地に拠点を展開しているクライアント向けに、営業数値の見える化・標準化を行うプロジェクトをリードしていたときの話です。
ある程度、ビジネススキル全般に自信がついてきて、クライアントの方々とも信頼関係が構築できてきた時期でした。
ほとんどの会議は、自分1人でファシリテートして、自信が高まってきていたタイミングだったと思います。
議論のテーマは「とある営業指標の定義を、全国で統一する」といったものでした。
早速、クライアントの営業部門のトップと話をスタートさせました。
---A部長との会議---
私:「この営業指標の定義はXXに揃えた方がよいかと思いますが、いかがでしょうか?」
A部長:「うーん。いいと思うけど、現場の声も反映させたい。東京のB課長と決めてきてもらっていいかな」
私:「承知しました。B課長と決めますね」
---B課長との会議---
私:「指標の定義はXXでいかがでしょうか?」
B課長:「うん、いいと思うよ。ただ念のため、大阪のCさんにも話しておいた方がいいかもね」
私:「なるほど。ちなみにこの件の最終意思決定者はA部長だと思うのですが、それでもCさんと話してほいた方がいいですか?」
B課長:「うーん。たぶんA部長は決め切れないんじゃないかな」
私:「では、どうやって意思決定まで持っていけばよいですか?」
B課長:「いつもは、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡それぞれの営業課長と合議制で議論しているんだよね。だから、全拠点の課長を集めて会議したほうがいいな」
私:「1ヶ月先まで予定が合いませんね…」
B課長:「ああ、そういうときは、2回に分けて会議を開くようにしているよ」
私:「では、同じ議題で、2回会議をアレンジしますね」
…いかがでしょうか。
人によってはピンとくる事例だったのではないでしょうか。
この事例のように、いかに個の力が備わっていようとも、「組織の権限や意思決定フローが適切にデザインされていないとき」は、会議の時間を短くするのは至難の業です。
もはや「会議力」だけで解決できる範疇を越えてしまっていますよね。
実は、ミーティングの時間が長くなってしまう問題の構造を図示すると、以下のようになっています。
会議力だけでは解決できない要因がたくさんあるわけです。
本当に会議を30分以内で、しかも1発勝負で決め切るようになるためには、
個の力×組織デザイン
この両輪で考えていく必要があります。
今回ご紹介した『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』では、個の力の高め方について学ぶことができました。
次の学習テーマは「会議が30分以内に終わる組織の作り方」だということもわかりました。
この気づきを与えてくれた本書には、感謝しかありませんね。
読み応えのある本ですので、ぜひ手に取ってみてもらえると、嬉しく思います。