この本で解ける疑問は?
- クリティカルシンキングとか批判的思考ってなに?
- 情報を鵜呑みにするな!疑え!って言われるけど、どうやってやるの?
- そもそも「哲学」って役に立つの?
『哲学思考トレーニング』って?
-Why-なぜ書かれたのか?
「哲学」と聞くと、「実社会に役に立たない、頭でっかちな学問だ」と感じる方もいらっしゃるでしょう。事実、私もそうでした。
しかし、筆者は、哲学について次のように述べています。
そして、とりあえず、(ある種の)哲学の勉強というのが、思考のスキルを身につけることだ、という認識は決して間違っていないと思う。
そして、使い方しだいでそれは実用的にもなる(と思う)。(9ページ)
なるほど、「哲学は、実社会に有用な、思考ツールである」という確固たる想いが、この本が書かれた動機だと読み取れます。
では、そもそも「哲学を使った思考」とはどのようなものなのでしょうか?
-What-なにをすべきか?
本書では次のような記述があります。
本書で紹介するスキルは、広い意味で「クリティカルシンキング」として知られているスキルの一種に属する。(10ページ)
どうやら、「哲学を使った思考」とは「クリティカルシンキング」を指しているようです。
では、本書でいうクリティカルシンキングとは何か?
図1をご覧ください。
まず、人間が知識を増やす方法が2つあります。
-
1つ目は、新しい情報をどんどん収集していく「吸収」
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2つ目は、本当に必要な情報か?本当に正しい情報か?を判断していく「ふるい分け」
この2つ目の「ふるい分け」に必要なものが「クリティカルシンキング」だと位置づけられています。
つまり、本書でいう「クリティカルシンキング」とは、「ある意見を鵜呑みにせずによく吟味する思考」を指します。または「批判的思考」とも呼ぶそうです。
では、意見を鵜呑みにせずに吟味するためには、何が必要なのでしょうか?
-How-どのようにすべきか?
クリティカルシンキングに必要な要素としては、本書では、図2のような要素が挙げられています。
必要な要素は大まかに「心構え」「議論の明確化」「さまざまな文脈」「前提の検討」「推論の検討」の5つです。
その5つの要素に対して、「哲学的な思考ツール」が紹介されています。
例えば、世界史にも出てくるキーワードとして、ポパーが唱えた「反証主義」なども紹介されています。
ここでは、図2の中で、私が苦手としている「暗黙の前提の洗い出し」を詳しくみてみます。
「暗黙の前提の洗い出し」とは、俗にいう「行間を読む」というものです。
これのわかりやすい例を、筆者は次のように説明しています。
A「すいませんBさん、ドライバー持ってますか」…①
B「ドライバーならCさんが持っているよ」…②
A「…Cさん、申し訳ありません。ドライバーお持ちでしょうか」
C「ドライバーは持っているには持っているが、家においてきた」…③
A「え、そうですか、どうも…Bさん、Cさんはドライバーを持ってきてませんよ」
B「何、もしかしてドライバー貸してほしいの?」
A「最初からそう言ってるでしょう」
B「言ってないよ。ところで、ほら、これ」
A「あれ、Bさんドライバー持ってなかったんじゃないんですか」
B「ドライバー持っていないなんて、ひと言もいってないよ」(53ページ)
まず、①については「貸してほしい」という暗黙の前提が含まれています。
また、「Bさんが持っているか」という前提も含まれています。
次に、②と③については「今、持っているか」という暗黙の前提が共有されていないことがわかります。
こういった「暗黙の前提」まで読み解く、つまり「行間を読む努力」が、物事を正しく理解するために必要なのです。
他にも、デカルトの方法的懐疑なども、実用できるように扱われているので、「批判力」をつけたい方は、ぜひ一読をおすすめします。
学び
本ビジネス書を通して、次の学びを得ることが出来ました。
「暗黙の前提」のデメリット
これは、いわずもがな「コミュニケーションコスト」や「手戻り」でしょう。
例えばメールに「Aさんに、XXという指示出しておいて」と書かれていたとします。
実は、ただ「Aさんに、XXという指示を出す」だけではダメなとき、ありますよね。
- Aさんの上司のBさんに了解を取っておく
- AさんがXXを行えるよう、説明資料を準備する
- AさんにXXの作業説明を行うMTGを設定する
…と、色々な前提が含まれていることが往々にしてあります。
ずっと一緒に働いている仲間であれば、ある程度阿吽の呼吸で成り立つ部分はありますが、そうでない場合は、「認識の相違」が生まれやすくなります。
私なんかは、こういった「行間を読む」のがすごく苦手なので、現在も克服中です。
「暗黙の前提」のメリット
逆に、「暗黙の前提」は、コミュニケーションをショートカットするメリットもあります。
ちゃんと話し相手ごとに「この人は、ここまで理解しているから、この指示で通じるだろう」と考えたうえで、あえて省略した指示を出せると、「1から100まで説明する手間」が省けます。
相手に応じて「この人には60伝えよう」「この人には20で充分」みたいに使い分けができると理想ですね。
明日から取れるアクション1つ
- 自分が送るメールに「相手の理解を妨げるような、暗黙の前提」が含まれていないかチェックする