この本で解ける疑問は?
- なぜ、才能はつぶされてしまうのか?
- どうしてこの職場はギスギスしているのか?
- そもそも、自分の才能は何なのか?
『天才を殺す凡人』って?
以前ご紹介した『転職の思考法』を読んで以来、すっかり北野 唯我氏の著書にハマってしまい、本書を購入しました。
この著者の魅力は、「斬新でシンプルなフレーム」と「ストーリー形式」です。
『転職の思考法』でいう「マーケットバリューの測り方」など、著者オリジナルのシンプルな理論が、小説のような文章の中で解き明かされていく。
一回ハマったら、抜け出せない、そんな麻薬的な魅力が、本書にも詰まっていました。
-Why-なぜ書かれたのか?
本書の「あとがき」は次の記述で始まります。
「なぜ、この本を書いたのか?」
と問われたら、私はこう答えます。
「人の可能性を阻害するものに、憤りを感じるから」です。(226ページ)
この「憤り」が、本書の原動力とのことです。
この原動力から、本書を通して読者に伝えたいこととして、「まえがき」に次の記述がございました。
あなたの才能はなんですか?と聞かれ、その場でストレートに答えられる人は、相当自分のことを知り尽くした人間だけです。ほとんどの人は答えに窮するのではないでしょうか。
この本は、才能を「ビジネスの世界で必要な三つ」に定義し、その才能を生かす方法を段階的に解き明かしていきます。
本書を読み終わる頃には
「どうやって、自分の才能を段階的に高めるのか」
「自分の才能を仕事で活かす、具体的な方法」
「組織が異なる才能をコラボレーションさせる方法」
のヒントが見つかることを約束します。(11ページ)
つまり「個人や組織が、才能に気づき、伸ばし、活かす方法」を伝えることが本書の目的といえます。
では、才能に気づき、伸ばし、活かすためには、何をすべきなのでしょうか?
それには、まず、「人の可能性を阻害するもの」を特定するための問い、
「なぜ、凡人は天才を殺すことがあるのか?」
と向き合う必要があります。
-What-なにをすべきか?
本書のタイトルからも、「なぜ、凡人は天才を殺すことがあるのか?」が、一番の論点だとわかります。
そこで、この論点を起点とした、本書の「ペライチ」を先に示します。図1をご覧ください。
まず、「凡人が天才を殺す理由」について、次の3点が読み取れます。
-
大多数を占める凡人による「多数決」によって、天才の意見が殺される
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天才の創造性を測定できる唯一の指標「反発の量」をKPIに置くことができない
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アートとサイエンスの「説明能力の差」を無視して、秀才が天才を論破する
さらに、上の3点の原因をさらに深掘っていくと、
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天才・秀才・凡人間の「コミュニケーションの断絶」
-
天才・秀才・凡人間の「軸の違い」
…が真因だと、本書では述べられています。
これらの真因を理解したうえで、「才能に気づき、伸ばし、活かす方法」として、次の3ステージが紹介されています。
-
自分の才能を理解し、活かす
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相反する才能の力学を理解し、活用する
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武器を選び抜き、リミッターを外す
今回は、「1.自分の才能を理解し、活かす」について詳しく見ていきます。
-How-どのようにすべきか?
本書では、天才・秀才・凡才の「軸」の違いについて、図2のように示されています。
さらに、図2のそれぞれの軸について、次のように述べられています。
より具体的に言うと、天才は「世界を良くするという意味で、創造的か」で評価をとる。
一方で、凡人は「その人や考えに、共感できるか」で評価をとる。
したがって、天才と凡人は「軸」が根本的に異なる。(266ページ)
この「軸の違い」を自覚し、「自分の才能や軸」を理解することが、第一歩です。
逆に言うと、この「軸の違い」を理解できないと、凡人が「人数の差」を利用して、天才をつぶしてしまうことになります。
本書では、「自分の才能や軸」を理解することから始まり、「才能を活かすための、人の巻き込み方」や「才能を伸ばすための武器」についても詳しく教えてくれます。
少しでも「日々のモヤモヤや琴線」に触れるものがあれば、是非手に取ってみてください。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ることができました。
ロジカルシンキングは、天才をつぶすものではなく、伸ばすもの
ロジカルシンキングを勉強しだしてしばらく経って、ある程度「身についてきたと錯覚したとき」がありました。
そんなときに、とある外資系企業の選考の1Dayインターンに参加しました。
テーマは「ITを活用した画期的なアイデアを、〇〇社に対して提案せよ」というざっくりしたものでした。
そのインターンには、私が思いつかないようなアイデアを次々と発案する人(以下、Aさんとします)がいました。
「何となく、自分より発言しているAさんが気にくわない」という、ある種「嫉妬」のような感情から、私はそれらのアイデアを次々と否定してしまいました。
ロジカルシンキングの本に書いてあったような基準やフレームも使いつつ否定していったので、「何となく説得力がある風」に聞こえたと思います。
なので、周りのメンバーも、私の意見に同意してくれ、Aさんが孤立してしまいました。
結果的に、Aさんが出してくれた意見の断片を切り貼りしたような、「納得はいくけど、斬新さはない提案」を行い、インターンでは優勝することができました。
私としては、「Aさんの意見も、ちゃんと提案に反映させる体裁をとれた」と満足していました。
だが、浮かれていたのも束の間、結局そのインターンで、私は不採用を食らいました。
浮かれていただけあって、非常に落ち込みました。
この不採用の原因を私なりに分析して、「協調性が無かったのかも」「我が強すぎたのかも」と捉えていました。
しかし、数年経って、本書と出会い、やっと、インターンでの不採用の原因がわかりました。
それは「ロジカルシンキングの使い方を誤っていたから」。
もっというと、「天才と秀才の間の、コミュニケーションの断絶によるもの」だということがわかりました。
先述したように、天才のアイデアである「アート」と、秀才の論理である「サイエンス」は、「戦わせては」いけません。
これを戦わせると、イノベーションは生まれません。
きっと採用者は、イノベーションが生まれる仕組みや天才を活かす方法を知っており、私が「天才をつぶす存在」だとにらんだのかもしれません。
(それか、単純に協調性の無いやつだと、何となく嫌われただけかも)
以上、何を言いたいかというと、ロジカルシンキングは、天才のアイデアに「再現性」を持たせて、拡大させるために使うべき、ということです。
明日から取れるアクション1つ
- 「何となく嫌だ」と思うアイデアや意見を取り上げて、そのアイデアを補完する(再現性を持たせて拡大させる)ロジックを考えてみる