「投資を知らなければ、あなたは一生奴隷のまま」
そんな強烈な一言からスタートする本がありました。
『教養としての投資』です。
この本は、「なぜ人生において投資が重要か?」「短期投資と長期投資どちらがよいのか?」「長期的に儲かる企業の条件は何か?」を教えてくれました。
言い換えると、投資のWhyとWhatを教えてくれる。そんな本でしね。
今でも覚えていますが、2020年に読んだ本のなかでもTOP 3に入るくらい、素晴らしい本でした。
一方で、唯一いちゃもんをつけるのであれば、「どうすれば、長期的に儲かる企業を見抜くことができるのか?」…いわゆるHowの部分が記されていませんでした。
といっても、「甘えてないで、Howの部分は自分で考えなきゃダメっしょ」と思ってはいますが(笑)
・・・そしたら、そんな私の心の声を聞いたのか、最近続編が発売されました。
『投資家の思考法』です。
『投資家の思考法』とは?
本書は、農林中金バリューインベストメンツCIOの奥野一成氏の著書です。
前著の『教養としての投資』は、2020年に発売された本ですが、Amazonではすでに1200レビューを超え、星もほぼ5で大ヒット。
今回のbとの違いをお示しすると、
- Why:なぜ人生において投資が大事なのか?←『教養としての投資』でカバー
- What:投資において重要なポイントは何か?←『教養としての投資』でカバー
- 短期投資より長期投資なのはなぜ?
- 強靭な企業の条件とは何か?
- How:どうすれば長期的に儲かる企業を見抜けるのか?←『投資家の思考法』でカバー
こんな位置づけです。
この2冊で学べることを、もう少し具体的に示すと、以下の通りです。
本書での学び
本書での学びはたくさんあったのですが、特に印象的だったポイントが2つあります。
学び1:「違うけど似ているもの」「似ているけど違うもの」を探す
違うけど似ているもの
1つ目の学びはこれですね。
抽象化して考える力を極めると、「一見すると違うけど、根本は似ているもの」なんかを見極めることができます。
例えば、本書で例に出されていた「香料と醤油」。
一見すると、匂いをつける香料と、味をつける醤油は全く違って見えます。
しかし、両者には、ある共通点があります。
それは「支払うコストに対して、得られる効用が大きい点」。
例えば、食べ物に匂いをつける「香料」がありますね。
食べ物を買うときの判断に、匂いは大きく影響します。
匂いが良ければ美味しそうですし、匂いが悪ければマズそうですから。
一方で、食品のコスト全体に占める香料のコストは、わずか数パーセント。
消費者の購買行動に大きく影響するのに、香料のコストは低い。
一方の「醤油」はどうか。これも本書で示されていた例示ですが…
高級寿司屋にいったときに、寿司のネタが超高級だったとしても、醤油の味1つで、仕上がりが大きく変わります。
醤油が不味ければ、せっかくの高級なネタも無駄になってしまいます。
しかし、そんな醤油のコストは、寿司全体のコストと比べると微々たるものです。
醤油もまた、消費者の体験に大きく影響するのに、コストは低い。
よって、両者は「支払うコストに対して、得られる効用が大きい点」で似ています。
似ているけど違うもの
この点については、自分で考えたことを書いてみようかと。
楽天とAmazon、この2つは似ているけど違います。
楽天もAmazonも同じECですが、そのやり方は大きく異なっています。
まず、楽天は、楽天市場に出店したい企業に対して、場所を貸しています。
バザーみたいな感じで、売り場だけ提供している感じですね。
ですので、商品の在庫を抱えるのも、商品の発送を行うのも、楽天に出店している企業が行います。
一方で、Amazonはというと…
Amazonは、各企業から商品を仕入れています。
商品の在庫を抱えるのも、商品の発送を行うのも、基本的にはAmazonです。
Amazonで購入した商品って、ほとんど「Amazon」って書いてある段ボールで届きますよね。
ここが、楽天との違いです。
こういう違いから深掘っていくと、そもそも楽天とAmazonとで、注力している顧客やビジネスモデルが違うことがわかったりと、いろいろと発見があります。
では、この違いは何を招くのか。
今はだいぶ改善されましたが、むかし楽天市場で購入したときは、商品が家に届くまでの時間が、出店企業によって違いました。書籍を買ったときに、すぐ届くときもあれば、届くまで1週間以上かかるときもありました。
一方で、Amazonで購入したときは、Prime会員であれば、注文の翌日なんかに届きます。何を買っても、安定的に次の日ないし2日後くらいまでには届く。この利便性に魅力を感じて、私はAmazonのほうを使っています。
…と、今のはあくまで一例ですが、一見すると似ているAmazonと楽天は、実は大きく異なっています。
こういう違いから、儲けの源泉の違いを紐解いていって、投資先を見極めていくことが大事なんだと『投資家の思考法』は教えてくれました。
学び2:なぜ?の徹底的な深掘によって、儲けの源泉がわかる
2つ目の学び、というよりは、本書を読んで大いに感動したのが、「なぜ?」への徹底的なこだわりです。
本書では、例として「フェラーリとトヨタの違い」を分析するプロセスが紹介されているのですが…
これを読んでいくと、分析の深さに圧倒されます。
- 営業利益率は、トヨタは横ばいで、フェラーリは右肩あがり
- なぜならば、トヨタの粗利率は20%、フェラーリの粗利率は50%
- なぜならば、トヨタは移動手段を売っていて、フェラーリは「フェラーリを持っていることによるライフスタイル」を売っている
- なぜフェラーリだけが右肩上がりかというと、世界中の富裕層が増えているから
…みたいな感じで深堀していくプロセスが語られていました。
このロジックは、Webで探せば見つかる情報だけで構築されています。
しかし、情報同士をつなぎ合わせて作られたこの「ロジック」は、Webのどこを探しても見つかりません。
こういった頭の使い方こそ、まさに「投資家の思考法」の醍醐味だなーと、本書を読むなかでつくづく思い知らされました。
以上、『投資家の思考法』の魅力の一部をお伝えしました。
他にも、何十社もの有名企業について、筆者独自の分析が披露されています。
読んでいくと、具体と抽象の行き来の幅がすさまじさに圧倒されるかもしれません。
しかし一方で「この思考法を身につけると、経営者としても投資家としても一流になれそうだ」と確信できるはずです。
素晴らしい本でした。