まず最初にスタンスをお示ししておくと、
私は自己啓発本があまり好きではありません。
この手の本は結局
「さあ、一歩踏み出して、チャレンジしましょう…としか言ってないでしょ」
「どうせ読んだ1週間後には熱が冷めてしまう…そんな本が多いよね」
と、思っていたからです。
こんな具合に斜に構えてましたので、最初に『いくつになっても恥をかける人になる』をお見かけしたときの第一印象は、そんなに良くはありませんでした。
「またか。少し切り口を変えただけで、結局は他の本と同じでしょ」と。
しかし、この第一印象が間違っていたことに、すぐ気がつきました。
本書は「恥の構造」を解き明かし、その上で「恥を乗り越える術」を授けてくれます。
恥とは、「理想の自分」と「現実の自分」のギャップから生まれる
まずは、「恥」の定義を確認しておきましょう。
恥とは自分が描いている「理想の自分」と「現実の自分」の間に生まれるギャップに横たわる、複数の「心理的つまづき」だ。
『いくつになっても恥をかける人になる』p23
さらに、恥にもいくつか種類があるようです。
新しいことを始めるときの「初歩的な恥」。新入社員や部署異動などで、周りに比べて自分だけができないときに出会う恥がこれに当たる。
次に、上手になろうともがいているときの「研鑽期の恥」。できることが増える中で、まだ頑張っているところが恥ずかしかったり、人に協力をお願いするのが恥ずかしくなったりする。
最後に、自分が周りより経験値が溜まっているときに感じる「熟練期の恥」だ。わかっていないとは今さら言い出せないこと。後輩への指導や、人前で話す機会が増える中で出会う恥もある。
『いくつになっても恥をかける人になる』p89
何となく感じていた「恥」をここまで言語化して分解している本とは初めて出会いました。
同時に「恥」という概念を、自分はざっくりとしか理解できていないことに、とても恥ずかしい気持ちになりました(笑)
以上の「恥」の話を、図にも整理しておきます。
この「恥の構造」が理解できただけでも、本代を十分に回収できるのですが、
本書のすごいところはそれだけではありません。
良い恥のかき方や恥の克服方法を、なんと50個も教えてくれるんです。
さすがに50個も方法が紹介されているので、自分にあったやり方が必ず見つかるはず。
「恥と向き合うための辞書」として、一家に一冊おいておきたい。
そんな本でした。
(ちなみに)私が思う、恥との向き合い方
ついでに、この本に感化されまして、自分なりの「恥との向き合い方」を整理しておこうと思います。
少しでも、みなさんのお役に立てる何かがあれば、幸いです。
恥をかけないやつは、ちゃんとアウトプットできていないやつだ
新卒で入社したコンサルティングファームの、研修初日のことです。
同期入社が80人くらいいたのですが、その約半分は留学経験者。
修士以上を卒業している人が半分くらい。
学部卒の人も、話を聞くと、
「経営工学やってました」とか「ファイナンスやってました」とか。
あるいは「ベンチャー企業でインターンしてました」とか。
一方の私は、留学経験もなければ、インターンしたこともなく。
かといって、経営学をばっちり学んだわけでもない、ただの学部卒。
そんな中だったので、
「何を発言しても、周りには1mmも及ばないだろう。恥をかくだけだ」
こんな気持ちで頭をいっぱいになっていたところで、いよいよ研修がスタート。
すると、研修を担当する社員さんが、次のように話し始めました。
これから3ヶ月の研修期間に入りますが、
「3ヶ月×80人の研修コスト」はいったい何のために投じていると思いますか?
これは、あなたがたに失敗してもらうためのコストなんです。
現場で失敗をされたら、たまったもんじゃありません。
なので、現場に出る前に、失敗をしつくしてください。
失敗するためには、徹底的にアウトプットしてください。
アウトプットしない人は、存在しないのと同義です。
自分の存在価値は何かを常に考え、ひたすらにアウトプットしてください。
そして、失敗してください。
そういう人だけが、伸びます。
詳細は覚えてませんが、手元のメモを見返す限り、こんなことを言われたと記憶しています。
この話は、今でも私の頭にこべりついていて、
「そっか、恥をかかないことが、一番の恥なのか」
「失敗を恐れて、何もアウトプットしないやつが、一番無価値なんだ」
と気づくきっかけになりました。
これ以降は、特に恐れることもなく、研修でもバカみたいに挙手して発言できました。
だって「失敗するために金を出してやってるんだ」って言われたわけですからね。
これ以上の心理的安全性はないでしょう。
現在も、大学院に通っていますが、「失敗するために自分で金を払ってる」と自分に暗示をかけてますので、恥をかきながら好き放題学ばせてもらってます。
「そもそも、他人は自分なんかに関心はない」と思う
あと、色々と恥をかいていく中で感じたのは、
「そもそも、他人は自分なんかに関心はない」ということです。
その辺でイケメンの人がズッコケていても、
いつも学年トップの人がたまたまテストで赤点をとっていても、
仕事がめっちゃできる人が珍しく職場で怒られていても、
その瞬間は「あ」と気になりますが、10秒もたてば頭から消えてますよね。
それくらい、他人の恥なんてものは「どうでもいい」わけです。
同じように、わたしの恥も、あなたの恥も、他人からすれば「マジで、どうでもいい」。
ある日、この真実に気づいてからは、恥をかくのが全く気にならなくなりました。
今日はこのくらいにしておきます。