「1人で食っていけるスキルセットさえあれば、人脈なんて必要ない」
「弱いやつほどよく群れると言うが、スキルがない人が、人脈にすがるのでは?」
本書を読む前、私の頭の中はこんな感じでした。
私が内向的すぎて、単に「人脈がすごい人」を妬んでいるだけかもしれません。
あるいは、「人脈」という言葉に、何か損得勘定のような卑しい概念を感じていたから、かもしれません。
実際にこの点を指摘している記事もありました。
人脈って、"損得"という一面でしか人を捉えていない言葉だから。
人のことを金儲けの道具としか見えていない。そんなの下品すぎるでしょ。人脈って、地球上でもっとも下品な言葉だと思うよ。
“人脈”なんて言葉を使ってるヤツはクソ。#三浦崇宏の人脈論
しかし今回、そんな私の勘違いを解消してくれる本と出会いました。
『「人的ネットワーク」づくりの教科書』です。
『「人的ネットワーク」づくりの教科書』とは
本書は、グロービス経営大学院の田久保 善彦さんが監修されている本です。
実際には、グロービス経営大学院に通っていた学生の方々が中心になって、この本を執筆されています。
MBAといえば、人脈づくり。
まさに、人脈の恩恵を受けまくった方々が書いた本。
・・・正直に申し上げると、本書を読む前は、こんな第一印象を抱いていました。
しかし、読んでいくにつれて、それが誤解だと気づかれました。
本書が定義する、ネットワークとは
もう少し問題意識を具体化しておくと、
「人脈なんて、損得勘定をベースとしたつながりじゃないのか?」
こんな疑問を抱いていたんですね。
ただ、この疑問は、早々に解消されました。
異業種交流会、各種勉強会や、最近ではオンライン・サロンなど、人が多く集まる場所に顔を出し、多くの人々と連絡先を交換をする場面を想像する人も多いかもしれない。そして、そこでの関係性から取引への発展など、いかにして自分の利益につなげていくかという視点で語られることに、多少の違和感を覚える人もいるかもしれない。「人的ネットワーク」という言葉から自分と他者との関係だということは理解できるものの、実際には何が「人的ネットワーク」の本質なのか、何をすることが「人的ネットワークの構築につながるか」は、あいまいなまま放置されていることが多い。
このあいまいさをクリアにするために、本書の基となった研究では、100名を超える人にインタビューを行った。人的ネットワークは、自分のビジネス面での恩恵のみならず、人間的成長、生きがいなど、当初私たちが想定していたよりも広範囲に恩恵を与え、その構築には、「志」と「自身の能力開発」という2つの要素が、深く関係していることがわかった。
『「人的ネットワーク」づくりの教科書』p26
まさに、私が抱いていた疑問をすべて代弁してくれています。
そのうえで、100名を超える人へのインタビューを通して、私の疑問点をクリアにしてくれました。
人的ネットワークは、「個々人の金儲けの手段」にあらず。
人的ネットワークとは、人間的な成長や生きがいなど、私たちの幸せを左右する要素すべてに、深く紐づいているものである。
私がいかに人脈を断片的にしか捉えられていなかったか、痛感させられました。
そういえば、以前、本書を監修されている田久保さんが話していた言葉を思い出します。
「人間はすべからく、寂しがりやである」
この根源的な欲求を満たしてくれるもの。それがネットワークの本質なのかもしれません。
本書からの学び
さて、人的ネットワークへの誤解が解けたところで、本書の教えと、私なりの解釈をまとめていきます。
ペライチにまとめると、こんな感じです。
ネットワークにはレベルがある
「人脈」「ネットワーク」という言葉を、ざっくりとしか理解していなかったのですが、
どうやらネットワークにはレベルがあるみたいです。
Lv0:ネットワーキングの活動をしていない状態
ネットワークづくりを一切やっていない段階ですね。
まずはLv1に向かうために、興味のあるイベントに参加したり、イベントで何かの役割を担ったりするといいそうです。
例えば、イベント運営の手伝いなんかは、気軽に手を出せそうですよね。
勉強会の場所をおさえる、会場とかPCの設定を手伝う、会計係を担う、なんてことが考えられます。
「うわ、めんどくさ」と思うかもしれません。
でも、意外とコスパいいですよ。
というのも、イベントの運営を手伝うと、イベントの中心メンバーと絡めるじゃないですか。
例えば、勉強会を手伝うと、勉強会を主催する人とやりとりするチャンスがあるかもしれません。
ぼくも大学生のころ、中小企業の社長さんが主催する勉強会を手伝ったことがあります。
朝7時から行われる勉強会だったので、手伝う前は「なんでこの話、引き受けたんだろ」と、ちょっと後悔していました。
ただ、実際にお手伝いしてみると、朝ごはんもおごってもらえて、有意義な話も聞けました。
その後も継続してやりとりをさせていただいて、私が所属している国際協力サークルの運営についてアドバイスをいただいたり、別のボランティア団体を紹介してもらったり。
この体験をしてからは、「あ、イベントとか勉強会って、ただ参加するだけじゃなくて、運営とかに絡んだほうがいいな」と思うようになりました。
Lv1:ネットワーキングの活動を開始した状態
このレベルは、イベント・セミナー・オンラインサロンに顔を出し始めた段階ですね。
Lv2に行くためには、
- コミュニティ(人の集まり)の中で中心役割を担う
- Lv0の人が入ってきやすい状態を作る
などのアクションが必要になるそうです。
例えば、勉強会の手伝いではなく、自分で勉強会を主催する。
ちょっとハードル高く聞こえるかもしれませんね。
ただ、別に高いスキルを持っていなくても、勉強会を主催することはできます。
ここからは、私の考えにはなってしまいますが・・・
例えば「Excelの操作について、お互いに不明点を共有しましょう」みたいな会を開いてもいいわけです。
自分が全部知っていなくても、参加者で補填しあえますから。
あるいは、「読書会」も気軽でオススメです。
「本を読んだ感想、本を読んで学んだことを共有し合いましょう」とかであれば、特別な準備は不要ですから。
とにかく何でもいいので、何か主催してみる。
そうすると、ちょっとずつ「コミュニティの中心人物」っぽくなっていくんじゃないでしょうか。
Lv2:ネットワーキングの活性化に寄与している状態
Lv2は、コミュニティの中で、懇親会や勉強会をコンスタントに企画している段階ですね。
もはや誰もが「このコミュニティでは、○○さん頑張っているよね」と認めている状態。
ここからLv3に進化するためには、
- コミュニティを取捨選択する
- 自分のタグを発信する
などが求められるそうです。
確かに、Lv2まで来ると「どのコミュニティでも、中心に近づける状態」にはなっていそうです。
だから、そろそろ「自分はこのコミュニティを中心にしよう」「このコミュニティは、興味関心と外れているから、もうフェードアウトしようかな」と、取捨選択していく必要があります。
そして、「〇〇さんといえば、これが得意だよね」と言ってもらえるようなタグを発信しはじめるタイミングでもあります。
例えば私の場合は「ビジネス書の魅力を、ブログでもVoicyでもYoutubeでも発信する人」というタグづけを意識して、発信を続けています。
「博多のとんこつラーメンであれば、私に聞いてくれ」でも「美味しい卵かけご飯の作り方、ぜひ私に聞いてくれ」でも何でもいいと思うので、
自分ならではのタグを見つけて発信する。これがLv3への第一歩になるかもしれません。
Lv3:自分の価値観に沿ったネットワークをつくっている状態
中心になって活動するコミュニティが取捨選択できていて、自分主導でつながりを作っている状態ですね。
もはや自分がコミュニティの主になっている、という感じでしょうか。
ここからLv4に進化するには、次のアクションが必要だそうです。
- タグの能力を磨く
- コミュニティを育てる立場を担う
例えば、起業を目指している人たちでコミュニティを作りたいとしましょう。
その場合、同じく起業を目指す人々を引き付けるために、何らかのタグをとがらせておく必要があります。
例えば「アプリ開発がめっちゃ得意です」とか「会計やファイナス領域では、個人でお金をもらえるレベルです」とか、
「このスキルで飯を食っていけます」といえるくらい、タグとなるスキルを磨きまくっておくと。
そこまでやっておくと、「あ、この人と一緒に組んだら、起業できるかも」と思ってくれた人が集まってくれるかもしれません。
私も頑張って、このレベルまでたどり着きたいものです。
Lv4:ネットワークをビジネスや活動に活かしている状態
一緒に会社を立ち上げるとか、フリーランス同士でプロジェクトに挑む、コミュニティに属する人から仕事を発注してもらえる。そんな状態がLv4ですね。
私も不定期ではあるのですが、コミュニティ伝いに、新しく挑戦する機会をいただくことができています。
ただ、まだまだ不定期・不安定なので、Lv4とは程遠い状態です。
ここからさらに、Lv5に成長するためには、「ネットワークをテコに、大きな(1人では出せないような)成果を出し続ける」必要があります。
Lv5:ネットワーク同士をつなげ、発展させている状態
Lv5は、もはや「勝手に人が集まって経済圏へと発展している状態」ともいえます。
有名人のオンラインサロンがこのレベルですよね。
このレベルになると、利害関係とか損得勘定などは通り越して、「人と人のつながりによって生まれる幸福感」みたいなものがテーマになるのかもしれません。
Lv5の方々が見ている景色がまったく想像できないので、まずは「想像できるレベル」にはなりたいものです。
ところで、内向的な人は、どうやってネットワークを作ればいいの?
この本を読んで思った最大の疑問はこれですね。
「内向的な人は、どうやってネットワークを作ればいいのか?」
心理学者ローリー・ヘルゴーの『内向的な人こそ強い人』によると、人口の50%程度が「内向的な人」みたいです。
内向的というのは、興味のベクトルが自分に向いている状態ですね。
私も内向的な人のど真ん中にいるつもりですが、初対面の人と話すのに、膨大なエネルギーを消費します。
懇親会に顔を出して家に帰ったときは、風呂に入る元気もないくらい、ぐったりしています。まあ風呂には絶対に入りますが。
それくらい、「ネットワーキングで人一倍神経をすり減らす人」は、どうやってネットワークを作っていけばよいのでしょうか?
・・・本書からは、直接的な答えを見つけることはできませんでした。
しかし、ヒントは書かれていました。
「誘われる力」というキーワードです。
本書では「誘われる力=相手がやりたいことに対して声をかけてもらう力」と定義されていました。
もう少し具体的には、次のように記されていました。
・"誘われる力"は、「基礎力(信頼される言動、前向きな姿勢、協調性など)」をベースとし、「能力」「志」「つながり」に依存する。
・「能力」「志」は、「発信」により相手に認知してもらうことで、"誘われる力"となる。
『「人的ネットワーク」づくりの教科書』p76
これですよ。
ネットワーキングが苦手なら、「誘われる力」を徹底的に高めて、誘ってもらえばいいんですよ。
そうすれば、自分からネットワークを作るために動き回る労力も最小化できます。
人と会うのに人一倍体力を消費するのであれば、「人と会うのを最小限にしつつ、ネットワークをつくる術」を考えねばなりません。
その突破口が「誘われる力」です。
例えば、
- 圧倒的なレベルまで、タグを育て上げる
- SNSなどでひたすら発信する
こういったアクションを継続して、「あいつ、なんかすごそうだぞ」と思ってもらうのも、一つの手段かもしれません。
すでに何度か申し上げているように、私自身はとても内向的な人間なので、あまり積極的にネットワーキングはやってきませんでした。
しかし、大学院でMBAを学ぶなかで、
- 自己紹介で、ブログなどで発信していることを伝える。名刺がわりに、ブログを知ってもらう
- 大学院の授業では、ひたすらアウトプットしまくる。「周りと少しでも視点が違う成果物」を必ず持っていく
この2つを徹底的に意識して、大学院生活を2年過ごしてみました。
すると、不思議といろんなことに誘ってもらうことができました。
自分から話しかけるのが苦手なので、本当にありがたい限りです。
同時に「誘われる力」と言いますか、「巻き込まれ力」と言いますか、この力の偉大さを思い知らされました。
以上、何が言いたかったかというと、内向的な人にこそ、『「人的ネットワーク」づくりの教科書』をオススメしたいなと。
「誘われる力」みたいな突破口が、きっと見つかるはずです。