この本で解ける疑問は?
- 流行りの「デザイン思考」の正体は?
- 「論理思考」と「デザイン思考」の違いは?
- 組織で「デザイン思考」を使うときの注意点は?
https://www.amazon.co.jp/dp/4152098937
『デザイン思考が世界を変える』って?
わかるようでわからないビッグワード筆頭の「デザイン思考」。
この思考法の目的や方法論について、皆さんは説明できますでしょうか?
ちなみに私はというと
「何となくすごそう」
「もう論理思考は古いのかな」
…と、こんな感想レベルの印象しか抱いていませんでした。「説明できるレベル」とは程遠いですね。
そんな状況から早く脱出すべく読んだのが『デザイン思考が世界を変える』でした。
(画像をクリックすると、PDFが開きます)
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デザイン思考を使う目的は「人々のニーズを掘り出し、飛躍的発想で生活を豊かにするため」である。
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まず心構えとして、「有用性」「技術的実現性」「経済的実現性」などの制約を喜んで受け入れる意識を持つ必要がある。その際、3つの制約条件を全て解決しようと身構えてはいけない。3つの制約条件の「バランスを取る」べきである。
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次に考える順番について押さえる。洞察(他者の生活から学び取る)→観察(人々のしないことに目を向け、言わないことに耳を傾ける)→共感(他人の身になる)、の順番で考えることで、ニーズを需要に変えることができる。
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洞察→観察→共感の各プロセスで、「発散と収束」を繰り返すとよい。まずは選択肢をどんどん並べていき、並べ切った後は選択して収束させていく。
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ある程度「洞察→観察→共感」の流れで考えた後は、早い段階でプロトタイプを作る。まずはスケッチなど、実体を伴わないプロトタイプで構わないので作ってみる。そして、何人かでプロトタイプのストーリーを演じながら、徐々に形作りを進める。他者に見せられるレベルのプロトタイプが完成したら、いち早く世に放ってみて、フィードバックを取りにいく。
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最後に、これらの「デザイン思考」を組織に当てはめるときの留意点を挙げる。まず、イノベーション・ポートフォリオを「新規商品・既存商品」と「新規消費者・既存消費者」の2軸マトリクスで組んでみる。そして、自社で進めようとしているプロジェクトが、マトリクスの4象限にバランスよくマッピングされるかを確かめる。
バランスよくプロジェクトを配置できたら、各プロジェクトにデザイン思考を取り入れていく。その際、「早めに何度も失敗する」など、いくつかのポイントを気にしながら進めるとよい。
いかがでしたでしょうか。
デザイン思考の輪郭が少し掴めたのではないでしょうか。
より具体的な方法論については、もう1~2冊ほど読む必要がありますが、
「デザイン思考の概要や全体観」を知るには、この一冊で十分です。
学び
論理思考とデザイン思考は「セット」で考える
本書を読む中で、個人的に一番気になったのは次の問いです。
「論理思考とデザイン思考の違いは何か?」
これ、結論からいうと「ほとんど変わらない」と思います。
より正確に言うと、「デザイン思考は、論理思考の一部のプロセスを補強する存在」です。
まず、「論理思考」のプロセスをざっくり図にすると、こんな感じになります。
このプロセスと「デザイン思考」がどう関係してくるか。下図に整理してみました。
まず、論理思考では「解くべき問題」を特定しますよね。
名著『イシューからはじめよ』でも、まずは「イシュー=第一に白黒つけるべき問題」を定義すべしだと解説されています。
ただですよ。
いきなり「イシュー=解くべき問題は何ですか?」と言われても困りますよね…
「イシューを見つけるための方法論」が必要です。
例えば、データを見たり、現場の人間にインタビューしたり、色々と手足を動かす必要がありますよね。
この「イシューを見つけるための方法論」の1つが、デザイン思考でいう「洞察→観察→共感」です。
現場の人間を徹底的に観察したりインタビューして共感しながら、「これが本質的な問題なのではないか?」と洞察する。
こうしたデザイン思考のプロセスは「解くべき問題の特定」のために使っていると解釈できます。
次に「解決策の洗い出し・評価」について。
論理思考であれば、MECE(漏れなくダブりなく)に解決策を洗い出しますね。
でもMECEに洗い出すのが難しい場合だってあります。
そんなときは、ブレインストーミングをして、解決策をどんどん出していきますよね。
解決策をたくさん出した後は、グルーピングなどをしながら、徐々に絞っていきます。
この工程も、論理思考とデザイン思考で同じことをやっています。
最後に「解決策の検証」について。
解決策を実行した後は、それを検証して改善していかねばなりません。
この「解決策の検証→改善」を素早く行うための手段として、デザイン思考の「プロトタイプ」が重大な役割を果たします。
ここでも、「論理思考のプロセスを、デザイン思考が補強する構図」が見て取れますね。
ざっくりとではありますが、以上のように俯瞰してみると、「論理思考とデザイン思考に大きな違いは無い」ことがわかります。
ではなぜ、世の中的に「論理思考とデザイン思考は違う」と認知されているのでしょうか?
それはやはり、デザイン思考を考案した人が、「デザイン思考を早く流行らせたかった」からでしょう。
流行りを作るためには、「世の中の多くの人が知っている物事と、対比でコントラストを効かせながら」広げていったほうが効率的です。
そのコントラストの対象として選ばれたのが、すでに大流行していた「論理思考」だったのでしょう。
…とまあ、憶測を述べてみましたが、そんなことはどうでもいいですね。
一番気をつけねばならないのは、本質を見失って
- 論理思考はもう古い、必要ない
- デザイン思考さえできれば、今後はやっていける
…こんな勘違いをしないことです。
安易に二項対立に飛びつかずに、
- 「vs」ではなく「with」ではないか
- 「or」ではなく「and」ではないか
…と、健全な問題意識を持ち続けることが大事でしょう。
恒例の、自戒の意を込めて。
明日から取れるアクション1つ
- 図書館やカフェで、ビジネス書を読む人を見つけて「洞察→観察→共感」プロセスを回してみる。(怪しまれない程度に)