この本で解ける疑問は?
- わかるようでわからない「企業文化」とは何なのか?
- なぜ企業文化が大切なのか?
- どうやって企業文化を作っていけばよいのか?
https://www.amazon.co.jp/dp/4822288811
『WHO YOU ARE』って?
名著『HARD THINGS』の出版から5年。
ベン・ホロウィッツ氏の待望の新著がついに出ました。
テーマは「企業文化」。
この雲を掴むようなテーマを、これだけ深く分析した本は見たことがありません。
本書は、次の4つの事例から、企業文化の重要性や形作り方について語っています。
- トゥーサン・ルーベルチュールによる奴隷文化開放
- 長期に渡って保持された文化「武士道」
- シャカ・サンゴールによる刑務所内の組織文化づくり
- チンギス・ハンの多様性マネジメント
扱っている事例がいずれも歴史的なものなので、「昔も今も変わらない、普遍的なエッセンス」を学ぶことができます。
その「エッセンス」について、少しご紹介したいと思います。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
- 企業文化とは、次の問いの答えとなるものである。
「答えのない質問に、社員がどう答えるか?」
「トップがいないところで人々がどんな判断をするか?」
「社員が日々の問題解決で使う一連の前提は何か?」
「誰もみていないときに、どう行動するか?」 - 企業文化は、なぜ必要なのか?
第一に、企業文化のおかげで、一見乗り越えられそうもない構造的な障害を打ち破ることができるから。
第二に、人間の記憶に残るのは会社の業績でもなく、時にはプロダクトでもなく、会社の気風や気質だから。 - 企業文化を形作るためには、次の9個のポイントに留意すべき。
①文化のデザイン
★自分の性格や戦略に合った文化に設計する
★文化を盾にされたときのために、曖昧さを消しておく
②文化の刷り込み
★一番記憶に残る入社初日目に、「この会社で成功するために必要なこと」をクリアに刷り込む
③ショッキングなルール
★「なんでこんなルールがあるの?」と聞かれるようなルールが、文化の要素を強くする
④外部のリーダーシップを取り込む
★自分たちに必要な文化が、既存の文化と乖離しているときは、外の助けを借りてよい
⑤見せしめ
★教訓を強く植え付けたいなら「見せしめ」を使う
⑥倫理規範を明確にする
★むやみやたらに性善説に立たないこと
★倫理規範を暗黙のままにせずに定義する
⑦文化規範にインパクトのある定義を与える
★普段とは違った、意外な定義で規範を目立たせる
⑧言行一致
★自分が実践しない文化規範を選ばない
⑨何が一番大切かを行動で示す
★ある程度極端な行動を取ってでも、一番大切なことを行動で示す
いかがでしたでしょうか。
元々の本書の原著タイトルは『What You Do Is Who You Are』。
ここからも、本書の一番のメッセージは「あなたの行動1つ1つが、あなた自身、ひいては企業文化を作っていく」だと読み取れます。
企業文化を作る側に回る機会は中々少ないですが、
- 現在経営者の方
- 将来起業を考えている方
- 組織風土変革を担おうとされている方
…こうした方々に強くオススメしたい一冊です。
学び
企業文化はビジネスの特徴にも左右される
本書を読んでみて「経営者の行動1つ1つが企業文化を形作る」ということがよくわかりました。
一方で、ビジネスの特徴や業態によっても、企業文化は大きく左右されるとも思います。
例えば「自分の頭で考えて、主体的に動く文化」について考えてみます。
一見すると、すごく良い文化で、どんな企業にも浸透させるべきものに見えます。
しかしこの文化、浸透しやすいケースと浸透しにくいケースがあります。
この図で見ると、「緊急度が高くてミスが許されないような業態」では、部下にミスされると困るので、権限移譲が難しいですよね。
権限移譲ができないと、「自分の頭で考えて、主体的に動く文化」を形成するのも困難でしょう。
一挙手一投足が人命に関わる業態だと、尚更この傾向が強くなるのではないでしょうか。
当たり前のようですが、企業文化を作るうえでは「自社のビジネスモデルに合っているか」も、重要なチェックリストの項目だということですね。
何でもかんでも、他社の良い企業文化を取り入れればいいわけではありません。
自戒の意を込めて、そう思います。