この本で解ける疑問は?
- 国家を無くすとはどういうことか?
- なぜ、国家は必要ないのか?
- どのように、国家を無くすか?
『もう国家はいらない』って?
書店で新書コーナーを眺めていたときに、ピピッときて手に取ったのがこの本でした。
というのも、「規制緩和が進まない国は活力を失う」という持論を持つ教授のゼミで学んでいた思い出が蘇ったからです。
どうでもいいですが、私は、規制破壊論者が好きです。
「逆境や反対を物ともせず、ひたすら意志を貫き通す」、そんな姿勢が共通項として見出せるからです。
どうしてかというと、規制緩和を推奨する人は得てして、毛嫌いされやすいからです。
その原因は、既得権益の存在です。
規制を緩和すると、既得権が脅かされる。
特に、昔から護送船団方式で保護された業界や、いまだに半官半民体制が残っている業界なんかは、そういう傾向が強い。
公益を見据え、既得権に真っ向から立ち向かう人が、規制破壊論者には多い。
なので、規制破壊論者には、私も賛成のスタンスを取っています。
…長々と関係ない話をしましたが、私が大好きな規制破壊論者臭がプンプンする本と出会うことができましたので、是非紹介させてください。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「プロローグ」にて、田原総一朗氏は次のように述べています。
仕事で会う若い企業家たちや研究者たちは皆アイディアを持ち、古いものにこだわらずに新しい流れをつくりだそうとしている。彼らの姿を見ていると、世の中に常に変革するきざしがあることに気づき、わくわくする。
しかし、その変革にはリスクがつきものでもある。
(中略)
まだ起きていない恐怖に怯えるよりも、現実を冷静に見据え、リスク回避を吟味することが問われていると思う。そのためには、新しい社会の流れを知り、新しい考え方を知る必要があるだろう。(2ページ)
また、「エピローグ」でも、次のように述べています。
堀江貴文がライブドアの社長として活動していたときから、僕は、日本で他とかけ離れた発想力と野心を持っているのは、堀江貴文とソフトバンクの孫正義だと考え、機会があるごとに、そのことを言ってきた。
その後、堀江貴文は検索に逮捕され、2年6ヵ月の実刑をくらって、長野の刑務所にたたきこまれた。そのために世の中で、堀江は「悪人」扱いされた。だが、僕の堀江評価はいささかも変わらず、長野の刑務所への堀江を見舞いに行った。(158ページ)
以上の文章からも、田原氏の「リスクを恐れずに果敢に挑戦する者こそが、日本を変革する。その可能性を1mmもブレずに信じ抜く姿」が読み取れます。
つまり、
- 挑戦する者の言葉を乗せて、希望に満ちた国家の未来図を伝えること
- この未来図に可能性を感じ、新たに挑戦する人を1人でも増やすこと
…この2点が、本書の目的だといえます。
-What-なにをすべきか?
ここで、本書の論旨を掴むためにも、以下の3つの論点について、追っていきましょう。
- 国家を無くすとはどういうことか?
- なぜ、国家は必要ないのか?
- どのように、国家を無くすか?
この3つの論点に答える形で、「ペライチ」を整理しました。
図1をご覧ください。
国家を無くすとはどういうことか?
本書によると「国家が担っている機能を、民営化すること」を意味します。
つまり、国家が担っている機能を無くすわけではなく、その運営主体を官から民へ移すということです。
なぜ、国家は必要ないのか?
ざっくり整理すると、次の3点に集約されます。
- 政治は社会を変えられない
- 国家が「担わないといけない」事業なんてほとんどない
- テクノロジーの進歩が国境をなくし、世界を変える重要な役割を果たす
詳しい説明は本書に譲りますが、ここでは個人的に印象的だった点をご紹介します。
1について、堀江氏は次のように述べています。
民営化に反対するのは、既得権益を持っている人たちですよ。彼らは今の日本のシステムに利権があるから、壊されたらとんでもなかったんだ。そんなことだから、日本は全然よくなっていかないんですよ。
(中略)
結局、解体とか再生とかいっても、同じシステムの上に立っていれば、変えることはできないんです。なぜかというと、中央集権的なしくみには管理する人間がいて、そこに利権が発生するからなんです。(36ページ)
つまり、政治というシステムの上に乗っている以上、政治を通して社会を変革することはできない、ということです。
-How-どのようにすべきか?
どのように、国家を無くすか?
次の論点に移ります。
ここでも、図2から1つ取り上げて、紹介したいと思います。
ブロックチェーンについてです。
このブロックチェーンについて、本書は「第5章:ビットコインで世の中のしくみが変わる?」の1章丸々使って説明しています。
ブロックチェーンとは、「お金のやり取りを記録した取引台帳」と捉えてもらって大丈夫です。
詳細は、下記のような解説サイトや書籍に譲りますが、ブロックチェーンによって、取引結果を「利用者間のみんな」で共有して「見張り合う」ことができます。
さて、ブロックチェーンと聞くと、誰もが「仮想通貨」を思い浮かべるかと思います。
ここで、重要な論点として、「誰も管理しない仮想通貨がなぜ信用できるのか?」について、堀江氏は次のように答えています。
結果を利用者のみんなで共有するということで、銀行や国家のような中央の認証機関が必要ないということになっているんです。(138ページ)
確かに、我々の間で「見張り合い」をできるのであれば、中央の機能は必要ありません。
…これだけではありません。
堀江氏は意見には続きがあります。
中央集権的な認証機関なしで契約することができるしくみだから、あらゆる金融取引に使えますよ。うまくすれば、政治システムにも応用できるでしょう。(140ページ)
なんと、ブロックチェーンの仕組みは、政治システムにも適用できる、とのことです。
例えば、選挙の投票をネット上で行えるようにし、投票の履歴をブロックチェーンに書き込んで管理する。
このように、「管理の主体を、利用者間へ移行する」というモデルには、金融取引に限らず、色々なことに応用できます。
下記の記事を見ると、ブロックチェーンの応用例について、イメージを膨らませることができます。
いかがでしたでしょうか?
本書の魅力は、単なる国家不要論だけではなく、田原氏と堀江氏の議論そのものにあります。
是非手に取って、両者の議論の熱量に触れてみてください。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。
発想の鍵は「ゼロベースな問いかけ」
本書を読んでみると、「よくもまあ、そんな斬新な発想が出てくるな」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
私も、どう感じました、
しかし、このような発想をするためには、あるコツがあるように思えます。
それは「ゼロベースな問いかけ」です。
例えば、『もう国家はいらない』で述べられているような着想を得る場合、次のような問いかけをしてみます。
- そもそも、紙幣の発行を市場に任せると(=政府が介入しないと)、どういうことが起こるのか?
- 国家が無いと仮定すると、警察サービスは供給されるのか?
2つ目の「国家が無いと仮定すると、警察サービスは供給されるのか?」について、もう少し議論してみます。
この答えは、「安全へのニーズはあるはずなので、警察サービスは供給される」でしょう。
そこで、「仮に、100%民間によって警察サービスを供給された場合、どのような不都合が起こるか?」という問いを考えてみます。
おそらく、次のメカニズムで不都合が起こり得ます。
- 警察サービスにコストを支払っている人の周辺は、治安が良くなる
- その周辺に、警察サービスにコストを支払わずに、こっそりただ乗りしてくる人も集まってくる(=フリーライダーの発生)
- コストの負担者と、フリーライダーの区別が難しく、フリーライダーが駆逐されない
- フリーライダーが存在し続けるので、コストの負担者もバカバカしくなって、コストを支払わなくなる
- 誰もコストを支払わなくなるので、警察サービスの供給がストップする
以上の理由が、警察が公共サービスとして成立した所以なのでしょう。
確かに、公共サービスとしての警察サービスが導入された時期は、そうせざるを得なかったのでしょう。
しかし、現在はどうでしょうか?
今一度、「警察サービスについて、コストの負担者と、フリーライダーを見分けるには、どうしたらよいか?」と考えてみると、答えは変わってくるかもしれません。
先ほどの「ブロックチェーン」によって、「コストの負担者を、利用者間で見張り合う」ようにすると、どうでしょうか?
…長々と述べてしまいましたが、要は「目の前の当たり前を疑い、そもそも?という問いを発してみる=ゼロベースな問いかけ」が大事ってことを言いたかったわけです。
例えば、本書でも堀江氏が「数字上の貧富の格差に、いったいなんの意味があるのか」と述べているのも、「貧困は問題だ!」という当たり前を疑っているといえます。
こういうモノの見方を、もっと養いたいものです。
明日から取れるアクション1つ
- 1日1個、「おかしな当たり前」を発見してみる