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【要約・書評】『人を動かす「正論」の伝え方』の正論の通し方が実用的すぎた

ドラマの世界では「誰が言うかより、何を言うかが大事」。

でも現実世界では「何を言うかより、誰が言うかが大事」。

・・・だと思っていたんですが、相手に発言力が負けていても、正論を通し続けてきた猛者がいらっしゃいました。

今回ご紹介する『人を動かす「正論」の伝え方』の著者、藤井聡氏です。

『人を動かす「正論」の伝え方』とは?

本書は、京都大学の教授でもあり、安倍内閣において内閣官房参与を務められたこともある、藤井聡氏の本です。

著者の印象的なエピソードは、何といっても、大阪都構想に対して真正面から反対し続けた、あの壮絶な戦いでしょう。

当時、大阪都構想を掲げていた橋下徹氏は、SNS、TV、その他あらゆるメディアで圧倒的影響力を持っていました。

そんな中、藤井聡はSNSのアカウントすら持っていない状態から、草の根的に仲間を増やし、大阪都構想に反対をし続けました。

その結果、大阪都構想を否決に追い込むことに成功しました。


ここで注目すべきは、発言力や影響力において圧倒的な差があったのにも関わらず、どうやって藤井氏は自身の「正論」を敷衍させることができたのか?

その種明かしをしてくれているのが、今回の『人を動かす「正論」の伝え方』です。

本書で学んだ「正論を通すポイント」

本書では「正論の作り方」「正論の見せ方」「正論の伝え方」を、数々の生々しいエピソードとともに教えてくれます。

その中でも、特に印象に残ったポイントを2つ、感想も交えながら書き留めておこうかと。

①敵を説得するのではなく、仲間を増やすことに注力する

正論を通したいときは、得てして、正論を阻む敵の存在があります。

その敵は、正論が通ってしまうと、自分の身に不利益が生じるため、徹底して対抗してきます。

私自身も、業務改革を遂行するプロジェクトに多く携わり、そのなかで数々の抵抗勢力と戦ってきました。

そのときに身をもって知ったのですが、抵抗勢力を真正面から説得しようと思っても、ほとんど意味はありません。

いくら「なぜ業務改革をしなければならないのか?」「業務改革によってどんな利益が生じるか?」などをロジカルに語ったところで、刺さった試しがない…

前職のコンサルタント時代に、「おれが言っていることが正しいんだ!」と鼻息荒くプレゼンしては、抵抗勢力に意味不明な反発を受けて終わり。そんな失敗をたくさんしてきました。


そんな中で、いろいろ試して上手くいったのが、「外堀を埋める作戦」だったんですよね。

昔、組織の情報をストック・見える化するツールの導入を進めていたときの話です。

このとき、とある課のリーダーであるAさんは、このツールの導入に否定的でした。

「我々の課は、必要な情報を独自にストックしている。組織全体に共有するのは手間である」と、断固反対の姿勢でした。

いくら「組織全体で見て、なぜこのツールの導入が効果的なのか」を論理的に語っても、Aさんには一切響かず。

そこで、Aさんを説得するのはあきらめて、とにかく仲間を増やす作戦に出ました。

職場の方々の話を聞いてみると「実はAさんの課の情報だけ共有されてなくて、あそこの課との連携がいつもやりづらいんですよね」という声がたくさんあがってきました。

また、Aさんの課のメンバーに話を聞いてみると「よく他の課から、"連携しづらい。どうして組織全体で使っているツールに情報を載せてくれないの"と不満を言われるんですよね」と言っている人もいました。

そうやって、外堀からどんどん仲間を増やしていくと、Aさんも周りの声を無視できなくなってきたんでしょうね。

表立って「ツールの導入に賛成します」とは言ってくれませんでしたが、ツールの導入に対して文句も言ってこなくなりました。


・・・まあ、藤井聡氏の大阪都構想の話とは天と地ほどの差がありますが

「敵を説得するのではなく、仲間を増やすことに注力したほうがよい」

この教えにはとても共感しました。

②上司に「自分が決めたこと」だと思い込ませる

発言力がない人が正論を通そうと思うと、自分よりも権力を持った人に動いてもらう必要があります。

会社でいうと、上司に動いてもらわなくてはなりません。

そこで大事になってくるのが「上司に、自分が決めたことだと思い込ませること」だと、本書は教えてくれます。

いやー、全くもってその通りです。

人って、相手に説得されたくないですもんね。

誰だって「相手に説得されて決めたのではなく、自分の意志で決めた」って感覚でいたい。

商品を買うときもそう。店員に買わされるのは嫌、自分の判断で買いたい。


だから、何か提案を通したいときに、自分は「A案がいい」と思っていても、

上司に持って行くときは

「A案がいいと思います」ではなく

「A案とB案どっちがいいと思いますか?」と聞いたほうがよい。


私もこのことを、コンサル時代の上司に教わったことがあります。

クライアントには、これまでの議論の中で「業務効率化のために、Bというツールを導入したほうがいい」と何度か進言していました。

でもなかなか納得してもらえない日々が続いて、1か月ほど経ったころ。

ある日、クライアントの部長さんが「Bというツールを導入すべきだと思うんだよね。君たちもそう思うだろ?」と言ってきました。

そのとき、私の上司は「おっしゃるとおりですね。私もそう思います」と同意していました。


このやりとりを終えた帰り道、疑問に思った私は、上司に聞いてみました。

「Bというツールを導入すべきって、我々のアイデアですよね。それをあの部長、自分が思いついたかの如く喋ってましたね」と。

すると上司は「それでいいんだよ。誰のアイデアなのかはどうでもいい。こちらの意図通りに相手に動いてもらうことが一番大事だ」と教えてくれました。


「自分が決めた」と相手に思い込ませること。

これは、こちらの意見を通すための成功法則の1つなのかもしれません。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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