「デザイン」
「デザイン思考」
「デザイン経営」
これらの用語を、きちんと区別をしたうえで説明できますでしょうか?
おそらく、デザインの本質や全体像を理解しておかないと、上記の用語を自分の言葉で説明するのは難しいはず。
では、デザインを理解するとは、どういうことでしょうか?
デザインの理解度は4段階ある
物事の理解度は、大きく4段階に分けることができます。
①知らない、②知っている、③わかっている、④できる
この4つです。
この4段階を、デザインに当てはめると、次のように整理できます。
- レベル1:知らない
デザインって見た目の話でしょ?
オシャレな組み合わせを考えることがデザインじゃないの?
…くらいの理解度で、デザインについて勘違いしている段階。 - レベル2:知っている
デザインとは「設計」のことだ。設計の対象は、モノだけではなく、コトも含む。
デザインは観察から始まる。
…こんな感じで、何冊かの本を読んだことがあり、デザインの情報を断片的に知っている段階。 - レベル3:わかっている
デザインの本質や全体像を理解したうえで、デザイン思考やデザイン経営の違いをクリアに説明できる段階。 - レベル4:できる
レベル3を満たしたうえで、最前線でデザインを使いこなしている段階。
今回ご紹介するのは、「レベル2から3へと移行するための本たち」です。
「レベル3なんて余裕だぜ」という方は、記事をそっと閉じていただいて大丈夫です。
デザイン〇〇の良本マップ
では、早速本題に入ります。
デザイン○○の概念を理解するためのオススメ本たちを整理したものが、以下の図です。
この4冊を読んでいくと、「デザインの本質と全体像」「デザインの具体的な方法論」のつながりを知ることができます。
これだけの説明だと、「本当か?」と思われる方も多いでしょう。
安心してください。順番にしっかりと解説していきます。
デザインとは何か?を知りたいなら『デザインの本質』
「デザインとは何なのか?」
「デザインの本質は何か?」
…これらの問いは、デザインを知るうえで、避けては通れません。
しかし、上記の問いにダイレクトに答えてくれる本は、なかなかありません。
やはり、抽象的かつ本質的なテーマになればなるほど、論じる難易度が格段に上がるからでしょう。
そんな中で、『デザインの本質』は、
- デザインとは何か?
- デザイン思考とデザイン経営の違いは何か?
これらの問いと真正面から向き合いながら、デザインの本質に迫っています。
まず、デザインとは何かについて。本書では「デザイン=創造性をもって社会全体の"より良い明日"を拓く行為」と、明確に定義されています。
この定義のもと、デザインの構成要素が丁寧に紐解かれるわけですが…
個人的には、モノのデザインを「d(スモールディ)」、コトのデザインを「D(ビッグディ)」と整理されている点が心に刺さりました。
というのも、私自身「ああ、デザインって見た目の話でしょ。ファッションセンスとか色使いの話だよね」と勘違いしていたんですね。
冒頭の理解度でいうと、Lv1の段階です(笑)
でも、見た目のデザインは、あくまで「d(スモールディ)」の話です。
デザインのほんの一部しか見ていなかったわけですね。
では、なぜそのような勘違いが起きるのか?
この問いについても、本書は丁寧にフォローしてくれます。
デザインとは何か?
この問いについて、これほどわかりやすく、かつ丁寧に紐解いている本は、今のところ本書以外見たことがありません。
オススメです。
デザイン思考を知りたいときに読んでおきたい2冊
先ほどご紹介した『デザインの本質』では、「デザイン思考とデザイン経営とは何なのか?」にも触れられています。
この本の内容を踏まえつつ、他の書籍の学びも統合させながら、私なりに整理した図が以下となります。
ざっくり説明すると、
- デザイン思考はデザイン経営に含まれる概念である
- デザイン思考は「人を観察して課題設定を行う→観察対象に寄り添って共感する→解決策を発想する→解決策をプロトタイプに落とし込む…このプロセスを何度も回し続けること」を意味している
- デザイン思考のプロセスに「造形=具体的なモノを仕上げて世に出すこと」を付け加えると、デザイン経営を意味するようになる
このように整理できます。
では、デザイン思考やデザイン経営を詳細に知りたいときは、どんな本を読めばよいのでしょうか?
入門編は『デザイン思考の授業』
入門編でオススメなのは、佐宗氏の『世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業』です。
デザインについて1mmも知らない人(=私みたいな人)でもわかるように、とにかく噛み砕きながら、デザイン思考について解説してくれます。
詳細な説明は本書に譲りますが、この本からの一番の学びは「デザイン思考はプロセスではなく、サイクルである」ということです。
デザイン思考を「プロセス=左から右への一方的な流れ」で表現するのは間違いであると。
そうではなく「サイクル=スタートに何度も戻りながら試行錯誤する流れ」こそが、大事だと。
例えば、プロトタイプを作った後は、絶対に「ユーザーに見せる」過程が発生します。
そして、ユーザーに見せて終わりではなく、ユーザーがプロトタイプを見て使っている姿をじっくり観察するはずです。
その後は、プロトタイプを使ってみた感想を、共感しながら傾聴して、また新しい発想につなげて、プロトタイプを改善していく。
…こんな風に、グルグルとスピーディーに回し続けることこそが、デザイン思考のポイントなんだと思います。
この『世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業』は、デザイン思考を「サイクル」で整理したうえで、具体的なメソッドを1つひとつ解説してくれます。
本当に文庫本の価格で提供しちゃっていいんですか?
…とツッコミたくなるほどの良書ですので、こちらも強くオススメしたい一冊です。
応用編は『デザイン思考は世界を変える』
続いて、応用編として紹介したい本が『デザイン思考は世界を変える』。
この本は、デザイン思考の元祖of元祖であるIDEOのリーダーによって書かれたものです。
入門ではなく応用編としたのは、
- 書いてあることの抽象度が高い(Howはあまり記されていない)
- 図解というよりは、テキストベースで理路整然と記されている
このような特徴があるからですね。
なので、「概念から学んだほうが理解が早い人」には、すごくオススメの本です。
一方で、「具体的な方法論から学んだほうが理解が早い人」は、もう何冊か読んだうえで、本書を手に取ってみることをオススメします。
そんな本書のイメージ図をまとめたものが、以下の図表です。
…と、概略やイメージ感をかいつまんでお伝えしましたが、書評の詳細をご覧になりたい方は、以下の記事を用意しております。
ちなみにデザイン経営を知りたいときは…
ちなみに「デザイン経営」を知りたい方にオススメしたい書籍はというと…
何冊か読んでみたのですが、まだしっくり来る本が見つかっておりません。
今のところは、経済産業省 特許庁がまとめている以下のサイトを読めば十分です。
通常の官公庁の資料は、文字ぎっしり×色とりどりでわかりにくいのですが(笑)
以下サイトの資料(例えばこちら)は、非常にシンプルかつオシャレで、わかりやすくまとまっています。
造形力を高めたいなら『勝てるデザイン』
最後に、デザイン思考の本ではカバーできていない「造形」について。
ここは、『勝てるデザイン』の出番です。
本書は、「造形=デザインの具体的な表現」をするうえで根底に置くべき考え方から、具体的な手法にも触れられています。
特に、「デザインにおける"勝ち"とは何か?」「いったい誰に勝つのか?」の持論が本質的でした。
クライアントが勝てる。
ライバルのデザイナーに勝てる。
そのためにも、自分の心に巣くっている「これくらいのデザインでよいのではないか」という甘えに勝つ。
では、自分の心に打ち勝つために、どのようにデザインを向き合っていけばよいのか?
このような「デザイナーとしてのプロフェッショナル意識」にも触れられている点が、他の本にはない素晴らしさでした。
そんな本書から得た学びを、紙1枚に整理してみました。
…と、だいぶ端折って書いてしまいましたが、もう少し具体的に知りたい方は、以下の書評をご覧いただければと思います。
以上、「デザインについて全く知らない人が、周りの人にも説明できる状態になれる本」たちを紹介してきました。
私のように、デザインに対して勘違いをしていた人にオススメの4冊+1資料ですので、ぜひ読んでみてもらえると嬉しく思います。