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【要約・書評】とにかく仕組み化

「組織の歯車になんて、なりたくない」
「自分らしくありたい」
おそらく、過半数以上の方々は、こんな思いを持っているんじゃなかろうか。

しかし、これらの思いを真正面から否定する本が登場してしまいました。
しかも読めば読むほど「あれ、歯車って悪くないのかも?むしろ歯車になったほうが合理的なのかも?」と思えてくる、危険な良書。
それが『とにかく仕組み化』です。

『とにかく仕組み化』とは?

本書は、株式会社識学の安藤広大氏による著書です。
氏の著書といえば、ベストセラーの『リーダーの仮面』『数値化の鬼』が有名ですね。
今回の『とにかく仕組み化』は、先の2冊の続編的な位置づけだそうです。

そんな本書からの学びを私なりまとめると、以下のとおりです。

仕組み化の大前提

そもそも、なぜ仕組み化に力を入れる必要があるのか?
それは、以下の前提があるから。

  • 「性弱説=人は易きに流れるもの」だと考えたほうがいい
  • いろんな業務を放っておくと「属人化」していく

どれも耳が痛いですね。
何の管理もされていない状態でリモートワークをしていると、どうしてもダラダラしてしまいます。
「どうせサボってもバレないっしょ」と思ってしまう自信しかありません。

仮に頑張ったとしても、「周りにはできず、自分にしかできない状態」を作っておいたほうが、組織で重宝されます。
「君に辞められると困るんだよ~」と言われる存在になれると、多少のわがままも聞いてもらいやすい。
だから、仕事は属人化させておいたほうがいい。

・・・以上のような力学が自然と働いていく。もう組織なんてそんなもんだと割り切っておく。
これが、仕組み化の大前提となります。

仕組み化の5つのプロセス

では、どんなプロセスで仕組み化を進めればいいのか?
本書には、具体的な方法論というよりは、仕組み化にあたっての考え方を5つ教えてくれます。

①責任と権限と権限を手に入れる

  • 「そんな話は聞いていない」という横やりを無くし、「誰にOKをもらえばGOできるか」を誰が読んでもわかるように明文化しておく
  • ルールは線引きをクリアにして、「例外」をとことん無くす
  • 代替案が見つかった場合、前提となる環境が変わった場合は、朝令暮改を気にせずにルールを変えてしまう

②危機感を利用する

  • 「怖さ=明確な基準に沿って淡々とフィードバックする姿勢」を保つ
  • 距離感と制限時間を設けて、ほどよいプレッシャーを生み出す

③比較と平等に気を付ける

  • 褒めるべきときに褒め、そうでないときには褒めない。比べることから逃げない
  • えこひいきではなく、仕組み・ルールに沿って運営する

④企業理念を再認識する

理念に近づくことだけをやり、理念から遠ざかることはしない。この一貫性を保つ

⑤進行感を感じる

「成長させてくれる」「評価されないといけない」「全員で大きな仕事を達成している」と思わせることが、「帰属意識」を生み出す

ざっくり、以上のようなエッセンスを本書から学びました。

属人化が起こるのは「自己保存の本能」に負けるから

仕組み化の真逆の概念、それは「属人化」です。
会社として利益を上げ続けるためには、勝つための戦い方を、大人数が再現できるようにする必要があります。
それが「仕組み化」であり、基本的に、仕組み化は「正しい行い」といえます。

しかし、正しい行いにも関わらず、仕組み化とは真逆の「属人化」をしてしまう人が一定数います。
というよりは、『とにかく仕組み化』でも指摘されているように、何も手を打たずに放っておくと、十中八九、属人化が進みます。
・・・なぜ、こんなことが起こるのか?

考察するに、それは、個々人が「自己保存の本能」に負けるからだと考えます。

というのも、仕組み化が進まない構造を図示すると、以下のように表現できます。

  1. そもそも、標準化や仕組み化の時間や余力はあるのか?
  2. 時間はあるとして、標準化や仕組み化の知見はあるのか?
  3. 知見があるとして、自己保存の本能に勝てるのか?

1や2が原因だと口では言っておきながら、実は3が本音だった。
そんなケースが多々あります。

「属人化を無くしたくない」
「自分だけができる状態が心地よい」
「標準化すると自分の居場所がなくなる」
・・・これが、自己保存の本能です。
自分が職場に生き残るためには、「己の優位性=自分しかこの仕事を回せない状態」を維持したほうが合理的。

この「自己保存の本能」をどう対処するかが、仕組み化を進めるカギになります。
これまで10以上の現場で業務改革なりDXを進めてきた中で、この考え方は例外なく大事だと痛感しています。

では、どうやって「自己保存の本能」と向き合えばよいか?
コンセプトを一言でいうと「危機感の上書き」です。

「属人化しないと生き残れない」という危機感から、
「属人化しているほうが、かえって生き残れなくなる」という危機感に上書きする。

例えば、「仕組み化している人はどんどん評価する。いつまでも属人化している奴は乙だ」…という表現は極端にしろ、こういう考え方の評価制度にするとどうだろうか。
属人化しているほうが、かえって自らの自己保存本能を脅かしてしまいます。
だから、仕組み化に動かざるを得ない。
このように、危機感を上書きしてあげると、属人化を多少なり抑え込むことができます。

ただし、勇気も必要です。
仮に「ノウハウは属人化しまくっているけど、チームの半分以上の売り上げを稼いでくれるエース社員」がいたとしても「お前は属人化しちゃってるから、評価しねーよ?」と明言しないといけないわけですから。
でも、この覚悟ができるか否かで、仕組み化できるかどうかを大きく左右します。
(もちろん、企業のフェーズなり状況によっては、必ずしも「仕組み化」が絶対正義でない場合もあるわけですが)

そんな覚悟を改めて抱きました。
とにかく仕組み化』、オススメです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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