(出典:https://unsplash.com/photos/vbxyFxlgpjM)
最近はコロナの影響もあって、オンライン会議の機会も増えてきましたね。
普段何となく感じ取れる空気感やジェスチャーといった「ノンバーバル情報」も不足しているし、ホワイトボードの自由度も限られている。
…と、対面の会議よりも、ハンデが多いオンライン会議。
人によっては、「ただでさえ会議の効率が悪いのに、オンラインになって余計効率が悪くなったよ」と思われる方も。
リモートワークが加速する中、人と話す時間は貴重で限られています。
- そんな限られた時間を、不毛な時間で終わらせたくない
- どうせなら、45分の会議のうち、25分くらいで本題をちゃっちゃと終わらせて、残りの20分は雑談に使いたい
…こんな想いから今回は、会議の品質を左右する「議事録スキル」について議論できればと思います。
お付き合いいただけると嬉しいです。
この記事で解決したい「3つの愚」
まずは、前職のコンサル時代や日々の会議の中で感じるモヤモヤを書いてみます。
愚の一:初手は「発言の空気化」
まず一番見かけるのはこれ。
- 若手の鋭い発言や大御所のインパクトある発言
- 普段はあまり発言しない方の貴重なご意見
- そもそも論点から大きく外れた枝葉発言
…これらが、口から出た瞬間、凄まじい勢いで空気に変わっていく現象です。
これは、多くの方が普段から目にしているのではないでしょうか?
いや、批判覚悟でもう少し踏み込んだ言い方をすると、腕を組んで「見て見ぬフリ」をしている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
- 議事録を責任持って残すのは、若手の仕事でしょう
(…という考えはわかるが、何だかムカつくなー) - 率先してホワイトボードにまとめるのはファシリテーターの仕事でしょう
- ファシリしたいんだけど、いまいち勇気が出ないし怖い…
…これらはいずれも、恥ずかしながら、私が抱いたことのある不満ですね。
こうした不満を抱いても、1mmもプラスにはならないことは言うまでもありませんね。
愚の二:そして「必殺!論点散らかし」
会議の中盤に差し掛かると、この必殺技を繰り出す人が徐々に頭角を現してきます。
そもそも「新規参入を検討している市場のボリューム感」を議論しているのに、いきなり「新商品について、いいこと思いついたんだよね!」と横槍(=サイドランス)を突き刺してくる人などですね。
…今のは極端な例かもしれませんが、少なからず、論点を急にズラシてきて、議論を取っ散らかしてくる輩がいるのも事実です。
私もその被害者になることもあれば、ときに加害者になることもあります。
愚の三:トドメの「で、何するんだっけ?」発言
会議の最後に息の根を止める発言といったら、これですよね。
「で、何すればいいの?」
これは、会議終了後、最も言われたくない言葉の一つです。
この発言が出てくるということは、
- 会議の背景や目的が何で
- 議論の全体像のうち、どこを議論していて
- 何のために、何を、誰が、いつまでに、どんな状態まで仕上げればいいのか
…といった要素が伝わっていないことを意味します。
つまり、会議のゴールが達成されなかったということです。
もちろん参加者にも原因はあるでしょう。
しかし、一番矛先を向けるべきは、ファシリテーション役を担った私かもしれませんし、この状況を見て見ぬフリをしていた傍観者の私かもしれません。
会議の品質=シミュレーション×瞬発力
では、会議の品質とは何で決まるのか。
自分がコントロールできる要素で考えると、次の通りかと思います。
会議とは、限られた時間でゴールを目指す、一種の競技だと思います。
このレースを、自分のシナリオ通りに一気に走り抜けるためには、しっかりシミュレーションして、瞬発力で一気にゴールまで突っ走る必要があります。
この記事の本題は「瞬発力」
シミュレーションについては、ざっくり掻い摘んでエッセンスをお伝えいたします。
詳細な解説は、ファシリのバイブル『ファシリテーションの教科書』にお譲りします。
本記事では、当日の会議の捌き方で、明日から使える即戦力のTipsについて重点的にお伝えします。
なぜならば、ファシリテーションは得意なのに、議事録の操作や捌きでグダった結果、会議が台無しになった現場を何度も見てきたからです。
その状況を見て湧き上がってきた歯痒さが、本記事を書くに至った動機です。
とはいえ、まずはシミュレーション編を簡単に
無事にゴールに辿り着くために、まずは次の要素を把握しておく必要がありますね。
- ゴールはどこなのか?
- ゴールに至るまでの道のりのどの辺りに罠がありそうか?
- 一緒に走るランナーは誰なのか?
これらを会議に置き換えて、簡単に整理すると、次の図のイメージになります。
目的の把握
言わずもがな、一番大事なのは「会議の目的」です。
ざっくり整理すると、会議の目的は次の3点に集約されます。
- 意思決定
- ブレスト
- 共有/進捗確認
まずは、この目的をクリアに押さえておく必要があります。
「バカにしているのか?」と言われるかもしれませんが、実際に以下のような状態に陥ることも多々あります。
- 意思決定の場なのに、急にブレスト風に議論が発散し始める
- 共有/進捗確認の場なのに、重要な意思決定事項をぶち込まれて、会議の場が思考停止する
そうならないためにも、当たり前ですが「今、何のための会議なのか」を強く、5分に1回意識してみてもいいでしょう。
ゴールの定義
次に「会議が終わったときに、どういう状態になっているべきか」を具体的に決めておきます。
- 意思決定の会議であれば、「A~C案の3つのうち、どの案をいつまでに実行するかが決まっていること」をゴールとする
- ブレストの会議であれば、「参加者全員のアイデアが共有されたうえで、3つ程度のテーマに絞り込まれていること」をゴールとする
- 共有/進捗確認であれば、「ToDoの進捗を参加者全員が把握し、遅れや課題のあるものはその場で潰し切ること」をゴールとする
こうして定義しておくと、自ずと会議の参加者は「ゴール達成に向けて、何を発言すべきか?」と思考し始めるはずです。
目的・ゴール達成に向けた論点の洗い出し
1)論点の枠の設定
次に論点を洗い出しておきますが、その第一歩は論点の枠の設定です。
例えば、新しくソフトウェアを導入する話をするのであれば、次の3つの枠が考えられます。
- 品質やスペックの観点
・操作しやすさ
・データ容量
・ユーザーサポートの手厚さ - コスト面の観点
・他のツールとの費用比較 - 実際に期限通りに導入できるかの観点
・今使っているツールとのギャップ
・ツール導入に向けて必要なタスク
こうして、論点の枠を把握しておけば、当日話すべき論点をグッと絞ることができます。
冒頭に述べた「必殺!論点散らかし」も、「いや、そこ論点じゃないんで」と一蹴できます。
(もちろん、言い方は気を付けなければなりませんが…)
2)各論点に対する自分なりのアンサー=仮説を持っておく
次に、先ほど組み立てた論点に対して、自分なりのアンサーを出しておきます。
事前にアンサーを持っておくと、次のようなメリットがあります。
- アンサーを持っておくと、自分の意見と違う意見が出てきたときに、次に話すべき新たな論点がクリアになりやすい
- 仮に誰も意見を持っていないときは、議論を停滞させずに先に進めやすい
ここは苦しい作業なのですが、思考停止せずに、自分なりのアンサーを捻り出す根性が必要になります。
参加者の分析をしておく
これも重要なファクターですね。
私も苦手としている部分です。
とはいえ、苦手なものは、あまり時間をかけても有意義な示唆は得られないので、最低限次のポイントは抑えるようにしています。
- 会議において、参加者それぞれに担っていただきたい役割
- 各参加者にとって、美味しい話と美味しくない話
これだけでも押さえておくと、どの論点にサクッと答えが出せて、どの論点で揉めそうかがよくわかります。
…とここまでシミュレーションについて述べてきましたが、もっと詳しく知りたい方は、『ファシリテーションの教科書』を是非読んでみていただければと思います。
ファシリテーションにあたっての理論や実践的Tipsが体系的に整理されている良書です。
私も本棚に1冊置いております。
一旦この本の解説をご覧になりたい方はこちら
では、本題の瞬発力編
いよいよ、本題の瞬発力編です。
ここでは、先述までのシミュレーションの努力を無駄にしないための「最低限押さえておきたいTips」をお伝えします。
もう一度言います。
「最低限押さえておきたいTips」です。
できればGoogleドキュメントがオススメ
Googleアカウントを使えるのであれば、議事録を書くときはGoogleドキュメントがオススメです。
共有しやすいですし、共同編集もできるからです。
使えない場合は、Wordでも全く問題ありません。
議事録は、自分でモニターに移した状態で会議をファシリする
これには賛否両論あるかもしれませんが…
私は、自分がファシリテーションを行う会議では、自分でその場で議事録を書きます。
理由は次の2点です。
- 参加者の皆様には、意見出しに集中してもらえる環境を作りたいから
- 議事録も、自分が想定している論点の枠で書きたいから
ただ、これを言うと、次のような疑問を抱くかもしれません。
「そうはいっても、ファシリしながらメモなんて、忙しくて無理」
…そうですよね。私もそう思います。
会議の場で、ゼロから議事録を書くのであれば。
会議の前に、6割は議事録を完成させておく
なので、会議を半分以上、事前に書いておくことをオススメします。
前段で述べた「シミュレーション」をきちんとしていれば、意外と書けるものです。
例えば、「この記事を書くための会議の議事録」を再現すると、下記のイメージです。
事前にこれくらいのボリュームで書いておきます。
基本的には、事前に用意した上述の枠に沿って、メモを追記していけばOKです。
そうすると、少し気が楽になりますよね。
ちなみに、論点に対する自分のアンサーは、場合によって書くか書かないかを考える必要があります。
会議には「発散フェーズ」と「収束フェーズ」があります。
- 「発散フェーズ」を重視する場合は、枠にとらわれない自由な意見を求める必要があるので、自分なりのアンサーを書いてしまうと、議論の結論を誘導しかねません。
- 逆に「収束フェーズ」を重視する場合は、自分なりのアンサーを何パターンか書いておいて、「会議の場では決めるだけ」にしておくと効果的です。
ただ、議事録に予め書いておくかは別にして、自分なりのアンサーを持っておくことは非常に重要です。
心強いTips5選
とはいえ、いくら事前に議事録を書いていても、会議本番でグダグダとメモを書いていると、参加者の集中力も削がれてしまいますし、何より時間内に会議のゴールを達成できなくなります。
そこで、メモをテキパキ取っていくために、絶対押さえておきたい機能・ショートカットをピックアップします。
①「箇条書き機能」を使うと、議論が構造化しやすい
まず「箇条書き機能」を使いましょう。
Googleドキュメントの右上に、赤枠で示したようなボタンがあります。
これを使うと、下記のように文章を構造化することができます。
まちがっても「・」をベタ打ちで多様するのはやめましょう。
改行されたときに、ぐっちゃぐちゃになって、見づらいので。
②インデントをズラすときは「Tab」キー、逆は「Shift + Tab」キー
次に、インデントをズラす方法です。
下記のように箇条書きの文章があったとします。
これ、もう少し構造化したいですよね。
そういうときは、構造化したい文章の文頭で「Tab」キーを押してみてください。
わざわざマウスを使わなくても、ショートカットキー1つでできる作業ですので、是非覚えましょう。
③文章を移動したいときは「Alt + Shift」キー
次に箇条書きの文章を移動させたいとき。
わざわざ、移動したい文章を「Ctrl + X」で切り取って、移動先に貼り付けようとしていませんか?
実は、もっと簡単に移動できる方法があります。
「Alt + Shift」キーを押しながら、↓とか↑を押してみてください。
これもショートカットキー1つで1~2秒でできる作業です。
④コメントは「Ctrl + Alt + M」
議事録に備忘的なメモを加えたいときは、コメント機能も活用すると便利です。
「Ctrl + Alt + M」1つで、コメント欄がポップアップされます。
マウスを移動する手間を削減できます。
⑤メモをタイプするときは「要は、〇〇という理解で合っていますか?」で確認&時間を稼ぐ
5つ目のTipsは、「要は〇〇という理解で合っていますか?」を挟んでみることです。
これには2つのメリットがあります。
- 認識の齟齬を防ぐことができる
「〇〇で合っていますか?」と聞いて、合っていないときは、参加者にもう1回話してもらいましょう。
どうしても、聞いてわからないときは、「一言でいうと、どういうことですか?」と思い切って聞きましょう。
一瞬イラっとさせるかもしれませんが、物事が決まらないよりマシです。 - メモを取る時間を稼ぐことができる
「〇〇で合っていますか?」と言っている間、そして参加者に発言してもらっている間に、議事録を書く時間を稼ぐことができます。
得てして「要は?」「一言で言うと?」の枕詞の後に話した言葉の方が、サマライズされていて、メモにも素早く残すことができます。
…と、細かいように思えますが、以上のようなTipsを積み重ねていくと、自然と会議のテンポも速くなります。
特にオンライン会議では、画面共有で誰かがテキパキメモを取っていくシーンも多々発生するはずです。
是非、まずはどれか1つ機能やショートカットを使ってみてください。
そして2週間後には、全て手に馴染ませるくらいの気概で会議をファシリしてみると、あっという間に高速議事録の達人になっているはずです。
会議の残り5分は振り返りに使う
さて、以上のようにテキパキとメモを取っていくと、おそらく会議中に下記のような議事録に仕上がっているはずです。
そうしたら、最後は、青枠のサマリーの部分を書きながら、振り返りをしましょう。
振り返る項目は下記3点です。
- 決定事項は何か?
- ToDOは何か?
(4/9まで、Aさん)みたいに、期限と担当者を端的に書く - 次回の会議で話すべきアジェンダは何か?
この3点をクリアにしておくと、冒頭に申し上げた、「で、何やるんだっけ?」問題を解消することができます。
「会議が終わってデスクに戻ったら、すぐに手が動くか」を徹底的に意識してみると、確実にアクションに落とせる会議へと品質を高めることができるはずです。
いかがでしたでしょうか。
まずは、思い切って会議でファシリ役を担ってみて、10回くらい会議を回しながら、議事録を取ってみてください。
10回こなせば、びっくりするくらい会議の質が変わります。
ペーペーの私が試しても効果が出たTipsです。
必ず何かしらの効果があるはずです。
オンライン会議が主流になる中、少しでも皆様の一助になっていれば幸いです。