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【要約・書評】『戦国ベンチャーズ』の具体と抽象の行き来が、レベチすぎる。

私が最も尊敬している著者の一人、北野唯我さん。

どれだけ尊敬しているかというと、

こんな記事を書いたり、

【圧倒的オススメ】北野唯我氏の「ロジエモ5冊」完全解説

Voicyで対談させていただいたりと、

勝手ながら、これだけ「おっかけ」をさせていただいてます(笑)


そんな北野さんが、またまた圧倒される本を出版されました。

戦国ベンチャーズ』です。

正直、最初は「歴史から学ぶ~」系の本には期待していなかったが・・・

どの辺が圧倒されたのか?

正直、この本を読むまでは、よく偉い人たちが言っている台詞

「歴史から経営を学ぶ」

この言葉が信用できませんでした。


いや、確かに、学べることはあるんですが…

例えば、なんかの本を読んだときに

  • 古代の四大文明は、いずれも灌漑があるところで発生した
  • 灌漑といった、人を危機に追い込むような事象が起こると、誰もが必死になり、新たな文明が生じる
  • ここから言えることは「修羅場体験が大事」ということだ

一言一句、正確に覚えているわけではないのですが、こんな感じの教訓が書かれていたんですね。


まあ、確かに重要な学びではあります。

ただ、別に「感動」まではしなかったんですね。

だって、ただでさえ読むのが大変な歴史書を読み解いて、「○○文明と△△文明の共通項」みたいなものも紐解いて。

で、やっとわかったことが「修羅場体験が大事」というメッセージだけ。

これなら、似たようなことが書いてあるビジネス書を読んだほうが楽じゃないか!

…と、大変浅はかながら、思っていたわけですよ。

戦国ベンチャーズがレベチすぎて、圧倒された話

ところが、 『戦国ベンチャーズ』 を読んで、自分の浅はかさを思い知らされました。

本書は、中国の三国志や、日本の戦国時代の史実から、「人事戦略の体系的な考え方」や「経営論」を抽出しているんです。

「修羅場体験が大事」とか、そういった断片的な教訓レベルのものではなく、

体系だった「論」を展開しているわけです。

他の「歴史から学びました~」みたいな本とは、レベルが違いすぎて、本当に驚きました。


本書は、中国や日本の史実から、次のようなシンプルな結論を導いています。

  • 歴史上、無名から一代にして成りあがった名将で、「年功序列型」の人事制度を使ったものはいない
  • 名将たちはみな「真の実力主義=強みの経営」を実践していた

そして、「強みの経営」を実践していくために「強みのコラボレーションの計算式」をはじき出しています。

  1. 真の成果論:成果とは、極論すると3つしかない
  2. 事業課題設定論:成果に対する課題の設定方法と、修羅場体験の重要性
  3. 組み合わせ論:創造性×戦略性×共感性
  4. 配置登用論:抜擢とフォーメーション論がカギ

さきほどから何度か登場している「修羅場体験の重要性」は、あくまで森の中の1本の木にすぎない。

筆者の大局観には、驚かされる一方です。

『天才を殺す凡人』と『ストレングス・ファインダー』と『戦国ベンチャーズ』のつながり

中でも、個人的に驚いたのは、

天才を殺す凡人』『ストレングス・ファインダー』『戦国ベンチャーズ

これら3冊をつなげて論じていた点です。


もし、 『天才を殺す凡人』 について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【書評】『天才を殺す凡人』北野 唯我

また、 『ストレングス・ファインダー』 の概要や活用方法についても、以下にまとめています。

よろしければご覧ください。

【自分の「資質のエコシステム」を書いてみた】『ストレングス・ファインダー』を読んでみて


さて、この3冊がどうつながっているのか…

私なりの理解を整理すると、次の図のように表現できます。

大枠としては、『天才を殺す凡人』で示されたフレームワークが使われています。

  • 天才:創造性が武器
  • 秀才:再現性が武器
  • 凡人:共感性が武器

ただ、『天才を殺す凡人』では、

「創造性・再現性・共感性は、具体的にどんな資質群によって構成されているのか?」

までは語られていませんでした。


一方、『戦国ベンチャーズ』では、「創造性・再現性・共感性」を、さらに細かな資質に分解しているんですね。

しかも、細分化するときに、『ストレングス・ファインダー』の資質たちと結び付けながら。

別々の概念を連結させる。これは、本当に難易度が高い思考技術だと思います。


しかも、上記の結びつけが本当に正しいかどうかを、具体的な史実(=ファクト)を使って検証しています。

例えば、

  • 秀才(再現性が武器)にも、軍師、軍曹、業師の3パターンがある
  • 軍曹に必要な資質は、規律性と達成欲である
  • 規律性と達成欲を働かせることで、本当に再現性という武器が機能するのか・・・これが、武田信玄の史実によって検証されている

といった感じで、

「1つひとつの仮説を、史実で検証する」

これをここまで徹底している本は初めて見ました。


ところで、上記のような表の整理ができると、何が嬉しいかと言いますと

  • ストレング・スファインダーの付録についている診断を受ければ、間接的に、自分の武器が「創造性」「再現性」「共感性」のどれなのかがわかる
  • 自分の武器が「創造性」「再現性」「共感性」のどれかがわかると、組織や社会における自分の役割がわかる
  • 自分が担うべき役割を具体的にイメージ・シミュレーションするためには、自分と似た武将の史実(創造性が武器なら、織田信長や曹操のエピソード)を読めばよい

といったアクションが取れるようになります。

自己理解を深めるためには打って付けですね。


***

「歴史からを学ぶ」

これを本気でやると、どうなるのか?

その答えが『戦国ベンチャーズ』に凝縮されていました。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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