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【要約・書評】『ガチ速仕事術』すべての仕事が2分の1の時間で終わる?

以前、コンサル会社の新卒研修の最終日に、こんなことを教わりました。

思考力も知見も劣る君たちが、いきなり現場で付加価値を出すのは難しいだろう。

そんな中、1つだけ、クライアントや仲間の期待値を上回る方法がある。

それは「スピードを上げること」だ。

品質は悪くても、早く上司に「この資料をレビューしてください」と依頼することは可能だ。

早くチェックポイントを作れば、それだけ改善にかける時間を増やせる。

「スピード」は、君たちが戦うための1番の武器になるだろう。

一言一句、すべて覚えているわけではないですが、当時のメモを見返す限り、こんな内容だったかと。


確かに、この教えは非常に的を射てました。

右も左もわからない新人が、唯一まわりと競えるもの。

それが「スピード」です。


では、どうすれば、その「スピード」を上げることができるのか?

この論点に真正面から答えてくれるのが、今回ご紹介する『すべての仕事を2分の1の時間で終わらせる ガチ速仕事術』です。

『ガチ速仕事術』はどんな本?

まずは、『すべての仕事を2分の1の時間で終わらせる ガチ速仕事術』 がどんな本なのかについて。

本書は、皆さまも親しみのある「楽天市場」の元プロデューサー大原 昌人氏が書かれた本です。

しかも、史上最年少でプロデューサーになられたそうで、社内のスピード部門賞も受賞されたとのことでした。


楽天は、私の友人も務めている会社ですので、たびたび話を聞くのですが、

とにかく「起業家マインド」や「圧倒的なスピード」が求められるそうです。

そんな優秀な社員が揃ってる中で、スピード部門賞を受賞されるということは、

おそらく我々が想像するよりも遥かに仕事が速いのでしょう。


大原氏は、現在はクリエイティブカンパニーを起業されて、月間50本以上の案件を高速で回されているとのことでした。

ガチ速仕事術』を書くのに、これ以上ふさわしい方はいないのではないか。

そう思わせる、圧巻の経歴ですね。

すべての仕事を、2分の1の時間で終わらせる方法が、この一冊に

では、『ガチ速仕事術』には、どんなことが書かれているのか?

本書を読む前は、失礼ながら「どうせ、ショートカットキーの使い方とか、そんな小手先のハウツーばかり書かれているんでしょ?」と斜に構えていました。

…が、序章を読んだあたりで、私の認識が誤っているのに気づかされました。


本書では、ハウツーだけでなく、その大前提となる「脳の使い方」「時間の使い方」について深く考察されていました。

今回はその一部を、私の理解も加えつつ、紹介していければと思います。

自分の仕事を速くするために

脳の使い方を変える

本書で何度も語られている方法論があります。

それが、「脳の事前インプット法」です。

これは、脳の中の「無意識」に働いてもらう手法でして、東大の受験生を例に解説がなされていました。

東大受験に合格するような優秀な受験生が、試験のときにやること。

それは、「一番難しい問題から目を通すこと」だそうです。

目を通した後は、一番難しい問題は脇に置いておいて、まず簡単な問題を解き始めると。

で、簡単な問題を解いている間に、「無意識くん」には一番難しい問題を考えさせておく。

すると、いざ一番難しい問題を解き始めると、「無意識くん」が事前に情報や解き方を整理してくれているので、スラスラ解けてしまう。

こんな理屈ですね。


これ、実は他の名著でも指摘されている方法なんですね。

以前、『アイデアのつくり方』という本をご紹介しましたが、

実はこの本でも「無意識に考えさせる方法」について指摘されています。

もし気になる方がいらっしゃれば、以下の書評もぜひ。

【書評】『アイデアのつくり方』ジェームスW.ヤング


以上ご紹介した「脳の事前インプット法」は、仕事にも応用できます。

例えば、一日のはじめに、やることを箇条書きで視覚化しておきます。

そして「無意識くん」に「今日やることは、これとこれとこれだよ」とインプットするわけですね。

こうすることで、簡単な作業をやっている間、難しい作業については「無意識くん」に考えておいてもらう。

こんな脳の使い方ができるようになります。

画期的な方法ですよね。

時間の使い方を変える

加えて、「時間の使い方」について触れられていました。

特に私が印象に残ったのは、次の3つ。

  1. 通勤時間や仕事前の時間に、スマホを見ない
  2. 昼寝10分で脳をリセット
  3. 50分集中→休憩→50分集中…を繰り返す

まず1つ目の、通勤時間や仕事前の時間に、スマホを見ないこと。

これは、スマホを眺めてしまうと、判断力を消費してしまうから、だそうです。

スマホをいじると、「どのアプリを開こうか?」「どのニュースを見ようか?」と、次々と判断が求められます。

人間はどうしても、1つひとつの判断にエネルギーを使ってしまうんですよね。

すると、仕事が始まる前に、貴重な判断力を使い切ってしまいます。

そうならないように、仕事前はスマホを見ずに、判断力を温存する。

これが、賢い時間の使い方といえるでしょう。


次に2つ目は、昼寝を10分して、脳をリセットする。

実は、昼寝10分は、夜の睡眠4時間分に匹敵するそうです。

「うそだ」と思う方、やるのはタダですので、1度やってみてください。

ビックリするくらい、脳みそがリセットされます。

こればかりは、実際にやってみてもらう方が、一番伝わるかと。


そして3つ目は、50分集中→休憩→50分集中を繰り返すという方法。

出社をすると、どうしても50分に1回休憩をしていると、周囲から「あいつ、仕事してないんじゃ」と疑われる可能性がありますよね。

ただ、最近はリモートワークの機会が増えてきましたので、一目を気にせず休憩ができるようになってきました。

そこで、試しに50分に1回休憩をはさむようにしてみました。

どんなに仕事がノリに乗っているときも、50分経過したら休憩をする…それくらい徹底してみました。

すると、これまた、自分でも実感できるくらい、仕事の効率が上がりました。

何というか、ノリに乗っている時間をずっとキープできる、そんな感覚ですかね。

相手の仕事を速くするために

ここまで「自分の仕事を速くする方法」を述べてきました。

ただ、仕事というのは、周りに動いてもらってなんぼ。

そうすると、どうしても「他人の仕事のスピード」が、自分の仕事にも大きく影響します。

だからこそ、相手の仕事をいかに速くするかが重要な論点となってきます。

ここでも、特に印象的だったポイントを3つ。

  1. 事前の「頭出し連絡」で、相手の「無意識」を使う
  2. 2案以上用意する
  3. 期限を必ず設定する

1つ目は、「頭出し連絡」です。

例えば、会議であれば、前日なんかにアジェンダを参加者に通知する。

あるいは、上司に何かを依頼するときは、いきなりメールや資料を送るのではなく、口頭で頭出しをしておく。

そうすると、自分が依頼しようと思っていることを、相手の脳の中の「無意識くん」にインプットできます。

「無意識くん」の力は、冒頭から何度もお伝えしている通りで、非常に強力です。

誰かに仕事をお願いするときは「可能であれば、頭出しをしておく」、これが鉄則かもしれません。


一方で、相手が忙しければ忙しいほど、頭出しをできるチャンスは少なくなります。

そんなときでも、相手にすぐ「OK」と言ってもらうための方法があります。

それが2つ目、「案を2つ以上用意する」という方法ですね。

人間は、「選択肢の中から選ぶ」ことで、納得感を高めていきます。

選択の科学』でも同様のことが述べられていましたね。

わたしは自分の人生を、すでに定められたもの、両親の意向に沿ったものとして考えることもできた。また自分の失明と父の死に折り合いをつける一つの方法として、それを自分の意思を超えた、思いがけないできごとの重なりと見なすこともできた。しかし、自分の人生を「選択」という次元で、つまり自分に可能なこと、実現できることという次元でとらえた方が、はるかに明るい展望が開けるように思われたのだ。

多くの人が、選択という言語の文脈のなかでものごとを理解し、語ろうとする。

『選択の科学』p12

このことは、仕事で何かを提案するときも同じです。

1案しか持っていかないと、いくつかダメ出しをくらってしまう可能性がある。

でも2案あれば、自分が持っていきたい案ですんなりと合意が取れることがある。

仕事を自分のペースで進めるうえで、この「2案戦法」も欠かせない武器になってきそうです。


最後に3つ目は、期限を必ず設定すること。

「期限を設定すること」の大切さは、以下の記事でも散々述べたので、詳細は割愛しますね。

【コラム】その依頼の仕方で、本当に相手は動いてくれますか?


以上、本書の感想をつらつらと書いてきましたが、1枚にまとめると、次の図のように整理できます。

仕事を爆速にする方法がたったの1000円ちょっとで手に入る。

またしても、お得な本と出会うことができました。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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