「Whyからはじめよ」とは言うけれど…
かつて、『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』という本をご紹介しました。
※書評記事はこちら
この本で話題になったのは「Why」が持つ力の大きさです。
例えば、同じ商品を売るにしても
われわれは、すばらしいコンピュータをつくっています。
美しいデザイン、シンプルな操作法、取り扱いも簡単。
一台、いかがです?
『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』より
と、「What」を訴求するよりも、
現状に挑戦し、他社とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。
製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。
その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。
一台、いかがです?
『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』より
こうやって、「Why」を訴求するほうが、買い手を惹きつけます。
製品や企業の「機能や強み」よりも「存在理由」を明確に打ち出すことが大事である。
このことは、『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』をはじめ、様々な本で指摘されています。
一方で、どうすれば「魅力的なWhy・Purpose・存在理由」を定義できるのか?
この点まで踏み込んで語っている本は、あまり見かけませんでした。
魅力的なPurposeの例はたくさん紹介されているんですが、その作り方までは教えてもらえない。
そんなもどかしい気持ちで過ごしていたところ、ついに待ち望んだ本が発売されていました。
その名も『パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える』です。
やっとわかった!よいWhy=Purposeのつくり方
まずは本書のタイトルにある「パーパス」について。
これは一言でいうと「なぜ存在しているのか?」を指しています。
「Appleはなぜ存在しているのか?」
「Googleはなぜ存在しているのか?」
この答えが「パーパス」です。
こう聞くと、次のように感じる方もいるかもしれません。
「パーパス…また新しい概念が出てきたよ」
「ミッション、ビジョン、バリュー…ただでさえややこしいのに、またカタカナ語が増えたよ」
少なくとも、私はこんな風に感じていました(笑)
しかし本書は、この疑問にもクリアに回答してくれます。
ミッション、ビジョン、バリュー、そしてパーパス。
それは次のように整理できるそうです。
『パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える』を参考に作成
- Valuesは、企業やブランドが重視している「価値観」。
- Purposeは、企業やブランドの「存在理由」。
- Visionは、企業やブランドが「将来的になりたい姿」。
- Missionは、PurposeとVisionを実現するために「やるべきこと」。
特に、VisionとPurposeがややこしいのですが、これらは時系列が異なっています。
Purposeは「今、企業やブランドがこの世に存在しているのはなぜなのか?」を、Visionは「未来の姿」を指しています。
この整理は、非常にわかりやすいですよね。
では、どうすれば、よいPurposeが作れるのか。
筆者はPurposeを作るプロセスについても教えてくれます。
大まかには、次の手順で作るそうです。
- 関係者とPurposeを作る意義を共有する。また、Purposeを作るうえでの前提知識を伝える
- 会社の強みを棚卸する
- 会社の情熱(歴史やDNA)を明文化する
- 市場のニーズを把握する
- 上記をもとに、Purposeを言語化する
この詳しい内容について、企業の具体例を交えながら紹介されています。
そして、具現化したPurposeをどうやってブランディングに活用すればよいか、
そのプロセスまでハンドブックとして丁寧に解説されています。
企業の大小問わず重要な話が書かれていますので、パーパス・ブランディング、パーパス経営に関心がある方は、是非ご一読ください。
日ごろの業務においても、Purposeは絶対必要
この本で出てくる「パーパス」は、一見すると遠い話に思えるかもしれません。
しかし、日常の細かい業務についても、パーパスが宿っているかどうかで180度異なってきます。
例えば「業務の標準化」という言葉1つとっても、パーパスがあるのとないのとでは全然違います。
一番ひどいのは、業務の標準化自体が目的になっちゃっているケース。
ひたすら業務フローを書きまくって、50枚くらい完成したところで「ところで、なんで標準化してるんだっけ?」と迷子になるパターン。
「いやいや、そんなことないでしょ」とおっしゃるかもしれませんが、意外と多いですよ、こういうこと。
「いつの間にか、システムの導入が目的になっている」
「いつの間にか、数字の見える化が目的になっている」
いわゆる、目的迷子問題。
こういうことにならないためにも、ちょっとした仕事でも、目的(パーパス)を明文化しておく必要があります。
業務標準化のパーパスとは何か。
経営陣にとっては、業務標準化のパーパスは「属人化を無くし、企業活動を継続できるようにすること」でしょう。
現場スタッフにとっては、「いつでも気軽に休暇が取れる状態にすること」がパーパスになり得ます。
ただ「業務を標準化しましょう」と叫ぶよりも、数倍説得力が出るはずです。
当たり前すぎますが、「何事もパーパスが重要」だと再認識させてもらった一冊でした。