「権限委譲だ!」と言って、メンバーに丸っと仕事を任せていたら、全然期待値どおりの成果物が上がってこない。
で、マネジャーが「んだよ、この成果物は、クソか。もっと頭使えや」と言って仕事を巻き取る。
すると、メンバーは「は?だったら最初からもっと丁寧にガイドしろや。もう二度とこの人と仕事したくねえ」とふてくされる。
マネジャーはどんどん多忙になり、メンバーもどんどん離れていく。
一方で「こうやって進めると上手くいくからね。大丈夫そう?わかんないことあったら何でも聞いてね」と丁寧に丁寧にガイドした結果、メンバーの満足度は一見すると向上。
しかし、具体的にガイドしないとメンバーは動いてくれない。メンバーからしても「マネジャーがいつものように指示出してくれるはずだから、待っておこう」と指示待ちになる。
結果、マネジャーが一から十まで自分で考え抜かねばならず、これまた多忙になる。しかもメンバーは一向に育つ気配がない。
・・・という地獄絵図を、至る所で見かけます。むしろ、この地獄絵図の当事者になっている人が大半かもしれません。
そんな中で、希望を示してくれる本が見つかりました。
『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』です。
『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』とは?
本書は、BCGやATカーニーなどの戦略コンサルの第一線で活躍されていた山本真司氏の本です。
もともと山本氏は「一人で働かせると史上最強の兵士。しかし、誰かと働かせると史上最悪の指揮官」と呼ばれていたそうです。
プライヤーとマネジャーは違う、とはよく聞きますが、その違いを毛穴で体感した方かもしれません。
本書で紹介されている方法論の多くは、2011年に出版された『35歳からの「脱・頑張り」仕事術 仕組みを作れば、チームは自動で回り出す』とほぼ同一です。
書かれている方法論は、10年20年たっても色あせない、普遍的なものばかりです。
ちなみに、この2冊には以下の違いがあります。
- 史上最悪の指揮官として血反吐を吐いたエピソードが生々しく描かれているのが『35歳からの「脱・頑張り」仕事術 仕組みを作れば、チームは自動で回り出す』
- 現在の時代背景(ミレニアル世代、Z世代の価値観。雇用や働き方の在り方の変化など)を加味してUpdateされているのが『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』
・・・という感じなので、お好みのほうを、どちらか一冊読めば十分かと。
そんな本書を読んでみて、特に深く深く印象に残った点を私なりにまとめると、以下のように整理できます。
マネジャーが「自分の仮説」を持っていないと、何も始まらない
本書では、メンバーが勝手に動き出す「仕組み」が34個に分けて書かれています。
いずれも、机上の空論は一切書かれておらず、筆者ご自身で血と汗が滲む思いで体得された仕組みが披露されています。
しかも、どれも効果抜群なものばかり。
しかし、1点、本書の仕組みを実践するときの注意点があります。
それは「仕組みにも前後関係がある点」です。
本書では、
・「ベン図法」対話術
・わからないふりミーティング
など、素敵な仕組みが多々紹介されています。
ただ、これらの仕組みの大大大前提は、マネジャーである自分の中に「仮説」があること。
本書を読んでいくと、1つ目の仕組みは「まずはとにかく"仮説思考"」でスタートしています。
メンバーに考えてもらう前に、まずはマネジャー自身が「現段階で考えうるベストの答え=仮説」を持っておく必要があると。
しかもその仮説は、3か月間のプロジェクトであれば、最初の2週間で作ってしまわねばならない。
つまり、納期までの1/7の期間で仮説を出す計算になるため、1週間の仕事であれば1日目で仮説を出しておく必要があります。
そうやってロケットスタートで仮説を立てて、はじめて
・「ベン図法」対話術
・わからないふりミーティング
などの仕組みが機能します。
「ベン図法」対話術とは、自分とメンバーの見解における共通集合を見つける方法を意味します。
- 自分と相手の主張は何か?また、主張に至った「観察事実」と「思考回路」は何か?・・・これを円で表現して、ベン図を書いてみます
- 1の時点でベン図が重ならない場合は、さらに自分の円を「主張とは関係性が劣るものの関係のありそうな"観察事実"と"思考回路"」にまで広げる。相手の円と重なる箇所が見つかるまで、自分の円を広げる。そのときは、すべての発想を受け入れて相手の話を聞く姿勢を持つ
こういう頭の使い方でメンバーの話を聞いていくと、自分=マネジャーが持っている仮説も進化しますし、メンバーからしても「話に耳を傾けてもらえた。意見を取り入れてもらえた」と思えます。
・・・しかし、この「ベン図法」対話術は、そもそも自分なりの仮説を持っていなければ、自分の円を描くことはできません。
だからこそ、本書では最初の仕組みとして「まずはとにかく"仮説思考"」が紹介されていたのでしょう。
他にも、「わからないふりミーティング」という技術も紹介されていました。
これは、自分の仮説を机にしまっておき、「わからないふり」をしながら、メンバーの意見を聞いていくファシリ術です。
あたかも「メンバーの意見をホワイトボードにまとめていったら、いつの間にか仮説が完成していた」かのような状態を演出する。
こういう高度な技術を実践するためにも、まずはマネジャー自身が仮説を持っておかねばなりません。
「知っていないとわからない」と「考えないとわからない」を分けて、指導の仕方を切り替える
ここからは、本書を読んでみての私なりの感想文を。
「知っていないとわからない」と「考えないとわからない」
この2つは分けて考えないと、と改めて気づかされました。
「知っていないとわからない」これにも2種類あります。
1つ目は、調べればわかるもの。2つ目は、調べてもわからないもの。
例えば、Excelやパワポのショートカットキーであれば、調べればわかります。こういうものは、自分で調べるクセをメンバーに身につけてもらう必要があるでしょう。
一方で、会社独自のルールや、クライアント特有の用語や文化については、ググってもわかりません。こういう調べてもわからないものは、積極的にメンバーに情報共有したほうがいいでしょう。
間違っても「調べてもわからない、頭の使いどころではないもの」について「どう思う?考えた?」なんてツッコミをしてはいけません。自分とメンバーの情報格差を利用した、ただのマウンドになっちゃうので。
続いて「考えないとわからない」ものについて。
これは、メンバー自身に時間と頭を使ってほしいものです。
こういう「考えないとわからない」ものは、メンバーにどんどん渡していって、自分で考えられるようになってもらう必要があります。
ただし、渡しっぱなしではダメで、ちゃんとマネジャー自身も考えて仮説を持っておかねばなりません。
・・・書いてみると、当たり前のことばかりですね。
でも油断すると、どうしても「知っていないとわからない」と「考えないとわからない」を分けずに扱ってしまい、メンバーを混乱させてしまう。
なんてことになりがちなので、改めて言語化してみた次第でした。