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最近「要約」と検索して出てくる記事を読んでいて、率直に抱いた感想。
「"はじめに"と第1章あたりの太字を抜き出しただけやん」
「本の全体像や骨子がわからん」
「要点同士の繋がりがわからん」
「その要点は、なぜ要点だといえるの?」
こんな疑問が次々と湧いてきます。
とはいえ、文句だけをいっていても仕方がないので、今度はその矛先を自分に向けてみます。
「じゃあ"要約"とはいったい何なのか?」と。
そんな問いについて、考えてみます。
要約の全体像
要約とは何なのか?
僕なりの結論を先にお示しします。
順に説明いたします。
要約とは「要点」を「約」すること
まずは「要約」を分解します。
要約=要点×約する
「…なんだ、バカにしているのか?」と怒号が聞こえてきそうですね。
ただ、ここ、実は凄く重要です。
ポイントは「足し算(+)」ではなく「掛け算(×)」である点です。
「文章を短くすること=要約」は勘違い
まず、この勘違いを指摘する必要があります。
例えば、いくら簡潔に文字数や表現が「約」されていても、そこに「要点」が一切書かれていないとします。
「それっぽく、短く文章が抜き出してあるけど、、、それ本当に大事なの?」みたいな文章です。
そんなときは、得てして「要点」がスッポリ抜けてしまっています。
ハッキリ言います。
- 要約=文章を短くすること
- 要約=文章を抜き出すこと
…この考え方は勘違いです。「要点」が軽視され、文章を「約」することばかりに目が行っている。
「要点」を軽視している要約は、ただの「短くてスカスカの文章」です。無価値です。
まずはこのことを押さえておくべきでしょう。
「要点」を押さえきれないから、文章が長くなる
次に多いのは、「要約なのに、文章が長い」ケース。
おそらく、長~い要約の書き手は、「要点を取りこぼしてしまうこと」を恐れているのでしょう。
取りこぼしが心配で「あれも、これも」と、どんどん要約に盛り込んでしまうのです。
そうなると、要点が「約されていない」ので、「要約」とはいえませんね。
では、どうして「要点が約されていない、長~い文章」が出来上がるのか。
それは、要約の書き手が、「要点」を押さえきれていないからです。
どれが「要点」かわからないから、「あれも、これも」と拾ってしまう。捨てることができない。
逆に「要点」がわかっていれば、要点以外のものを捨てることができる。
この「捨てる・捨てない」の判断が、要約の善し悪しを決めます。
では、さっきから繰り返し、何度も何度も登場している、この「要点」とは何なのでしょうか?
要点は「問い」と「答え」と「根拠」で成り立っている
「要点」を分解すると、次のように言い表せます。
要点=問い×答え×根拠
各パーツについて説明します。
問い=筆者が一番白黒つけたいと思っている論点
「要点」を押さえる上で、一番外してはいけないのが、「問い」です。
- 筆者が、自分が書いた本の中で、どの論点に答えを出したいと思っているか?
- その本を通して、何を解き明かしたかったのか?
…これを明らかにするところから、「要約」はスタートします。
問いは、大体「はじめに」か「終わりに」に書いてある
「要約するためには、問いを最初に押さえる」
このポイントさえ意識できていれば大丈夫です。
「問い」を探す作業は、結構簡単だからです。
試しに「はじめに」か「終わりに」を読んでみてください。
そこに次の3パターンくらいの形で、問いが書いてあります。
- 明確に「問い」の形で表現されているパターン
- 「本書の目的は~すること」と書かれているパターン
- 本を書くに至った「背景」が長々と書かれているパターン
例えば『人生が変わる最高の呼吸法』の「問い」を抽出しています。
表紙を読んでみると、こんな記述が見当たります。
本書の目的は、本来の正しい呼吸法を身につけて、一生続く健康を手に入れてもらうことだ。
本書で紹介している知識を身につけ、エクササイズを実際に行えば、数週間のうちに、健康状態がよくなり、体力がつき、運動パフォーマンスも向上するだろう。
あなたが運動には縁がない普通の人でも、必ず効果があると約束できる。
少ない努力で、大きな結果を出すことができるのだ。(表紙)
ありましたね、「本書の目的」。
これを「問い」の形に変換します。
「数週間のうちに、健康状態がよくなり、体力がつき、運動パフォーマンスが向上するための秘訣とは何か?」
…いかがでしょうか。5~10文字くらいいじるだけなので、意外と簡単ですね。
問いに対する「答え」を明らかにする
次にすべきことは「答え」探しです。
早速『人生が変わる最高の呼吸法』を使って探してみましょう。
問いはこれでした。
「数週間のうちに、健康状態がよくなり、体力がつき、運動パフォーマンスが向上するための秘訣とは何か?」
この答えを述べると、次の通りです。
「鼻呼吸に専念し、呼吸量を"減らす"べき」
どうやって探したか?
本のタイトルをベースにして探しました。
というのも、ビジネス書の場合は、「答えの在り方」は次のパターンに集約されるんですね。
- 「本のタイトル」に書いてあるパターン
- 「背表紙」に書いてあるパターン
- 「はじめに」か「終わりに」に書いてあるパターン
- 2章とか3章みたいに「中途半端」な位置に書いてあるパターン
(最後のパターンは、まわりくどくて冗長な本が多いので、あまり良書といえないことが多いです)
根拠は「Why」と「How」で探す
ビジネス書にフォーカスすれば、「答えの根拠」を探す方法は次の2パターンしかありません。
- なぜ必要か?…Why
- どうやってやるのか?…How
また『人生が変わる最高の呼吸法』を例に取ってみます。
先ほど「鼻呼吸に専念し、呼吸量を"減らす"べき」が答えだと判明しましたね。
ですので、その根拠を探せばいいわけです。
まず「なぜ、鼻呼吸に専念し、呼吸量を"減らす"べきなのか?」について。
次に「どうやって、鼻呼吸に専念し、呼吸量を"減らす"べきなのか?」について。
これで、要点の最後のパーツ「根拠」が揃いましたね。
「問い」「答え」「根拠」をまとめてみる
要点を構成する3つのパーツ「問い」「答え」「根拠」が揃ったので、整理してみましょう。
ここまでやって初めて「要点を押させることができた」といえます。
- 本全体の構造(問い、答え、根拠の関係)を見抜いたうえで、要約を書いているのか。…①
- それとも、ただ単に「本の太字周辺を抜き出したもの」を、要約として「並べただけ」なのか。…②
このポイントを意識したうえで、改めて「要約」と謳っている文章をご覧になってみてください。
おそらく、ほとんどが②の「要約もどき」だとわかるでしょう。
「約する」ためのコツ
「要点」を押さえることができましたので、やっと「約する」に移ることができますね。
思い切って「要点」に関係ないものは「捨てる」
まずは断捨離をしましょう。
「要点」に直接的に関連しないものは、思い切って捨ててしまいましょう。
- 「面白い!」と思える実験結果やエピソードがあったとしても、「要点」と遠いものは捨てます。
- 「書いても書かなくてもよいもの」も捨てます
- 「書くかどうか、少しでも迷うもの」も捨てます
「捨てすぎでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。
先に述べた「要点」さえ押さえていれば、あとは捨てられる分、ドンドン捨ててしまいましょう。
「捨てすぎ」くらいの方が、丁度良いです。
文章を削る
最後は、文章レベルで削っていきます。
この辺りは、体系的な説明は「文章術」を語った本に譲ります。
ですので、個人的に意識している「3つの制限」をご紹介します。
①一文は80字以内、長くても120字以内
「~のため、~であり、~し、~する」みたいな文章、読みづらいですよね。
そうです。一文がとてつもなく長いんですよね。
「一文は80字以内にする」
こう心がけるだけでも、自ずと「無駄なことは書いてはいけない」「言葉のヒゲを取り除かねば」と意識が切り替わります。
②「しりてが」禁止
- 「~し」
- 「~であり」
- 「~して」
- 「~であるが」
こうした接続詞を使うと、文の論理構造が曖昧になります。
「並列なの?それとも順接なの?」
「それ逆説なの?」
読み手がこんな疑問を抱いてしまうからです。
使用禁止の接続詞を決めてしまうことで、文章はよりシャープになります。
③「~という」「こと/もの」禁止
これ、僕もつい使ってしまいがちです…
「本日は、『人生が変わる最高の呼吸法』という本をご紹介します」
「本日ご紹介する本は、『人生が変わる最高の呼吸法』です」
どっちが読みやすいですか?
おそらく後者かと思います。
「丁寧に挨拶することが大事」
「丁寧な挨拶が大事」
これも後者の方が短くて読みやすいですね。
「~という」「こと/もの」を禁止するだけで、文章がグンとシャープになります。
いかがでしたでしょうか。
この記事を読んで、「要約」の正体に一歩でも二歩でも近づけた人がいらっしゃれば、この上なく嬉しく思います。